皆さま、こんにちは!
さて、前回までは「加重平均」と呼ばれるタイプの様々な問題を扱ってきました。
ぱっと見は違って見えても、実は問題の本質は一緒ですよ、ということを解説してきました。
今回も、また違うジャンルの問題で、同様のことを解説してみようと思います。
まずは、次の2つの問題を考えてみてください。
いかかがですか?
前者は、「速さと比の利用」についての問題で、後者は、「仕事算」ですね。
まずは、答えがちゃんと出せるでしょうか?
先に答えを書いておくと、どちらの答えも12分後が正解になります。
答えは同じなのですが、答え以前に、そもそもこの2つの問題は本質的にはまったく同じ問題です。
わかりやすくなるように、数字や設問文の形式もできるだけ揃えておきました。
2つを見比べて、これがまったく同じ問題であることがわかりますか?
2つが同じ問題であることを理解するために、それぞれの問題の解き方を考えてみましょう。
「速さと比の利用」
まず、前者の「速さと比」ですが、一般的な解法としては、池の1周の長さを設定します。
どのように設定するかというと、兄の1周の20分と、弟の1周の30分の最小公倍数にします。
つまり、1周60mにするのです。
そうすると、兄と弟の速さも決まることになります。
兄は、60÷20=3で、毎分3m、弟は、60÷30=2で、毎分2mと決まりますね。
毎分3mで歩く人なんかいる?と思うかもしれませんが、この問題の場合はこれでいいのです。
この兄弟は、カメやカタツムリかもしれないですし、妖精や小人さんかもしれないですよね?
ということで、1周60mの池の周りを、毎分3mの兄と、毎分2mの弟が、反対向きに歩くことになります。
あとは、旅人算ですね。
2人の速さを足すと3+2=5ですから、2人は1分ごとに5m近づくことになります。
よって、1周60mを5でわって、12分後に出会うということがわかります。
「仕事算」
次に、後者の「仕事算」です。
こちらも、一般的な解法としては、仕事全体の量(むしる草の本数)を設定します。
どのように設定するかというと、それぞれの仕事にかかる時間の最小公倍数にします。
つまり、姉の20分と妹の30分の最小公倍数なので、60ということになります。
庭に60本の草が生えていると思えばいいです。
そうすると、姉と妹の仕事の速さが決まることになります。
姉は、60÷20=3で、毎分3の仕事をし、妹は、60÷30=2で、毎分2の仕事をすることになります。
姉は1分で3本の草をむしり、妹は1分で2本の草をむしるということです。
ということで、全部で60本の草を、毎分3本の姉と、毎分2本の妹が協力してやることになります。
2人が協力すると、3+2=5で、1分ごとに5本の草がむしられていくことになります。
よって、すべての草の本数60を5でわって、12分後にすべての草がむしり終わることになります。
さて、以上が2つの問題の解説なのですが、まったく同じことをやっていることがわかりますか?
解説の形式もできるだけそろえてみたので、比較すればすぐに同じことだとわかると思います。
どちらの問題も、全体量を具体的に設定する、ということをやっていますね。
前者は、池の1周を60m、後者は、庭の草の本数を60本と設定しています。
それが決まると、歩く速さや仕事の速さも具体的に決まるので、あとは普通に考えていけばいいわけです。
つまり、この2つは「全体量設定」という視点で見れば、まったく同じ問題なのです。
テキストなどでは、それぞれ「速さと比の利用」「仕事算」などと分類されます。
しかし、そんな風に別の特殊算としてとらえる必要はないのです。
あるいは、このように考えても良いです。
そもそも「仕事算」というのは、仕事の速さを考えています。
先ほどの問題なら、同じ仕事を姉は20分、妹は30分なので、姉の方が仕事が速いということですよね?
ですから、そもそも「仕事算」というのは、「速さと比」の問題の一種なのです。
テキストによっては、「仕事算」と「速さと比」の単元が連続していたりもします。
おそらく本質的には同じということを意識しての配置なのでしょうね。
ということで、このような理解ができるようになると、そもそも「仕事算」という分類自体が必要なくなります。
毎回のように書いていることですが、効率の良い勉強のためには、覚えることを減らすことが大切です。
できるだけ様々なことを関連付けて、少し大きな視点で見ることで、体系的な理解ができるようになります。
また、こういった理解が応用力も育てます。
受験ドクターが大切にしている「根本原理指導」は、まさにこういった理解を目指すものです。
新6年生はこれから1年弱の間に、入試に向けて全分野を復習していくことになります。
そのときに、それぞれの単元の関連というのを少し意識してみることをお勧めします。
また、新5年生は、これから本格的な中学受験の算数を学ぶことになります。
目の前の問題を理解するだけで精一杯になりがちですが、できれば同様の意識をしてみましょう。
なぜAという単元のあとに、Bという単元が並んでいるのだろう?と考えてみるだけでもよいと思います。
では、また次回お会いしましょう!