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投稿日:2024年09月06日

テーマ: その他

中学受験に役立つ「上手な子どもの叱り方」

こんにちは。
受験Dr.の科学大好き講師、澤田重治です。

前回は、「上手な褒め方」についてお話ししました。
褒めてあげることで、お子さんのアクセルを踏んであげることができます。

しかし、モータースポーツを見ていると、
アクセル以上に勝負の鍵を握るのはブレーキングです。
ドライバーの腕の差が出やすいところとも言えるでしょう。

叱り方のイメージ

そこで今回は、「上手な叱り方」をテーマにお話ししていきます。

 

どんなときに叱る必要があるのか?

前回のブログから、お子さんの学習へのモチベーションをモータースポーツに例えて、
「褒めるはアクセル、叱るはブレーキ」と表現しています。

レースでは、直線コースで加速するときにはアクセルを思い切り踏んでいますが、
カーブの手前ではしっかりとブレーキをかけて減速しなければなりません。
アクセルもブレーキも必要で、使う場面が違うということです。

運転のイメージ

では、どのようなときに「叱る」というブレーキが必要になるのでしょうか。
それは、そのままにしておいてはお子さんのプラスにならないときだと思います。

もう少し具体的に話しましょう。

多くの人は、何かうまくいかないことがあったときに、
その主原因を次の4種類のいずれかに分類して考えます。
それぞれ、テストの点が悪かった場合に原因として考える例を載せておきました。

① 外的・固定的要因
自分の外にあり、当面は変えられない原因のことです。
失敗の原因を、「課題が難しすぎたからだ」と思っているということです。
(例)・問題が難しかったから。
・先生の教え方が悪かったから。

② 外的・変動的要因
自分の外にあり、変化する可能性がある原因のことです。
一言でいえば、「運が悪かった」と思っているということです。
(例)・ヤマが外れちゃったから。
・隣の子がうるさくて問題に集中できなかったから。
・前日に親戚が来ていて勉強できなかったから。

勉強する様子

③ 内的・固定的要因
自分の内側に原因があり、それがほとんど変動しないものです。
つまり、「自分には能力がなかったから」と思っているということです。
(例)・理科が苦手だから。
・頭が悪いから。
・お父さんもお母さんも文系だから。(遺伝的に理系科目は苦手だから。)

勉強する様子

④ 内的・変動的要因
自分に原因があり、それが変動する可能性があるものです。
失敗の原因が、「自分の努力不足だった」と考えているということです。
(例)・準備を始めるのが遅かったから。
・参考書を読むばかりで、問題集をあまりやっていなかったから。
・勉強の仕方が非効率的だったから。

 

この中で、お子さんが失敗の原因を
「④内的・変動的要因(努力)」と考えているのなら、
あえて叱る必要はないでしょう。
次へと向かうお子さんの後姿を温かく見守ってあげてください。

それ以外の①②③に分類をしている場合は、修正してあげる必要があります。
実は、それが「叱る」という行為なのです。

なぜなら、自分の力で変えることのできない部分に原因があると考えているのなら、
きっとお子さんは改善行動を起こさないからです。

だから、ここで重要なのは、実際の原因が客観的にどうかではなく、
お子さん自身がどう考えているかという主観的な原因分類です。

つまり、客観的に見て「本当に運が悪かっただけ」ということもあるでしょうが、
お子さん自身はそう考えない方が一般的には良いということなのです。
(※状況によっては、あえて運のせいにしておいた方が良いこともあります)

例えば、人には誰しも得手不得手がありますから、
範囲のないテストで偶然苦手な単元ばかりが出てしまったら、
想定外の厳しい結果になることもあるでしょう。
そのときに、「運が悪かっただけだから仕方ない」と考えるよりも、
「どうしたら苦手分野をなくせるだろうか」と考えてくれた方が
建設的な改善行動につながる可能性が高いからです。

 

 原因帰属を変えるには

では、もしお子さんが「④内的・変動的要因(努力)」以外を原因と考えていたら、
どのように叱れば良いでしょうか?

以下は、テストの結果が悪かった原因を
「①外的・固定的要因(課題の難易性)」と考えているお子さんと、
「④内的・変動的要因(努力)」と考えさせたい母親の会話例です。

 

母 「どうして今回の理科のテスト、こんなに点数が悪かったの?」
子 「だって、問題が難しかったんだもん。仕方ないじゃん。」
母 「そう……でも、クラス全員が点を取れていないというわけじゃないんでしょう?
平均点だって、いつもよりは少し低いのかもしれないけど、
それでもあなたの点数よりは高いみたいじゃない。
もっと取れている人が実際にいるっていうことでしょう?」
子 「そりゃあ、理科が得意な人だっているから……
でも、僕は理科が嫌いだし、特に力学のところは苦手だから、
僕にとっては難しかったの!」
  ※この時点で自分自身(内的要因)に原因の分類を変えている。
母 「そうね。お母さんも理科は苦手だったから気持ちは分かるわ。
でも、逆にいえば40点分はできているということなんだから、
少し時間はかかるかもしれないけど、残りの60点分も
ちゃんとやったらできるようになるんじゃない?
先生だって、あなたは理解力があるって言っていたし、
もともと小さい頃から頑張り屋さんなんだから――
お母さんはあなたの力を信じているわよ。」
子 「うん……じゃあ、次は頑張ってみるよ。」
  ※今回は頑張りが足りなかったということを暗に認めている。

親子が会話する様子

 

いかがでしょうか。
実際には、なかなかこんな風にスムーズには叱れませんね。

お子さんに期待しているからこそ、
お子さんのことを想っているからこそ、
どうしても冷静に叱れないというのが多くの方の悩みだと思います。

それでも、どうすべきかを知っているということはとても重要です。
お子さんが失敗の原因をどのように考えているのかを、ぜひ分析してあげてください。

 

次回は、もう少し違う観点から「叱り方」を研究してみます。
どうぞお楽しみに!

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