皆さま、こんにちは!
いよいよ夏も終盤に入ってきました。
この夏も充実した勉強ができたでしょうか?
残りわずかではありますが、1分1秒をムダにしないように頑張っていきましょう。
さて、前回は「場合の数」について、順列(並べ方)と組合せ(選び方)の基本的な考え方をご説明しました。
前回強調したのは、「ベースは樹形図」と「計算の基本は順列」と「ダブりを消す」の3つでした。
軽く振り返ると、
①「場合の数」の計算のベースは樹形図なので、いつも頭に樹形図のイメージを持つ
②「場合の数」に関する計算のほとんどが、順列の計算の応用や発展でしかないと理解する
③組合せのような順番のない「場合の数」も、2つの順列を利用してダブりを消すことで計算できると知る
の3点をまずは押さえましょうという内容でした。
これがわかると、例えば「A,B,C,D,E,Fの6人から3人を選ぶ方法」のような組合せの基本問題が解けます。
詳しい内容は前回のブログを読んで頂くとして、結論としては以下のようなイメージになります。
公式としては、6×5×4÷(3×2×1)=20というだけで、それを知っているお子様は多いはずです。
しかし、その計算が意味していることを正しくイメージして理解しましょうね、ということでした。
さて、では今回は、この「組合せ」の計算をさらに利用して、より複雑な「場合の数」を考えてみましょう。
まずは次のような問題です。
「男子が5人、女子が7人います。男子から2人、女子から3人を選ぶとき、選び方は何通りですか?」
これは、「組合せ」の応用として必ずテキストに載っている問題ですね。
ポイントは、男子と女子を分けて考え、最後にそれらをさらに組み合わせるということです。
男子からだれを選ぶのか、ということと、女子からだれを選ぶのか、ということは無関係ですよね?
現実には、〇〇くんと同じグループになりたい! みたいなことはあったりはしますが…
算数の問題ではそういうことは考えません!
ですので、それぞれをバラバラに考えて問題ないのです。
こういった考え方は、受験ドクターの根本原理では、実践編240番のカードに出てきますよ!
それではやってみましょう!
まず、男子5人から2人を選ぶことを考えます。
これは5×4÷(2×1)=10なので、10通りです。
次に、女子7人から3人を選ぶことを考えます。
これは7×6×5÷(3×2×1)=35なので、35通りです。
男子の10通りの選び方に対して、それとは無関係に女子の選び方は35通りあります。
ということで、10×35=350となり、答えは350通りとわかりました。
簡単ですね?
このように、「組合せ」同士をかけ算することで、より複雑な「場合の数」を求める問題はよくあります。
では、次のような問題はどうでしょう?
「A~H8人の生徒を、サクラ班3人、スミレ班3人、アヤメ班2人の3つの班に分ける方法は何通りですか?」
これは「組分け」と呼ばれる有名問題で、「組合せ」の応用として大切です。
考え方は先ほどの問題と似ていて、順番に「組合せ」を求めてかけ算すればよいのです。
さっそくやってみましょう!
まず、サクラ班に入る3人を選びます。
これは、8人から3人を選ぶということです。
ですので、8×7×6÷(3×2×1)=56で、56通りです。
次に、スミレ班に入る3人を選びます。
このとき、すでにサクラ班に入る3人は決まってしまっていることに注意してください。
すると、残り5人から3人を選ぶということになります。
ですので、5×4×3÷(3×2×1)=10で、10通りです。
最後に、アヤメ班に入る2人を選びますが、これについてはすでに決まってしまっています。
サクラ班とスミレ班に入る人が決まった時点で、残りの2人がアヤメ班に入るしかありません。
ということで、これは計算するまでもなく、1通りですね。
したがって、すべての場合の数は56×10×1=560で、答えは560通りとなります。
わかりましたでしょうか?
さて、今日の本題はここからです。
先ほどの問題を、次のように変えてみます。
「8人の生徒を、3人、3人、2人の3つの班に分ける方法は何通りですか?」
さあ、これならどうでしょう?
もし、さっきの問題と同じじゃないの?と感じたのなら、それは残念ながら間違っています。
あらためて2つの問題をよーく見比べてみてください。
「A~H8人の生徒を、サクラ班3人、スミレ班3人、アヤメ班2人の3つの班に分ける方法は何通りですか?」
「A~H8人の生徒を、3人、3人、2人の3つの班に分ける方法は何通りですか?」
違いはどこにあるでしょうか?
そうです、班に名前がついているかどうかです!
えー、そんなの大した違いじゃないじゃん!?
そう思われる方もいらっしゃると思いますが、これは数学的には大違いなのです!
「場合の数」を考えるときは、名前がついているかいないのか?という違いはとても重要です。
こういった微妙な違いに対して敏感でいないと、「場合の数」の問題ではよくひっかけられることになります。
どういうことか説明します。
例えば、サクラ班にA、B、Cの3人が入り、スミレ班にD、E、Fの3人が入ったとします。
これに対して、サクラ班にD、E、Fの3人が入り、スミレ班にA、B、Cの3人が入ったとします。
この2つは違うことですよね?
ですから、この場合はこれら2つを別のものとして、2通りと数えます。
しかし、どちらの場合も「A、B、CとD、E、Fの3人ずつに分けた」という意味では同じことです。
ということは、「3人、3人、2人に分ける方法」ときかれた場合、これは1通りと数えないといけないのです!
すると、どうでしょう?
先ほど、班に名前がついている場合は560通りと求めました。
しかし、班に名前がついていないのなら、この中に必ず2通りずつダブりがあることになります。
ということで、班に名前がない場合は、560÷2=280で280通りと答えるのが正解なのです。
わかりますか?
これってなにかに似ていると思いませんか?
そうです、これは「ダブりを消す」ですね!
つまり、「組合せ」の計算の理屈と一緒です。
班に名前がついているということは、班に順番があるということです。
それに対して、班に名前がついていないということは、班に順番などの区別がないということです。
ですから、「組合せ」の計算で順列を考えてダブりを消した考え方が、この場合も成立するのです。
いかかがですか?
「場合の数」の計算のほとんどが、順列の計算の応用でしかないという意味がわかってきたでしょうか?
冒頭に、前回の復習として3つのポイントを書きました。
今回も、その3つのポイントを押さえるだけで問題が解けていることをぜひ確認してください。
このように、複雑そうに見える問題でも、すべては基本的なことの積み重ねに分解することができます。
基本を押さえ、それらを自在に積み重ねることで、難問もスラスラと突破できるようにがんばってください!