日本でもファンの多いフェルメールの作品、『真珠の耳飾りの少女』が再来日している。
私は、1984年、マウリッツハイス王立美術館展(国立西洋美術館)で、この作品を初めて見た。
その時は、特に鮮烈な印象があったわけでもなかった。
その後、来日したフェルメール作品を見に行ったり、
パリのルーブルやロンドンのナショナルギャラリーのフェルメールを見て、徐々に関心を深め、
オランダにフェルメールを見に行こうと決めた。
2007年、国立新美術館に来日していたが見逃した『牛乳を注ぐ女』を、アムステルダムの国立美術館で見て、
デルフトを経由して、ハーグ(オランダ語では、デン・ハフ)のマウリッツハイス美術館を訪れた。
マウリッツハイスは、こじんまりと四角い建物だった。
晩秋のデン・ハフ、鉛色の空の下、数えるほどしか鑑賞者のいない館内を回り、
外光が入る2階の小さな展示室に『デルフト眺望』を見つけてその前に立ち、
しばし見とれた後、ふと、後ろに気配を感じてふり返ると、そこに『真珠の耳飾りの少女』がいた。
過去の記憶と違うあまりの鮮やかさに、時間を忘れて見入った。
マウリッツハイスは写真撮影が許されていたので、2ショットの写真を撮ってもらって、旅の目的を達成したような気持ちになった。
行列して、人込みにもまれながら、落ち着かない鑑賞を余儀なくされる日本の美術館とは、雲泥の差だった。
後に、『真珠の耳飾りの少女』が1994年に修復されていたことを知った。
その際、少女の口元と耳飾りの部分には、かなりの印象の変化が生まれたようである。
2000年に大阪(大阪市立美術館)に来たときには、修復後だったということになる。
この絵画を題材にした小説と映画の存在も、日本に帰ってきてから知った。
『真珠の耳飾りの少女』は、トローニーであるとされ、特定のモデルをそのまま肖像画として描いたものではないとされる。
映画では、スカーレット・ヨハンソンが、絵のモデルとなる少女を演じていた。
マウリッツハイスが改装に入るという話は聞いていた。
その間、作品がどこに貸し出されるのかは知らなかった。
今回、改装なった上野の東京都美術館に再来日した『真珠の耳飾りの少女』を見に行くかは迷っている。
大混雑の中で見るような作品ではないと感じるからだ。
とは言え、「北のモナリザ」とも言われるこの作品は、一見の価値がある。
9月17日まで、上野の東京都美術館にいらっしゃる時間があるかたは、
少しでも空いている日時(休館日の月曜以外の平日午前中:9:30~)の鑑賞をお勧めする。
少女は、その後、上野から神戸(神戸市立博物館)に移り、年明けまで神戸で見ることができる。
勉強に追われて、余裕がなくなりがちな受験生も、時には、
様々な形で芸術に触れる機会を設けて、頭も体も心もバランス良く育っていっていただきたいものである。