こんにちは。
受験Dr.国語科の佐倉です。
突然ですが、国語の記述問題で悩んでいる生徒には、こんな子がいます。
答えの内容を口で言うことはできるのに、いざ解答欄に書こうとすると、手が止まってしまう。
どうしたのか聞いてみると、「何を書いたら良いの?」と言うのです。
さっき言っていたことを書くだけだと伝えても、「なんて言ったか忘れた」と返ってきます。
こういうことは、どちらかというと話すことの方が得意で、書くことが苦手という子に多いと感じます。
口頭では思い浮かんだものをそのまま声に出すだけで良いのですが、
書くとなると、内容や出だしの言葉を決めなくてはなりません。
すると、「何から始めよう、そういえば何を書けばいいんだろう、そもそも何を聞かれていたんだっけ」
と悩みだして書けなくなってしまう……のではないかと、私は考えています。
そしてこういう子は、選択肢問題をなんとなくで答える傾向にあります。
よく「直感で答えるタイプ」なんて表現されますね。
ですが私は、本当に理由もなく直感で答えているのではなく、
自分の中では答えだと思う理由があるのに、曖昧で言語化できないのでそう言っているという場合が多いのではないかと思っています。
なぜかと言うと、よくよく話を聞いてみると、
みんな「選択肢を読んであっている気がした」「そのようなことが本文に書いてあった」と言うからです。
そして説明するときに「気がした」「そんな感じ」「だと思った」という言葉をよく使います。
加えて、設問の条件を見落としてミスをしていることが多いのです。
本文や設問をよく読んでおらず、あるいは読んでも途中で忘れてしまって、
どこが解答の根拠となる部分なのか明確にわからない。
だから、聞かれても説明できないのです。
ですが、試験では「なんとなく」も「直感」も通用しません。
本文の内容も設問もわかった「気がした」まま答えようとしてはいけません。
答えの根拠を見つけましょう。
その子たちに「よく読んで」と伝えても、なかなか改善されません。
「よく読む」ということがどういうことなのかが、わからないからです。
大切なのは、何を聞かれていて、何を答えたら良いのかを明確にすることです。
授業では、まずは設問で出てきた言葉に印をつけるように伝えています。
次に、聞かれている内容を確認し、何を答えたら良いのかを言葉にする。
そして、本文から印をつけた単語が出てくるところを探してから、問題にとりかかる。
何を聞かれているかわからなくなったら、再び設問を確認する。
手順を実際の入試問題を使用して説明していきます。
実践学園中学校 2022年第1回で出題された論説文です。
傍線部 「『創発』」とありますが、これはどのような現象のことですか。
という問題です。
まずは、設問に出てきた単語のうち、「創発」「どのような」「現象」に印をつけましょう。
「これ」は「創発」のことなので、今回は印をつけなくて構いません。
「どのような」は問いの種類を表します。
本文には関係ありませんが、聞かれていることを確認するためには必要です。
では次に、聞かれていることと、答えることを確認します。
聞かれているのは「『創発』はどのような現象のことか」、答えるのは「『創発』はどのような現象のことか」です。
そう、当然ですが、聞かれていることと答えることは、同じ内容です。
当たり前のことをもう一度確認してください。
ここで「聞かれていることと答えることは、同じ内容だ」と理解しておくことが重要なのです。
それができたら、最初に印をつけた言葉を本文中から探していきます。
すると、最後の一文に「創発」と「現象」がありますね。
見つけやすいように印をつけましょう。
「そういう現象を「創発」と呼び、生物学、情報科学、社会学などさまざまな分野で引用されていますが、AIを利用した創造を繰り返していけば、どこかで、思いがけない「創発」が起こるかもしれません。」
あとはもう、問題を解くだけです。
設問の内容を忘れていたら、をもう一度確認してください。
「『創発』はどのような現象のことか」を答えていきます。
本文に戻ります。
「そういう現象を『創発』と呼び」という部分が重要だとわかるはずです。
「現象」に指示語「そういう」がくっついているので、「そういう」が指している部分を見てください。
そこに答えが書いてあります。
今回の問題では具体例で示されているので、抽象的に言い換える必要がありますが、
なんとなくで答える子は、まずは「ここが答えだ」という場所を見つけましょう。
もちろん、今回は一例に過ぎません。
他の原因がある子もいるかもしれませんし、当然、これだけでは解けない問題もあります。
ですが、記述問題に限らず国語では、
何を聞かれていて、何を答えたら良いのかを正確に把握することが必要になります。
家庭学習の際にはぜひ、何を聞かれているのか、何を答えたら良いのかをお子様に聞いてみてください。
今日のお話がお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。