こんにちは。
受験Dr.国語科の佐倉です。
前回の記事では、主語の見つけ方についてお話ししました。
今回は主語の大切さについて、物語文の心情記述問題を例に説明していきます。
【本文】
翌日が、『りぼん』と『なかよし』の発売日だったことを、私はすっかり忘れていた。ミーナが「うち来るでしょ?」と聞く声にはっとした。毎月、発売日の放課後にミーナとコンビニに一冊ずつそれぞれ買いに行って、どちらかの家で一緒に読むのが、いつの間にかルールみたいになっていた。
その二冊読みたさに私たちの仲間に入りたがっている子は他にもいる。でも、ミーナは「はるかは親友だから」と、私だけを誘ってくれている。
「行く!」
漫画が読みたいのはもちろんだったけど、すぐに返事をしたのは別の理由からだった。「親友」のミーナの誘いを断ったら、ミーナは次から早苗ちゃんとか、誰か別の子を誘うようになってしまうかもしれない。もう、次から私を呼んでくれなくなるかもしれない。
(吉祥女子2021 第1回)
傍線部「別の理由」がどのような理由かを問う問題です。
続く二文で理由が説明されているので、その部分を解答します。
ですが、これを
「誘いを断ったら、次から早苗ちゃんや誰か別の子を誘うようになってしまうかもしれないから。」
というように書くと、不正解です。
その理由を、正しい解答を導きながら確認していきます。
まず、こういった物語文の心情問題を解くときに最初にしてほしいのは、
「誰の心情を聞かれているのか」を確認することです。
傍線部だけ読んで解答しようとし、別の人物と勘違いしたまま答えてしまう、ということは少なくありません。
入試本番でやってしまうと、そのミスがなければ合格できたのに……なんてことがあるかもしれません。
それを防ぐためにも、「傍線部分にかかる主語を最初に確認する」、これを徹底していきましょう。
さて、この問題で問われている心情は、誰のものでしょうか。
それを知るために、主語を探していきましょう。
前回のおさらいです。
初めに、傍線部が引いてある一文は、必ず始めから終わりまで読んでください。
「漫画が読みたいのはもちろんだったけど、すぐに返事をしたのは別の理由からだった。」
文全体の主語を判別するために、述語を探します。
この文全体の述語は、「別の理由からだった」です。
何が別の理由からだったのかというと、「すぐに返事をしたのは」ですね。
文全体の主語は、「すぐに返事をしたのは」です。
しかし、今回はそれだけだと、誰の行動なのかがわかりません。
もう一度同じように、誰がすぐに返事をしたのかを考えると、それは「私」であるとわかります。
ということは、この問題で問われているのは、「私」の心情なのです。
ならば当然、解答も「私」の心情でなければなりません。
先ほどの誤った解答ですと、
文全体の述語「誘うようになってしまうかもしれない」に対応する主語は、
「私」ではなく「ミーナ」です。
つまり、「私」について問われているのに、答えているのは「ミーナ」についてなのです。
これでは正しい解答と言えません。
記述するときは、心情を聞かれている人物が主語になるようにしてください。
解答欄が「〇〇(心情を聞かれている人物)は」から始まっているつもりで書きましょう。
癖がつくまでは、実際に欄外に書いてみるのも良いですね。
この問題の解答では、「私は」から始まります。
「私」が主語の場合は、「誘う」ではなく、受け身の「誘われる」が正しい表現です。
誘うのは「ミーナ」ですから、それも解答に入れましょう。
すると、次のようなかたちになります。
「ミーナの誘いを断ったら、次から誘われなくなるのではないかと心配になったから。」
これが、正しい解答です。
今回は記述問題を取り上げましたが、
選択問題でも、誤った選択肢として、主語が異なっているものが出ることがあります。
どの種別の問題でも、まずは主語を確認してください。
それによってミスを防ぎ、より高い得点を目指すことができます。
以上、簡単な説明ではありましたが、少しでもお役立ていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
佐倉 沙良