こんにちは、太田 陽光です。
今回は物語文において、
言動・表情の表現から読み取れる心情にはいくつかの可能性があること
そして、その中から適切なものを選ぶためにすべきことについて書きます。
物語文では、心情語を答える問題が多いですが、
そのときに根拠とする部分は、セリフや動作、そして表情です。
たとえば、
「やったー!」というセリフが書かれていたら、心情は「うれしい」だと考えますし、
「うつむいた」という動作が書かれていたら、心情は「がっかりしている」のだと考えます。
「目を見開いた」という表情が書かれていたら、心情は「おどろき」だと考えるでしょう。
このように、言動・表情から心情を推測することは、国語の問題では当然すべきことです。
では、次の言動・表情からはどんな心情を考えるでしょうか?
「涙を流した」
おそらく、心情は「悲しい」と考えるでしょう。
しかし、その前に次のようなことが書かれていたらどうでしょう?
「僕が応援しているチームが、苦しみながらも見事勝利した。涙を流した。」
これは当然「悲しい」ではなく、「うれしい」や「感動」と考えますね。
このように、「言動・表情」だけから心情を考えると、間違えることもあるのです。
その場合、「直前のできごと」も把握する必要があります。
「涙を流した」には、「悲しい」・「うれしい」以外に、教材やテストでよく出される心情があります。
それは、「張りつめていた気持ちがゆるんだ」です。
それは以下のような状況です。
誰にも頼れない状況なので、恐怖・不安・寂しさという気持ちを抱えてじっと耐えています。
そこに、お姉ちゃんが現れました。
小さな女の子は、お姉ちゃんを見るなり、大粒の涙を流しました。
(「となりのトトロ」のサツキとメイをイメージしてみてください)
小さな女の子は、不安な気持ちをずっと心の奥に閉じ込めて我慢していましたが、
お姉ちゃんが現れたことで、今までの張りつめていた気持ちがゆるんで、涙を流したのです。
これは「悲しい」とも「うれしい」とも違う心情です。
「張りつめていた気持ちがゆるんだ」
長い心情表現なのですが、私は生徒にこのまま覚えなさいと話しています。
2023年SAPIX6年7月組分けテスト大問3の問2は、次のような問題でした。
【文章の内容】
目の前を流れる川の淀みに、アジサイの葉が一枚つかまっている。
「ぬけ出せるかな?」としゃがんでじっと見ていると、葉はするりと淀みをぬけ出し流れていった。
主人公は「ふぅ。」とため息をつき、のろのろと立ち上がった。
【問】 「のろのろと立ち上がったときの主人公の気持ちを選べ。」
線の直前に、「『ふぅ。』とため息をつき」とあるので、
「ため息」に注目し、
さらに「直前のできごと」が「葉が淀みからぬけ出した」なので、
心情を「安心」と考えた生徒が不正解となりました。
「ため息」では
①「安心」というプラスの心情
②「気が重い」という自分に対するマイナスの心情
③「あきれる」という相手に対するマイナスの心情
が考えられます。
今回は、線部が「のろのろと立ち上がった」という、マイナスの(=それ以前の気持ちが切り替わっていない)動作なので、
「安心」ではなく、②の「気が重い」が心情として適切でした。
SAPIXの正解選択肢には「ゆううつ」という心情語が使われていました。
(葉が淀みをぬけ出しても、自分の状況は変わらないので、ゆううつな気持ち というような感じです。)
かなりの難問でしたが、正答率は52%でした。
言動‣表情から心情を読み取る時は、一つではない可能性を考慮して答えを出しましょう。
そしてその際には、線部の直前のできごとや、線部自体の内容にも注目しましょう。