皆さんこんにちは。
受験ドクターの科学大好き講師、澤田重治です。
これまでの私のブログでは、家庭でも簡単にできる実験をシリーズで紹介してきました。
もちろん、これはこれで続けていこうと思っているのですが、今回からはそれと並行して、新シリーズ「記憶の科学」をスタートさせたいと思います。
このシリーズでは、単なる経験則だけではなく、学習には欠かせない「記憶」の仕組みを科学的に考え、効率よく覚える方法を紹介していきます。
どうぞご期待ください!
第1回のテーマは、「記憶の3段階」です。
一言で「記憶」と言っても、実は三つの段階が組み合わさっています。
その3段階のうちの、どこが欠けても記憶は成立しません。
それぞれの特徴と強化するための方法を、科学的に解き明かしていきます!
記憶の第1段階 「記銘(きめい)」
記憶の第1段階は「記銘(きめい)」、英語ではRegistration(「登録」の意味)と言います。
これは、覚えるべき知識を脳に刻み込む作業のことで、いわばインプットの作業です。
学習したことを、私たちは「記憶の脳(=海馬)」に記録していくのですが、人間の脳は、いきなり完全な記憶にするわけではありません。
私たちが見聞きしたことは、ひとまず短期記憶として脳に入ってきます。
そして、何もしなければ、その記憶はたった数十秒で消えてしまうのだそうです。
(どうやって消えないようにするかについては、次の章で説明していきます。)
この記銘の段階で工夫できる記憶のコツは、次の通りです。
「イメージを利用して印象深く記憶する」
「記憶の科学」シリーズの第3回で詳しく扱う予定ですが、私たちの長期記憶には種類が二つあります。
そのうち、短時間で覚えることに向いているのは「エピソード記憶」と呼ばれるもので、経験やイメージに基づく記憶なのです。
だから、まるで漫画の世界のように誇張して、印象深くイメージすると効果的に覚え荒れえます。
記憶の第2段階 「保持(ほじ)」
名前の通り、記憶の脳に記録された情報を、なくさないように保つことです。
英語ではRetentionと言います。
一旦、短期記憶として記銘された知識は、何もしなければ数十秒間で消えてしまいます。
しかし、その消えるまでの数十秒間に何度か繰り返すことによって、短期記憶が長期記憶に変換され、保持されやすくなることが知られています。
今、覚えたばかりのことを、もう一度思い出し、確認する……頭の中で反芻(はんすう)するイメージですね。
しかし、この定着も、一度では不十分です。
皆さんも、「エビングハウスの忘却曲線」の話はお聞きになったことがあるでしょう。
せっかく覚えても、20分後には42%、1時間後には56%、1日後には74%も忘れていくのです。
ですから、授業後、できるだけ早く復習することが必要となります。
お子様が授業からお帰りになったら、ぜひ「今日は何を教わったの?」と聞いてあげてください。
この一言が、お子様の記憶を守ることにつながるのです。
記憶の第3段階 「想起(そうき)」
頭の中に保持された記憶を思い起こすこと。
つまり、アウトプットの作業を想起と呼び、英語ではRecallと言います。
記憶を呼び覚ますには、そのきっかけが必要です。
皆さんも、ある特定のにおいをかいだり、懐かしい曲を聴いたりしたときに、突然忘れかけていた記憶がふっとよみがえったなどという経験がありませんか?
このように、五感がきっかけとなる場合もありますし、単に関連して覚えたことがきっかけとなる場合もあります。
つまり、様々な事柄と関連付けるほど、その記憶を呼び起こすきっかけが多くなり、想起しやすくなるということです。
よく、「ノート術」などの本に、「マインドマップのように関連事項を書いたノートが記憶に役立つ」という趣旨のことが書かれていますが、これも『知識のネットワーク』を作ることになるからなのでしょう。
これらの理論を踏まえて、ぜひ科学的に効率の良い方法で学習してください。
教育は科学です。
学習を、根性論と努力だけで乗り切るのは時代遅れと言えるでしょう。
理科の講師だからこそ持っている科学的視点を、ぜひともお役立ていただければと思います。
次回もお楽しみに!