皆さま、こんにちは!
いよいよ2月1日が、1週間後に迫ってきていますね。
ここまで来たら、やれることも限られてきます。
これまでに受けた入試問題や模試の振り返りをしっかりやるのが一番良いでしょう。
一度間違えた問題は、「同じような問題が出たら絶対に間違えないぞ!」という状態にしておくことが大切です。
体調管理にだけはしっかり気をつけて、ギリギリまで頑張ってください!
さて、このブログでは初回からずっと「場合の数」をテーマに書いてきました。
今回もその続きでも良かったのですが、2月1日直前なので、ちょっと変化球にします。
もし、こういう問題が本番で出題されたら、さっと解けますか?という内容です。
テーマは「一筆書き」です。
まずは、次のような問題を考えてみてください。
いかがでしょうか?
何も知らないと、一生懸命に図形を線でなぞって、できるものを探してしまうかもしれません。
時間があるならそれでも構わないのですが、もし試験本番ならさっと解いて次の問題に進みたいところです。
実は、知ってさえいればすぐに「一筆書き」ができる図形かどうか判定する方法があるのです。
最近はあまり見かけなくなった問題なので、判定方法自体もあまり知られなくなった気がします。
もし万が一受験校で出題されたら、この方法でさっと解けるように、軽く練習しておくといいと思います。
出題頻度は低いので、そんなに神経質にならなくて大丈夫です。
本番に向けた頭の体操くらいのつもりで、お子様と一緒に考えてみてください。
そんなの知っていますよ!という算数が得意なお子様は、答えだけ確認して別の勉強に進んでOKです!
なお、「一筆書き」ができるとは、すべての辺を1回ずつ通ってスタート地点に戻ってこられるということです。
同じ辺は1回しか通れませんが、頂点については何度同じ点を通過しても構いません。
では、まず先に答えを発表します。
この中で「一筆書き」が可能な図形は、イとエの2つです。
この2つについては、うまく回ってくれば「一筆書き」ができるルートが必ず存在します。
興味があれば探してみてください。
逆に、アとウは、どんなに頑張っても「一筆書き」することは不可能です。
それでは、どうやって考えれば、「一筆書き」が可能な図形かどうかがすぐにわかるでしょうか?
ポイントは、それぞれの図形を作る頂点から、何本の辺が伸びているか?ということです。
まずは、各頂点ごとに、何本の辺が伸びているか数えて、それをメモってください。
次に、その中で、辺の本数が偶数になる点(偶点と呼びます)と、奇数になる点(奇点)を確認してください。
こんな感じになりますね?
さあ、ここまでくれば準備完了です。
「一筆書き」が可能な図形には、以下のふたつの条件があります。
条件① すべての頂点が偶点である
条件② すべての頂点のなかで、奇点はちょうど2つだけあり、それ以外はすべて偶点である
①か②のどちらかを満たしていれば、必ず「一筆書き」ができます。
気をつけて欲しいのは②で、奇点は必ず2つだけということです。
ぴったり2つであることが重要なのです。
これについては、後ほどきちんと解説します。
この条件を知ったうえで、改めて図を見てみると、この条件を満たすのはイとエだとわかりますね?
イは奇点が2つなので、条件②にあてはまります。
エは偶点しかないので、条件①にあてはまります。
アとウについては、どちらの条件にもあてはまらないので、「一筆書き」はできません。
試しに、「一筆書き」で適当に図を書いてみて、頂点が奇点か偶点かをチェックしてみてください。
必ず条件①か条件②を満たしているはずです。
さて、今回の目的は「一筆書き」の判定方法をお伝えすることなので、ここまでが理解できたならOKです。
これだけ知っていれば、試験で出題されても何の問題もなくクリアできるはずです。
ここから先は理屈を説明しますが、それに興味がある方はもう少しだけお付き合いください。
では、理屈を説明します。
ポイントは条件②で、なぜ奇点は2つだけでないとダメなのか?と考えてみてください。
なぜかというと、奇点はスタート地点かゴール地点のどちらかでないといけないから、です。
下の図を見てください。
頂点から偶数本の辺が伸びている場合、ある辺から別の辺へ、その頂点を通過していくことが可能です。
入ってくる辺と出ていく辺をペアにしてイメージしてみてください。
ところが、奇数本の辺が伸びている場合は、ペアをつくれない辺が必ず一本できてしまいます。
その余った1本の辺は、何を意味するでしょうか?
ひとつの可能性は、その頂点を出て行くことに使われる、です。
もうひとつの可能性は、その頂点に戻ってくることに使われる、です。
しかし、出て行く場合は戻ってくる辺が、戻ってくる場合は出て行く辺がないのです。
出ては行くが戻ってこない場所か、最終的にそこで行き詰まる場所か。
そう、つまり、スタート地点とゴール地点ということです!
逆に、偶点というのは、必ず通過できて、その頂点でストップすることはない点ということです。
ですから、偶点だけの図形の場合は、どこからスタートしても必ず「一筆書き」ができます。
そして、スタート地点が必ずゴール地点になります。
一方、奇点が2つの図形は、ひとつの奇点をスタート地点にしたら、別のひとつが必ずゴール地点です。
もし奇点が3つ以上ある場合は、必ずどこかの奇点で行き止まりになって止まってしまうはずです。
ですから、「一筆書き」はできないのです。
いかがですか?
「一筆書き」の秘密が理解できましたでしょうか?
ところで、この世で一番単純な「一筆書き」ができる図形はなんでしょうか?
それは、線分です。
線分には2つの端がありますが、どちらも奇点です。
つまり、どちらかがスタート地点でどちらかがゴール地点です。
当たり前ですね!
一方、偶点だけの図形というのは、単純化するなら円です。
円周上のどこに頂点を打っても、必ず偶点になりますね。
そして、どこからスタートしたとしても、スタート地点が必ずゴール地点になります。
ですから、奇点が2つの図形は本質的には線分で、偶点のみの図形は本質的には円なのです。
こういった図形の捉え方を、トポロジー(位相幾何学)と呼びます。
かの大数学者レオンハルト・オイラーに端を発する、由緒正しき数学の一分野です。
点と線のつながり方だけを考えたりする、ちょっと変わった数学ですね。
有名な話ですが、ドーナッツと柄付きのコーヒーカップは、トポロジー的にはまったく同一の図形です。
どちらも「ジーナス1のトーラス」と表現されたりします。
ちょっと格好良くないですか?
また、理科の回路図や、電車の路線図なんかも一種のトポロジーです。
トポロジーについては、面白い本が色々と出版されているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
今日は以上です。
このブログを読まれている皆様に、桜咲く春が訪れますことをお祈りしております。
それでは、また次回お会いしましょう!