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投稿日:2024年07月16日

テーマ: 国語

中学受験 国語 知らない熟語が出てきたときはどうする?

みなさん、こんにちは。
受験Dr.の佐倉です。

授業で読解演習を行っていると、
「この言葉ってどういう意味?」と聞かれることがあります。

保護者の皆様の中にも、お子様から聞かれたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

中学受験の国語では、小学校で習わない漢字が度々出てきます。
読解問題の素材文には、中学生にとっても難しいような熟語が注釈なしで出てくることも。

家庭学習では言葉の意味を確認できますが、テスト中は聞ける相手はいませんし調べる手段もありません。
しかし、書き取り問題ならともかく、読解問題の素材文で出てくる難しい熟語は基本的に、知らなくても良い言葉です。

もちろん、知っているに越したことはありませんから、問題に知らない言葉が出てくる度に調べたり、普段から様々な言葉に触れたりすることは大切です。

ですが、いくらそれをやっても全ての熟語を網羅できるわけではありませんし、他教科の勉強もある中で漢字だけに時間を割く余裕もありませんよね。

必要なのは、言葉の意味を知っていることではなく、意味を推測することです。

大人でも「意味を正しく説明することはできないが、なんとなく理解できるし使える言葉」はありますが、それで困ることは少ないですよね。
なぜかというと、漢字そのものの意味や文脈から、熟語の意味を推測して判断しているからです。

 

知らない熟語が出てきたとき、その熟語に知っている漢字が含まれていたらヒントにしましょう。
知っている漢字を使った熟語をいくつか思い浮かべてみてください。
どんな意味か、なんとなく想像がつくと思います。

もちろん、漢字には複数の意味がありますし、漢字の意味とはまったく異なる意味を持つ故事成語の場合もありますから、想像した意味で読んでも話の流れがおかしくならないかは確認してください。

知らない漢字同士の組み合わせだった場合は、
その熟語が出てくる文の前後の流れ、主語と述語、熟語が修飾しているもの、あるいは熟語に修飾されているものを確認すると、推測しやすくなります。

 

実際にやってみましょう。

 

「一方、欧米語話者には処理回路が一つしかない。もちろん読書人の中には幼児期から大量の文字情報に接してきたせいで、表音文字で綴られた語を表意的に読むという技術を習得している人はいると思います。(略)けれども、アルファベットを一瞥すると、それが表意的に立ち上がり、ある種の物質性を持って直に身体に触れてくるような「白川静的」読字経験ができるためには、どうあっても長期にわたる集中的な、ほとんど偏執的な読書体験が必須です。」内田 樹『日本辺境論』(2022年早稲田第2回)

 

「一瞥」という言葉の意味を推測していきます。
「アルファベットを」が「一瞥する」を修飾していますから、文字に使う動詞だとわかりますね。
考えられるのは、読む、書く、使う、理解する、などでしょうか。
ひとまずこの四つのうちどれかに類似する意味を持っていると仮定します。

続きを読むとなんだか難しいことが書かれていますが、短く区切ってひとつひとつ理解していきましょう。
「それが表意的に立ち上がり」「『白川静的』読字経験ができるためには」「長期にわたる集中的な、ほとんど偏執的な読書体験が必須」というところから、
表意的に理解する読字体験ができるためには、長期間の集中的な読書体験が必須というような意味だと、想像できるのではないでしょうか。

整理すると、
アルファベットを一瞥すると、アルファベットを表意的に理解する読字体験ができるためには、長期間の集中的な読書体験が必須だ
という内容の一文だとわかります。

また、文の頭には「けれども」という逆説の接続詞があります。前の文から想像される結果と反対の内容が続くので、この文は、
表音文字で綴られた文を表意的に読むことが容易にはできない
というような意味になると予想できます。

「アルファベットを一瞥~できるためには」は、表音文字で綴られた文を表意的に読む、と同じような意味でなければなりません。
よって、「一瞥」の意味は、先に挙げた四つの中から選ぶなら、「読む」が良いとわかります。

 

「一瞥」の正しい意味はちらりと見ることなので、正確には「読む」では誤りなのですが、本文を理解することに支障はないでしょう。

 

ご自宅で問題を解く際も、意味のわからない語句が出てきたら、まずはどういう意味で使われているのかを考えてみましょう。

もしお子様から質問されても、教えてあげるのは解き終わったあとです。
大人から子供の悩む様子を見ているともどかしく感じるかもしれませんが、これは試験本番に向けた練習です。

知らない言葉は人に聞かずに自分で調べないと身につかないという人もいますが、私は、人によると思っています。
人によって、見た方が覚えやすいか、聞いた方が覚えやすいかが異なるからです。
ただ、視覚や触覚といった五感の中からひとつでも多く使っていた方が覚えやすいのは確かです。
全ての語句を誰かに聞くのは現実的ではありませんし、ひとりで学習する際に小さく呟きながら調べるのも良いですね。

熟語を調べるときには、意味だけでなく、漢字一字一字の意味も理解しておくことをおすすめします。
他の組み合わせの熟語が出てきたときに、意味を推測しやすくなるからです。

テストでは制限時間がありますから、長々と悩むことはできません。
どうにも推測できない、無理だ!と思ったら読み飛ばす勇気も必要です。
何分もかけて悩んだ部分が解答に必要のないこともあり得ます。

 

推測することに慣れてくると、かかる時間が短くなっていきます。
試験本番までに、行われるテストや家庭学習で練習しましょう。

 

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

国語ドクター