こんにちは。
受験Dr.の科学大好き講師、澤田重治です。
私は、お子さんをやる気にさせることも「科学」だと思っています。
もちろん、お子さんの性格は十人十色ですから、
効果的なやる気の上げ方もお子さんによって異なるでしょう。
しかし、多くのお子さんに共通する一般論は知っておくべきだと思います。
そこで今回は、「上手な褒め方」をテーマにお話ししていきます。
「褒める」はアクセル、「叱る」はブレーキ
日本人は、褒めることを苦手にしている人が多いと言われています。
一般的に褒めることが少なすぎるようです。
基本的に、褒めすぎて悪いことはないと言われています。
遠慮はいりませんので、どんどん褒めてあげてください。
「あまり褒めすぎると図に乗るから……」という心配もご無用です。
褒めるという行為は、言わば車のアクセルです。
お子さんの成長の過程では、時にはブレーキをかけたり、
ハンドルを切って進行方向を変えたりすることもあるでしょうが、
それもすべて「前に進む」という前提があってのことです。
どんどん褒めてアクセルを踏んであげましょう。
もし調子にのって暴走しそうになったら、
そのときには「叱る」というブレーキをかけてあげればよいのです。
ただし、褒める際に1つだけ気をつけなければならないことがあります。
それは、「結果や能力を褒めてはならない」ということです。
どれだけ良い結果だったしても、その結果そのものを褒めるのではなく、
そのような結果を出せるに至った努力の過程を褒めてあげるようにしてください。
次の章で、その理由をご説明します。
スタンフォード大学の心理学実験
スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエックという教授は、
思春期初期の子どもたち数百人を対象に次のような実験を行いました。
まず、生徒全員に難しい問題を10問解かせ、
その結果に対して、生徒を二つのグループに分けて褒め言葉をかけてあげます。
もちろん、両グループの成績はまったく等しくなるように分けておきます。
【第1グループ】……「能力」を褒める
第1グループでは、その子の能力を褒めます。
つまり、「8問もできるなんて頭がいいんだね」という要領です。
【第2グループ】……「努力」を褒める
第2グループでは、その子の努力を褒めます。
つまり、「8問もできるなんて頑張ったんだね」という要領です。
次に、子ども達に新しい問題を見せて、
新しい問題に挑戦するか、同じ問題をもう一度解くかを選ばせました。
すると二つのグループの間で、明確に差が現れたのです。
まず、「能力(頭の良さ)」を褒められた第1グループの生徒たちは、
新しい問題を避け、同じ問題を解こうとする傾向が強くなりました。
ボロを出して自分の能力を疑われるのが怖かったのでしょう。
一方、「努力」を褒められた第2グループの生徒たちは、
その9割が新しい問題にチャレンジする方を選びました。
新しい問題にチャレンジするという努力を褒められることを期待したのでしょう。
お子さんにチャレンジする勇気を!
当然、中学受験でお子さんに結果を出してもらうためには、
初見の問題への対応力を鍛えていかなければなりません。
ただやる気になるだけではなく、
新しい問題にチャレンジする勇気も得てもらわなくてはならないのです。
もちろん、最初にも書いたようにお子さんの性格はそれぞれですから、
中には才能を褒められたことで、さらに挑戦心が芽生える子もいると思います。
才能を褒められることで自己肯定感を持つことができ、安心する子もいるでしょう。
しかし、だからこそ、その安心感を確実に持ち続けるために、
新しい挑戦を避けて評価が覆らないようにする心理についても
理解をしておく必要があります。
才能を褒めることは、諸刃の剣なのです。
安心してアクセルを踏めるのは、やはり「努力」を褒める褒め方でしょう。
受験生にとっては、ここからが正念場です。
お子さんを大いに褒めて、アクセルを踏んであげてください。
そして褒めるときには、実際にできたかどうかに関わらず、
お子さんがチャレンジしたことを褒めてあげてください。
志望校合格に向けて、どんどん前へ進んでいきましょう!
次回は、ブレーキである「叱り方」の注意点をお話しします。
どうぞお楽しみに!