皆さま、こんにちは!
学習相談などで寄せられる、よくあるお悩みにお答えするシリーズ。
前回は、ご家庭からの「優先すべき科目は?」という、よくあるご相談についてご説明しました。
今回は、その第2弾です。
前回、最優先で勉強すべき科目は算数であることを、データを示しながらご説明しました。
とにかく、どの学校の入試結果を見ても、圧倒的に差がつくのは算数なのです。
前回も書いたように、そもそも、多くの学校が算数や国語に多く配点する、傾斜配点という形式をとっています。
ですから、算数と国語が差のつきやすい科目になるのは当然です。
しかし、国語と比べても、さらに算数の方が差がつきやすい科目になっています。
詳しくは前回のブログをご確認ください。
【よくあるお悩み】優先すべき科目は?①
なぜ算数で差がつきやすいのか?
ではなぜ、算数でそこまで差がつくのか?
考えられる原因は3つあります。
①問題数が少なく、1問あたりの配点が大きい
➁小問ごとのつながりが強く、続けて失点するリスクが高い
③他科目に比べて特殊性があり、専門的なトレーニングが必要
今回は、①について、データを見ながらご説明します。
まずは、前回紹介した、女子中学3校のデータをもう一度見てください。
特に女子中は算数で大きく差がつきやすい傾向にあるので、この3校を選んであります。
前回もご説明したように、どの学校も算数で一番差がついているということがわかると思います。
特に、この年度の浦和明の星は、合否結果が算数によって大きく左右されたということがわかります。
では次に、それぞれの学校の科目ごとの問題数や配点についてのデータを見てください。
すべての学校に共通することは、算数の小問数が4科目の中で一番少ないということです。
ということは、満点の点数を小問数でわった1問あたりの平均配点は、当然算数が一番大きくなります。
それが、表の一番下の列の数字です。
この数字が示しているのは、1問が持つ重みです。
つまり、得点するにせよ、失点するにせよ、算数の1問が最も価値が高いのです。
もちろん、これは単純な平均なので、例えば国語の記述問題などは、8~10点くらいの配点があったりします。
しかし、その分、漢字の読み書きや選択肢問題などの配点は平均配点より低くなります。
記述問題には部分点がつくので、例えば10点のうち5点はもらえるということがあり得ます。
記述の要素ごとに採点したりもするので、1問の記述の中に、実は小問が2つ、3つあるような感じになります。
一方、算数は多くの場合すべて均等配点で、1問の点数は5~6点になるのが一般的です。
簡単な問題は配点が低く、難しい問題ほど配点が高いというようなことはないです。
そして、多くの場合は部分点というものはなく、答えがあっていない限りはすべて×ということになります。
途中式などを解答欄に書かせる形式をとっている学校でも、ここで部分点をつけることはほとんどありません。
また、小問数が少ないということは、配点が高いだけでなく、挽回するチャンスが少ないということでもあります。
極端な例を考えてみればすぐにわかりますね。
もし、小問数が1問だったら、それを間違えたら0点で、挽回するチャンスも0です。
しかし、小問数が100問だったら、1問間違えても他の問題でいくらでも挽回できます。
こう考えると、算数は1問の価値がもっとも高く、かつ、挽回するチャンスも少ない科目だということになります。
さらに、平均配点の差にも注目してください。
たとえば、理科や社会の平均配点は、1問あたりおよそ2点です。
ということは、算数1問を正解することは、理科や社会の問題を2、3問正解するのと同じことになります。
特に、浦和明けの星は、算数の1問あたりの平均配点がダントツで高いです。
理科や社会に対しては3倍前後、国語に対してもほぼ2倍です。
4科目の差に対して、算数の差が50%以上を占めることになるのも合点がいきますね。
もちろん、算数がどうしても苦手で、他の科目で少しでもカバーしたいということもあります。
その場合は、算数はなんとかして受験者平均近くの点数がとれるように、練習しましょう。
正答率の高い、前半の計算や小問集合で失点をしないように気をつけてください。
その上で、他の3科目については、できればすべて合格者平均を超えられるという状態を目指しましょう。
特に重要なのが国語で、国語が合格者平均を5点くらい上回れるなら、算数のカバーは可能です。
苦手な科目は防御に徹して、大きく失点しない、他の受験者と大きな差はつけられない状態を目指す。
得意な科目は積極的に得点を稼ぎにいき、他の受験者と差がつけられるようにする。
受験戦略としては、そういった考え方も大切です。
配点と差のつきやすさには関係があるのか?
このデータをよく見てみると、もうひとつ面白いことに気がつきます。
最初に挙げた差についてのデータと、後に上げた平均配点のデータをよく見比べてください。
まず、最初のデータの合格者平均と受験者平均の差を、差が大きい順に並べてみてください。
すると、3校すべてが、算数→国語→理科→社会の順番になります。
次に、1問あたりの平均配点のデータを、やはり大きい順に並べてみてください。
すると、こちらも3校すべてが、算数→国語→理科→社会の順番になります。
ということは、合格者平均と受験者平均の差と、1問あたりの平均配点の間には、相関関係がありそうです。
たった3校のデータなので、これだけで確実な相関関係があるとは断言できません。
しかし、たった3校とはいえ、ここまで一致するのは私自身ちょっと意外に感じました。
少なくとも理科や社会は、平均配点の高い・低いと、差のつきやすさはあまり関係がないように思っていました。
案外、どのくらい差がつくかというのは、配点次第で決まっているのかもしれません。
さて、ここで次のような疑問を感じた方はいらっしゃいませんか?
算数の平均配点が一番高いのはわかった。
小問数が一番少ないのもわかった。
たしかに、理科や社会とはかなりの差があるだろう。
ただ、国語ってそこまで差があるのかな?
例えば、豊島岡女子は算数の小問数は18問で、国語は21問。
平均配点は、算数が5.6点、国語が4.8点で、0.8点しか差がない。
しかし、4科目の差に占める割合は、算数が43.5%で、国語が24.9%もある。
この差って、小問数や平均配点だけでは説明がつかないのではないだろうか?
はい、その通りです!
たしかに配点や小問数の差だけで、算数で大きく差がつく理由を説明するのは、ややムリがあります。
これについては、冒頭で示した原因の②や③がおそらく関係します。
詳しくは、次回のブログで考えてみます。
では、また次回お会いしましょう!