皆さま、こんにちは!
前回は少し横道にそれて、「自信」というものについて考えてみました。
今回も、その続きについて考えてみます。
論点は2つあります。
1点目は、前回の内容と類似した話として、「入試問題との相性」ということについて。
2点目は、前回の補足として、「実力と自信の関係」ということについて。
以上の2点について考えてみます。
前回のおさらい
まずは前回の内容を軽くおさらいします。
前回は、とあるお子さんから出た、こんな質問について考えてみました。
「実力はあるけど自分に自信がない人と、実力はないけど自分に自信はある人と、どっちが良いですか?」
この質問に対しての私の回答は、以下のようなものでした。
「実力にそこまで差がないもの同士なら、自信がない人よりも自信がある人の方が、勝つ可能性が高い。
でも、実力に圧倒的な差があるなら、自信のあるなしくらいでは、その差をひっくり返すことは絶対にできない。」
この回答のポイントは後半部分で、それについて詳しく説明しました。
要約すると、以下の通りです。
自信があるとしても、それによってできることは、自分の力をフルに発揮できるだけ、ということ。
また、相手の実力については、こちらの努力ではコントロールできない、ということ。
だから、自分の実力・学力を高める地道な努力をするしかできることはない、ということ。
そして、そういった地道な努力が本当の自信につながる、ということ。
これが前回お伝えしたかったことです。
論点1:入試問題との相性について
さて、こういったことを考えたときに、似た話だなと思ったのが「入試問題との相性」ということについてです。
この時期の受験生であれば、志望校の過去問対策に全力で取り組んでいると思います。
様々な過去問に取り組みながら、「この学校の問題とは相性がいい」「ここは相性が悪い」などと考えますよね?
ここでいう「相性が良い・悪い」というのは、自分にとって得点がしやすいかしにくいか、ということです。
相性が良いと感じる学校については、この学校なら合格できるかもしれないと手応えを感じたりします。
これは誰しもあることでしょう。
しかし、本当に「入試問題との相性」というものはあるのでしょうか?
もしあるとして、それはどの程度結果に影響するのでしょうか?
こういうことを考えてみたときに、前回の内容と似た結論になるなと思ったのです。
どういうことか、少し考えてみましょう。
まず、「入試問題との相性」が存在するのかということについて。
これについては、間違いなくある、と私は思います。
学校ごとに出題の傾向というのは確実に存在します。
わかりやすいのは国語で、記述問題しか出題しない学校もあれば、選択肢問題中心の学校もあります。
記述に苦手意識を持っているお子さんが、記述しか出題しない学校の問題で得点しにくいのは当たり前ですね。
算数であれば、典型題を中心に基本的な技術の習得具合を試す問題を、多く出題する学校があります。
一方で、知識よりも、その場での思考力や作業能力を試す学校もあります。
前者はともかく、後者についてはお子さんによって向き不向きはあるでしょう。
問題の出題傾向だけでなく、問題を見たときの印象も、実は重要だと私は考えています。
例えば、問題のレイアウトやフォント、写真や図の見た目、カラーかどうか、などなど。
私自身はかなり視覚優位の人間なので、問題を見た印象で解いてみたいと感じるかどうかが変わります。
ですから、お子さんによっては同じようなことがありうるのではないか、といつも思っています。
こういったことも「相性」に含めて良いと思います。
さらに、試験全体の配点という要素もありますね。
中学受験では、理科・社会よりも国語・算数の配点が高い、いわゆる傾斜配点を取っている学校が多いです。
どのくらい国語・算数を重視するかの割合は、学校ごとに少しずつ異なります。
一方で、例えば鷗友学園のように、4科すべてを100点に均等配点する学校もあります。
理科・社会の得点力によっては、どちらが自分にとって有利になるかは変わるでしょう。
これも「相性」の一種と考えてよいでしょう。
さて、ここで問題なのは、「相性が良い」ということが結果にどういった違いをもたらすかです。
もちろん、「相性が良い」学校の問題は、自分にとって得点がしやすい問題だということです。
自分の力を発揮しやすいと言い換えてもいいでしょう。
入試ですから、得点がしやすい学校や、力を発揮しやすい学校を受けた方が、合格の可能性は高まります。
ですから、そういった学校を狙って受験するというのはひとつの戦略で、至極当然のことです。
こういったことは、受験校の選択において、必ず頭に入れておくべきファクターです。
しかし、忘れてはいけないのは、それはあくまで「自分にとって」は「相性が良い」学校だということです。
他の学校の問題と比べたときに、自分には得点しやすい問題だ、ということ以上の意味はないのです。
どういうことかというと、たとえば、その問題は他の受験生にとっても「相性が良い」ものかもしれません。
誰にとっても解きやすい、はっきり言ってしまえば、単に簡単な問題なだけかもしれません。
もしそうだとするなら、それだけで自分が有利になっているわけではないということです。
また、受験者の間で「相性の良い・悪い」が仮に存在したとしても、次のようなことも考えられます。
ある学校の問題に対して「相性が良い」Aくんと、「相性が悪い」Bくんがいたとします。
この2人が受験をしたときに、「相性の良い」Aくんの方が必ず勝つとは限りません。
「相性の良い」Aくんがとる点数が、「相性の悪い」Bくんがとる点数よりも高くなる保証はどこにもないです。
なぜなら、AくんとBくんの客観的な得点力の差がわからないからです。
たとえば、他の学校の問題なら、Bくんは80点近い点数がとれるとします。
しかし、この学校の問題では70点もなかなか超えられないとすると、Bくんは「相性が悪い」と感じるでしょう。
一方、Aくんは他の学校の問題では50点くらいしかとることができません。
しかし、この学校の問題では、なんとか60点を超えられるとすると、Aくんは「相性が良い」と感じるでしょう。
さて、ではこの2人がこの学校を受験したとして、合格する可能性が高いのはどちらでしょうか?
微妙な差ではありますが、客観的には「相性の悪い」Bくんの方ですよね。
つまり、「相性の良い・悪い」というのは、あくまで自分がどう感じるかという、単なる主観であるということです。
そして、圧倒的な実力差があるなら、多少の「相性の良い・悪い」などは簡単に吹き飛ばされてしまうのです。
ここが、前回の「自信のある・なし」という話と似ていると感じた点です。
「相性の良い」問題という観点は、自分の力をフルに発揮するためには、とても大切なことです。
ですから、前述したように、受験戦略としては「相性の良い」学校がどこかということは考えておくべきです。
しかし、どんなに「相性の良い」受験校でも、それで相手に勝てるかどうかはわかりません。
前回と同様に、そこは相手の実力によるからです。
そして、この部分に関しては、こちらの努力ではコントロールできないということも同様です。
ですから、結論としても前回と同じになります。
まずは自分の実力・学力を高める地道な努力をしましょうということです。
そのうえで、「相性の良い」受験校に自信を持って臨むというのが、合格可能性を高めるためには大切です。
こうやって考えてみると、受験校が定まったら、相手云々は関係ないとも言える、ということもわかると思います。
なぜなら、他の受験生の本当の実力はわからないし、相性や自信という要素も知りえないからです。
ですから、考えるべきことは、例年の合格ラインの得点率を、きっちり超えるように自分が頑張ることだけです。
相手がどうであれ、合格ラインを超えさえすれば合格するのだと信じて、最後の1秒まで頑張りぬきましょう。
試験会場に入ると、周りの受験生がとても賢そうに見えるかもしれません。
しかし、それは相手も同じこと。
自分だって周りからはそう見られているかもしれないです。
余計なことは考えずに、自分の力を出し切ることに集中しましょう。
論点2:実力と自信の関係
さて、あとは前回の補足です。
「実力と自信の関係」についてです。
そもそも、どうしたら自信がつくのか、これについてもう少し考えてみましょう。
自信を持つためにはどうしたらいいのか?
自信というのも主観的なものですから、客観的な実力のある・なしということとはあまり関係がないと思います。
自分には実力がある、と自分自身で感じているかどうか、ここが大切です。
では、それを感じるためにはどうしたらいいのか?
それはやはり、努力した結果や成果を目に見える形で体験するということだと思います。
努力することが何より大切ですが、それだけでは自信を持つという状態にはなかなかつながりにくいです。
点数が取れたとか、解くのが速くなったとか、以前は歯が立たなかった過去問が解けるようになったとか。
また、そのことを他人に認めてもらえたり、褒めてもらえたり、などなど。
そういった具体的な成果をはっきりと体験することで、自分の実力を実感でき、はじめて自信もついてきます。
逆に、いつもいつも点数が悪いとか、結果が悪いことを怒られてばかりとか、テキストがなかなか進まないとか。
こういった状態が続けば、自信がつくはずもないですし、モチベーションも下がり、勉強が嫌いにもなるでしょう。
こう考えると、自信を失っているお子さんに対して、どのようなことをしてあげればいいのかも見えてきます。
例えば、少し簡単な問題をやらせてみて、解ける・できるという実感を持てるようにしてあげるのは有効です。
また、いつも受けている模試より少し簡単な模試を受けさせて、高い点数や偏差値を体験させるのも良いです。
これは、子どもだましのような方法に感じられるかもしれませんが、それでいいのです。
なぜなら、小学生はまだまだ子どもだからです。
自分の客観的な実力や、受けている模試のレベルなどを把握できるくらいのお子さんだったとしましょう。
もしそのくらい大人な判断ができるのであれば、必要以上に自信を失って落ち込むということもないです。
一時的にはショックでも、冷静になったら自分自身で改善点を考えて、勝手に立ち直っているでしょう。
つまり、自信を失っているという状態が続いている時点で、まだまだ子どもだなー、ということです。
ですから、そういうお子さんには、子どもだましのような方法でも十分効果はあります。
「こんな簡単な問題なら、それはさすがにできるよ」というかもしれません。
しかし、そういうセリフは、強がりや照れ隠しで言っていることがほとんどです。
ですから、それに対しては「そうだね。さすがだね」と明るく返してあげればいいのです。
表面的にはどんな態度をとっていても、内心はきっとうれしいはずですよ。
こういった考え方は、入試直前期の1月などにも大切になってきます。
地道な努力をして、実力を上げることが一番大切ではありますが、1月に入るとその時間もあまりありません。
単純な知識事項などの暗記物はともかく、国語・算数のような科目は短期間では大きく実力は伸ばせません。
ですから、直前期に入ったら、あとは自信を深めるような練習に時間を使いましょう。
過去問の解き直しをして、できる問題が増えているという事実を確認する、これが王道です。
あるいは、昔のテキストを解き直して、以前よりもすらすら解けるようになっていることを体験するでもいいです。
とにかく、実力がちゃんとついているのだということを、様々な形で実感できるようにしてあげてください。
逆にNGな行動としては、それまでもやったこともないような難しい問題やテキストに挑戦することです。
こういったことを急にやるのは、余計な焦りや不安を生むだけなので、避けた方がいいです。
また、1月の練習受験では、合格しやすい学校でも良いので、しっかり合格をとらせてあげることも大切です。
どんな学校であれ、それがはじめてのお子さんにとっては、「合格」の一語が生むインパクトは大きいです。
こちらが想像している以上に、喜んでいるものです。
そして、最後の最後で何よりも力になるのは、お父様やお母様の言葉や態度です。
「大丈夫! 何とかなる! 絶対いけるよ!」ということを、様々な形で伝えてあげてください。
ここまで来たら、怒ったり責めたりするような行為はなにもプラスを生みません。
油断したり調子に乗りすぎたりしているなと感じたら、少し引き締めるくらいの感じで十分です。
また、お父様やお母様の不安や迷いを、お子さんは敏感に察知します。
そこは演技でもいいので、お子さんが安心できるような雰囲気づくりを心がけましょう。
これまでの努力を信じて、お子さんが自信をもって試験会場に向かえるように、後押しをしてあげてください。
11月も半ばをすぎると、いよいよ残された時間は少なくなってきます。
人生でたった一度きりの中学受験です。
やれるだけのことはやったと、悔いのない気持ちで本番を迎えられるように一日一日を大切に頑張ってください。
では、また次回お会いしましょう!