メニュー

投稿日:2019年03月26日

テーマ: 国語

花は盛りに判官贔屓?~日本人の伝統的な精神性について~

こんにちは! 受験ドクター国語科のS.M講師です。
すっかり暖かくなってきましたね。

saeki1

桜並木を見上げながらのんびり歩くのが心地よい時期がやってきました。
お花見といえば奈良時代から続くともされる伝統的な宴の一形態ですが、
現代日本においては花粉症が国民病と言われており
この季節に外でまったり飲食なんてとてもとても……という方も多そうです……。

さて、今回はそんな桜の季節にちなんで、
吉田兼好さんの文章をご紹介いたします。
吉田兼好といえば、なんといっても代表作は日本三大随筆の一つと言われる『徒然草』

saeki2

とはいっても、小学生にとっては「随筆」という文章のジャンル自体が
現代文ですら「なんだかよくわからん…」と思われがちなので、私は授業のときには
「随筆っていうのは、今でいうならブログやSNSみたいなものだよ!」と教えています。
「今日こんな人を見たよ。こういうことができる人ってやっぱりすごいよね!」とか、
「久しぶりに本当においしいと思える和菓子を食べて、日本っていいなぁと感じたよ。」とか。
このように体験したこと、見聞きしたこと+そこから考えたこと
セットになっているような文章のことを、「随筆」と呼ぶのです。
先述の三大随筆で最も古いものは平安時代の『枕草子』ですが、
昔から人はそういう風に日々の出来事やそこから感じたことを書き残していたのですね。

おっと、話が逸れてしまいました。
その『徒然草』第百三十七段に、このようなことが書かれています。

saeki3

現代語にしてみましょう。
「花(桜)は一番きれいに咲いている盛りの時期だけを、
また月はくもりのないきれいなときだけを見るべきものだろうか。いやそうではないと思う。
雨が降っている夜に、見えない月のことを恋しく思ったり、
すだれ(カーテンのようなもの)を下ろした部屋の中で春が過ぎゆくことに気づかずにいたりするのも、
それはそれでまたしみじみとして趣(おもむき)深いものなのである。
今にも咲きそうな桜の梢(こずえ)や、花が散ってしまってしおれた花びらが散らばった庭などにこそ、
見る価値があるのだということができる。」

日本人の美意識の中には、「全盛期じゃないくらいの方がちょっといいよね」という感覚が
含まれているといわれています。この文章はまさにそれを書き表していますね。
月についても、日本の伝統的な絵画においては、キラキラの大きな満月より
雲がなびいてかかっているような描き方ものの方が多くみられるように思います。
淡いもの、儚いもの、かすかなもの……そういったものを「趣深い」と愛でる感覚は
現代の生活の中ではやや薄れていっているようにも感じられますが、
やはりその国独自のもののとらえ方というのは大切にしていきたいなと思います。

また、これと少しばかり似たような種類の日本人の美意識として、
「判官贔屓(ほうがんびいき)」という
心理もあります。

これは、
強者と弱者がいれば弱者のほうに、
幸福な者と不幸な者がいれば不幸の方に、
より強く同情し味方しようとすること、その気持ち
のことを表すそうなのですが、これを読んでいる皆さまはいかがですか?

例えばあるスポーツにおいて、
ずっと首位を独走していて優勝間違いなし! というチームよりも
勝ったり負けたりをくり返しながらも頑張っている下位のチーム
ついつい、なんとなく応援したくなってしまう、あの現象。

saeki4

あるいは、物語であれば、完全無欠で最強のヒーローよりも、
実はつらい背景を持つがゆえに悪いことをせざるをえなくなってしまった敵役
何故かいっそう魅力を感じてしまう、あの気持ちの動きです。
彼は単なる悪いヤツじゃなかったんだ! と分かった途端に
そのキャラクターが気にかかるようになってしまうんですよね……。ああ、わかる……。
私自身、スポーツの応援に関してはあまりこの判官贔屓の傾向はないのですが、
読書や映画などのフィクションを楽しむときにはかなりこの傾向が強いです。

漢字で書くと一見難しそうな言葉ですが、言葉の由来となったのは
中学受験をする6年生なら皆さんご存知の、源頼朝・義経兄弟です。

saeki5

歴史で学習したとおり、源義経は兄の頼朝から追われる身となってしまい
最終的にはそのまま亡くなってしまったとされています。
(生存していたという説もありますが、それはまた別のお話。)
結果的に幕府を開き、政治的勝利者となった頼朝に対し、
悲劇的な人生を送ったとされる義経さん。
彼の別の呼び名に「九郎判官(くろうほうがん)」というものがあり、そこから
義経のほうをついついひいきしてしまうことを「判官贔屓」と呼ぶようになったのです。

日本語という言語そのものに、こういった歴史上のエピソードが含まれていたりするんですね。
いろんな教科をバランスよく勉強しておくことが、国語の上でも役に立つのだと思います。
逆に、国語で知った言葉の由来を調べることで、歴史や科学について知ることもあるでしょう。
何にせよ、気になったことをすぐ調べる癖をつけておくと、勉強も楽しくなりますよ♪

それではまた(・ω・)ノシ

国語ドクター