皆さま、こんにちは!
ご家庭からのよくあるお悩みについて、回答してみようという企画の第3弾です。
前回からは、「やってもやっても伸びないのですが?」という、お悩みについて考えています。
努力をしているのに、結果に結びつかないことほど辛いことはありません。
なぜそうなってしまうのか、具体的にどうしたら良いのかについて、前回に続いて考えてみましょう。
なぜ丸暗記になるのか?
前回のブログで、中学受験生が陥りがちな状態として、「意味もわからず丸暗記」があると書きました。
意味や理屈はよくわからないけれど、とりあえず問題は解ける、という状態です
この状態になってしまうと、単純な問題は解けたとしても、少しひねられると対応できなくなってしまいます。
やってもやっても伸びないひとつの原因として、この「意味もわからず丸暗記」状態が考えられます。
現場で指導をしていると、この状態に陥っているお子さんにかなりの頻度で出くわします。
科目はほとんどが算数で、また、まじめにコツコツと勉強するタイプのお子さんに、この傾向が強い気がします。
どうしてこのような状態に陥ってしまうのでしょうか?
今回は、この原因から考えてみます。
「意味もわからず丸暗記」状態になる原因は、おそらく、それが短期的にはとても合理的な勉強法だからです。
現在の中学受験の内容の難易度は非常に高く、かつ、集団塾のカリキュラムの進み方は非常に速いです。
ひとつひとつを丁寧に考えて、学びを深めていくというような時間的余裕が、ほとんどありません。
毎週のように理解度や定着度を試すテストがあり、多くのご家庭はその結果によって一喜一憂します。
さらに、それらのテストである程度の成績を収めないと、クラスのアップ・ダウンなどが起こります。
このような状況のなかに小学生がポンと放り込まれたときに、彼らが真っ先に考えることはなにか?
それは、ひとまず目の前の課題をクリアして、解けない・できないと思われる状態を避けようということです。
「解けない・できない状態を避けよう」ではないのです。
「解けない・できないと思われる状態を避けよう」ということがポイントです。
解けない・できないと周りに思われると、怒られたり責められたりするかもしれません。
恥ずかしい思いをしたくないという気持ちもあるでしょう。
ちゃんとできている、大丈夫だと、周りから思われたいし、もちろん自分でもそう感じたい。
しかし、目の前の問題はかなり難しいし、ゆっくり考えて練習している暇はない。
どうしたらいいだろう?
こう考えたときに、一番簡単な方法が「とりあえずやり方を覚えてしまう」ということなのです。
放っておけば丸暗記になるのは当然のこと
もちろん、小学生がここまで論理的に考えて、行動していることはないです。
もっと感覚的に自分の行動を決めていることが多いでしょう。
これは、ことさらに小学生を悪く言っているわけではないです。
私がここで強調したいことは、小学生がそのように感じて行動するのは、むしろ自然なことだということです。
彼らは「子ども」なのです。
ですから、ずっと先のことまで考えて、長期的な視点で合理的な方法を選択するということはできません。
そんな取り組み方では、模試のときに困るとか、肝心の入試本番で困るとか、そんなことは考えられません。
もっともっと目先の、目の前の「危機」を避けることが最優先なのです。
大人だって、まずは目先の問題を何とかクリアするのに、四苦八苦していることが多いのではないでしょうか?
まだまだ経験が浅い小学生なら、なおさらそうでしょう、ということです。
このブログでは、いつも強調していることですが、最近の中学受験の問題はちょっと行き過ぎています。
問題も難しいですし、学習進度も早すぎます。
多くの平均的な小学生にとっては、明らかに普通の勉強の仕方ではついていけないものになっています。
「意味もわからず丸暗記」状態になってしまうのも、当然な状況なのだということです。
これについては良い悪いを言っても仕方がなく、まずはそうなっているという事実を受け止めるしかありません。
そのうえで、それでも中学受験をするなら、どういったことに気を付けていかなければならないかを考えましょう。
少なくとも、放っておけば「意味もわからず丸暗記」状態になりがちだということは、知っておいてください。
説明させてみないとわからない
では、中学受験生が陥りがちな「意味もわからず丸暗記」状態を避けるためには、どうしたらいいでしょうか?
前回のブログで、私が授業をする際に、意識してチェックしているポイントとして、以下の4点を挙げました。
①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?
②取り組んでいるトレーニングはいまの実力や改善点に適したトレーニングか?
③取り組んでいるトレーニングの量やかける時間は適切か?
④取り組んでいるトレーニングが応用的な場合は基礎となることの理解は十分か?
今回のような「意味もわからず丸暗記」状態を避けるためには、もちろん①のチェックが大切です。
このチェック自体は、決して難しいものではないです。
「どうやって解いたのか? なぜそのやり方をしたのか? 自分の言葉で説明してみて」ということです。
そこで、きちんと筋の通った説明が、お子様なりの言葉で出てくるならOKです。
ただし、気を付けてなくてはいけないことがあります。
それは、必ず言葉で説明させてみるということです。
解いたあとだけを見ていても、わからないことが多くあります。
実際に私が遭遇した例をふたつ挙げます。
下のノートの様子を見てください。
注:これは私が再現したノートで、実際のお子さんが書いたものではありません
問題は省略しましたが、どちらもつるかめ算を解いている様子です。
よく見て頂きたいのですが、どちらも解き方として何も問題がないのです。
面積図もきちんと書けていますし、途中式も書き残してあります。
どこにもおかしいところはないです。
しかし、これだけきちんとできていても、やっていることの意味がわかっていないということはあるのです。
いまやっていることがどういうことをしているのか、説明してもらうと、うまく言語化できないのです。
こういう場合、別のつるかめ算の問題を解かせてみると、うまく解けないということになります。
何がわかっていないかというと、そもそもつるかめ算とはどういうタイプの問題を指すのかということ。
また、面積図というものが使えるときはどういうときなのかということ。
たて、よこ、面積という3つの要素が、なにと対応しているのかということ。
面積図が表していることを言葉で表現してみると、どういうことになるのかということ。
こういったことが明確に意識できていないのです。
そうなると、ちょっと問題の表現を変えられたり、見せ方を変えられたりすると、対応できなくなってしまうのです。
ではどうすればいいのかについては、以前に『つるかめ算の世界』というブログを書きました。
興味のある方はそちらをご参照ください。
きちんと説明してあげると、「そういうことだったんだー」となります。
そのうえで別の問題を解かせると、「じゃあこうすればいいのかな?」と自分で考えて対応できるようになります。
ご家庭によっては、「うちの子は図や途中式を書こうとしない」というお悩みをお持ちだと思います。
それはそれで問題なのですが、しかし、図や式をきちんと書いていても、わかっていないということもあるのです。
逆に、たとえ図や式を一切書いていなくても、正しく理解できているということもあります。
このあたりが小学生の指導の難しいところで、表面的に見ているだけではわからないということが多いのです。
つぶさにお子さんの様子を観察しながら、色々と言葉にさせてみて、それでようやく見えてくることがあります。
「できるようにする」専門家が必要
前回のブログでも、専門家にチェックしてもらうことの大切さを強調しました。
この場合の専門家というのは、算数や国語の専門家という意味ではないのです。
もちろん、科目についての専門的な知識があるのは当然です。
加えて、できなくなっている原因と、どうすればできるようになるのかの解決策を知っている人が専門家です。
そういう「できるようにする」専門家でないと、行き詰ってしまっているお子さんを助けるのは難しいです。
困ったときは、ぜひそのような専門家に頼ってみることを考えてください。
今回は以上です。
中学受験生は、放っておけば「意味もわからず丸暗記」状態になりがちだということ。
その状態を避けるためには、言葉で説明できるかが重要であること。
表面的にはわかっているようでも、詳しくチェックしてみるとわかっていないということもあること。
行き詰った場合は、原因を探り、解決策を提示する専門家の手助けが必要であること。
以上の4点がポイントです。
次回は、②取り組んでいるトレーニングはいまの実力や改善点に適したトレーニングか?について考えます。
では、また次回お会いしましょう。