女子学院の2012年入試では、ほぼ例年通り、随筆・論説系の長文が三題出題されました。2の問十四も自由記述要素があるので取り組みにくかったようですが、設問の意図の読み取りにおいては、1の問十の方が手ごわいと言えます。
そこで、1の問十をとりあげてみます。
設問は、内山節『森にかよう道』より、長野県大町市の森の「クマの座蒲団」の話から、人工と天然を対比し「建設の思想」の問題点を描き出している文章を読んで、
その森には、いまでも秋になると、二つ三つ「クマの座蒲団」がかけられている。
とありますが、どのような森ですか。説明しなさい。という問題です。
文章全体の中から、順に、著者の主張・価値観が表されている部分を拾ってまとめていくことになります。「クマの座蒲団」というのは、象徴的なたとえですから、具体例ばかりでなく、より一般的な説明をいれることが望ましいでしょう。
「建設の思想」と対比させるような説明も加えた方がよいでしょう。
例えば、
有用材が多量に得られないとしても、動植物にとって好ましく、手入れに手間がかからず、災害に強く、森の季節の移ろいを楽しむことができ、暮らしのなかの価値が高いなど、木材の生産以外にも利用価値のある森。
といった答えのまとめ方が一例としてあげられます。
地域の自然条件に適した森、その地域の風土や暮らしの歴史に適した森、といった部分を使うことも考えられます。
手際よく、文章の趣旨を読み取り、具体例と一般的主張、二つの考え方の対比を意識しながら、的確に素材を拾い出して、要領よくまとめる、という手順をふんでの答案作成で、ようやく得点できるという問題です。
この種の問題の対策としては、
「対比」の要素が含まれた文章からポイントとなるキーワードや表現、説明を拾い出して、ノートのページを二つに区分して整理してみるという方法、
「具体例」と「その具体例を通じて筆者が伝えたいこと」を区別して、特に、具体例を通じて筆者が伝えようとしていること、主張していることを見つける練習、
「たとえ」が使われている場合に、そのたとえが何を意味しているか考え、説明する練習、などが考えられます。
特に、設問を解くにあたって手際の良さが求められる学校を志望されている場合は、トレーニングの型を作って、要領よく、スピーディーに完答する力を伸ばしたいところです。
設問を解く際のひとつひとつの作業・手順の精度をあげること、精度を保ちつつスピードをあげること、をこころがけて、時間制限のある中での得点力アップを目指しましょう。