こんにちは。受験ドクター国語科のS.M講師です。
例年GW明けくらいから、私が担当している6年生に対して行う指導があります。
それは「黙読での・カタマリ読みを・意識してみよう」ということです。
中学受験の国語では、読解問題が一題であったり二題以上であったりと形式は異なれど
合計すると6000~8000字くらいの文章を読むことになるのが一般的です。
テスト時間の半分以上は問題を「解く」方に割くことになると考えると、
読む時間は必然的に半分以下しか確保できないので……。
つまり、この文字数を最大でも20分以内で読む必要があるわけです。
8000字の文章量の学校であれば1分間に400字くらいですね。
ただ、これは問題を比較的サクサクと解き進められることを前提としているのと、
物語文一題で出題するような中学校や難関校ではより長い文章が出題されるため
私は「理想を言うならば600字/分くらいで読めると楽」だと思っております。
…と理想を掲げるものの、
6年生のこの時点でその速度に達しているお子さんは決して多くはありません。
また、「テストで時間が足りなくなってしまった」というご相談も増えてきます。
そういうお子さんに聞いてみると、非常に多くの子が
文章を読むときに「アレ」をしているというのです。
そう。
「脳内で音読」。
たしかに、文章を正しく理解するという、国語の入り口の段階では音読も必要だと思います。
実際、私が国語の担当をすることになったお子さんには最初の何か月かは、学年を問わず
授業の中でも音読をしてもらうようにしていたりもします。
しかし、ずっと丁寧に丁寧に読んでいるだけでは、
解き終わらない=点数に繋がらない!
また、「与えられたものを時間内に解き終わらなかった」という事実は
お子さんの達成感を盛大に妨げてしまいます。
だから少しでも早く読むためのテクニックを教えてあげたい!
というわけで、「黙読での・カタマリ読み」を、お子さんに紹介し、意識してもらうのです。
「カタマリ読み」という表現は、なんとなく自分で使っているだけではありますが、
よく読書をされる親御様であればイメージは掴めるのではないでしょうか。
1~数文節ごとに言葉をまとめて視覚で認識するような読み方のことです。
イメージとしては、こんな感じですね。
文節などのカタマリごとに読んでいきます。
脳内音読派のお子さんの中にも、実は視覚的には同じ動きをしている子もいるのですが、
テストの時間がなくなってしまう! とお悩みのお子さんの場合、
目も音読と同じように一文字一文字を確認しながら順に読んでいることが少なくありません。
イメージとしては、このような読み方になります。
一文字ずつ追っていくとこんな読み方になります。
実は読んでいるときの目の動きをじーっと見ていると、どちらで読んでいるのか分かります。
上から下にすーっとゆっくり流れていく子は、順番読み。
視点が点から点へパッパッと飛ぶような動き方をしている子は、カタマリ読みをしています。
「じゃあ、どうすれば順番読みの子がカタマリ読みをできるようになるの?」
私が授業の中でお子さんに最初にカタマリ読みの話をするときに使っている方法をご紹介します!
まずは、お子さんには見えないようにしながら、適当な紙に、何か短い言葉を書きます。
本当に短いです。私は「花子さんは」など人名・主語の文節とする場合が多いです。
「今から一瞬だけこの紙を裏返すから、なんて書いてあったか当ててね!」
と伝えてから、クルッと文字の書かれた方をお子さんに向け、また素早く元に戻します。
(大人の目から見て、まぁこれくらいでなら読めるだろうという時間で良いと思います)
大抵のお子さんは、この時点では正しく答えられるはずです。
これは「人間は視覚だけで瞬間的に文字を認識することができる」という事実に
お子さん自身に気がついてもらうというのが目的です。
次に、別の紙にもう少しだけ長いフレーズを書いてみます。
「昨日の夕ごはんに」
クルッ。
先程と同じくらいの時間ですぐに元に戻してしまいますが、
おそらく、まだ対応できるはず。
最後。
「牛丼とサラダとハンバーグを作ろうとしましたが、コンロが故障していたのでやめて、出前をとりました」
クルッ。
「いやいやいや無理だよ~!」というお子さんの悲鳴が上がります(笑)
じゃあもう一回。今度はちょっとずつ出してみましょう。
「牛丼とサラダとハンバーグを」
「作ろうとしましたが」
「コンロが故障していたのでやめて」
「出前をとりました」
分けてみれば、読めるようになりますね。
そして、そこそこの長さのフレーズでも、案外一瞬で認識できるということを体感できたはずです。
実は国語の文章を読むのが早い人は、これを連続でやっているんだよ~、と伝えてあげることで
まずは「カタマリ読み」というものの存在そのものを知ってもらうことになるのです。
「読む」という動作には、筋トレのように外から見えるフォームなどがないため、
外からやり方を修正してあげるということは決して易しくありません。
ただ、まずその第一歩として、「こういう目の働きだよ」という体験をしてもらうことで
少しでもお子さんの読みへの取り組み方が好転すれば……。という心づもりで
例年この時期に授業内で提示しています。
これだけならご家庭でも簡単に試せると思いますので、もし興味がわいたらチャレンジしてみてくださいね。
それでは、また(・ω・)ノシ