皆さま、こんにちは!
ご家庭からのよくあるお悩みについて、回答してみようという企画の第3弾です。
「やってもやっても伸びないのですが?」という、お悩みについて考えています。
前回は、1回目のブログで挙げた4つのチェックポイント
①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?
②取り組んでいるトレーニングはいまの実力や改善点に適したトレーニングか?
③取り組んでいるトレーニングの量やかける時間は適切か?
④取り組んでいるトレーニングが応用的な場合は基礎となることの理解は十分か?
このうちの、②について考えてみました。
適切な負荷をかけるということが、勉強においてはなかなか難しいということをご説明しました。
今回は、その続きで中学受験生を取り巻く状況について考えてみます。
適切な負荷をかけることが難しい理由が、そもそも環境的な要因にもあることをご説明します。
すべてのお子さんに合わせることはできない
中学受験をしようと考えたときに、ご家庭が最初に考えることは「どこの塾に通わせようか?」だと思います。
中学受験の内容が、通常の小学校の学習内容から大きくかけ離れている以上、これは仕方がないです。
色々と調べてみて、最終的に多くのご家庭が、大手の集団指導の中学受験塾を選択されるはずです。
そして、集団塾に入塾すると、それぞれの塾が用意したテキストをもらって学習をしていきます。
それぞれの問題集やテキストというのは、想定している使用者のレベルというものがあります。
初めて学習をするお子さん向けのテキストもあれば、応用的な学習をしたいお子さん向けのものもあります。
また、すべての単元を網羅的に扱うタイプのテキストもあれば、ワンテーマに特化したタイプのものもあります。
大切なことは、いまの自分のレベルや、練習すべき内容に適した教材に取り組むということです。
しかし、集団塾に通っている場合、そういった学習をすることはなかなか難しいです。
集団塾に通っていると、1年間を通して決まったカリキュラムがあり、それに沿って日々の学習が進みます。
形式上しかたがないことですが、お子さん一人ひとりの理解度・定着度にあわせてはくれません。
そこで出される宿題というものも、授業内容に沿ってはいますが、一人ひとりに合わせたものではありません。
テキストも、すべての単元を抜けなく網羅的に学習するようなものがメインになります。
志望校や自分のレベルには不必要な内容も当然入っています。
しかしながら、それはそれとして取り組んでいくしかないのです。
これは集団塾や、そこで指導されている先生方を悪く言っているわけでは決してありません。
形式上の問題なので、どうにもならないことなのです。
私自身も集団指導の経験がありますが、授業の形式上、わかっていてもどうにもならないことが多かったです。
Aくんにはこっちの問題をやらせたい、でもBさんには別の問題をやらせたい。
そんな風に感じることはあっても、それを実行するのはなかなか難しかったです。
できる限り、君はこっちを多めにやって、あなたはこちらに集中して、と指示していましたが、限界はありました。
必ずしもそれぞれの必要性にあわせた授業や指導ができるわけではないのです。
わかってはいるけど…、というもどかしさがありました。
すべてのお子さんに合わせるということは、集団指導では現実問題として無理なのです。
わかってはいるけど…
理想を言えば、すべての科目がお子さん一人ひとりの現状にあわせた授業・宿題になれば良いです。
ただし、そのためにはすべてを個別指導や家庭教師でまかなうということになります。
しかし、それを真剣に考えようとする場合、最大のネックは費用面になります。
多くのご家庭が、わかってはいるけど、現実的にはそうはできないことの方が多いかと思います。
現実的にとれる選択肢の中で、色々と工夫して学習を進めていくしかないのが現実です。
「わかってはいるけど…」
これは中学受験の学習におけるひとつのキーワードかもしれません。
目の前の単元だけではなく、以前の単元も復習しないと…、わかってはいるけど…。
4教科をバランスよく勉強した方がいいのだろう…、わかってはいるけど…。
テストの解き直しが重要だって先生は言う…、わかってはいるけど…。
こんな考えが、お子さん自身やお父様・お母様の頭の中を駆け巡ることがよくあると思います。
わかってはいるけど…、でもどうにもならないというお悩みは本当に多いです。
どうしたらよいかわからず、完全に行き詰った感じがしたときは、ぜひ受験Dr.の学習相談にお電話ください。
つい先日もご家庭とお電話でお話していて、あるお父様がこんなことをおっしゃっていました。
「テキストは何周も解き直しをして、ちゃんとできている。それなのにテストになると取れないんです!」
「家でやれることは、これ以上はもうないという感じです。何とかしたいので力を貸してください!」
お子さんの頑張りに対して、ちゃんと成果を味あわせてあげたい、というお父様の切実な願いだと感じました。
実際には、お子さんの様子を見てみないと何とも言えないところがあります。
それでも、お父様の言葉を聞いていると、「わかりました。何とかします」とお答えするしかなかったです。
どうにかできる方法を、必ずしも知っているわけではありません。
それでも、わかってはいるけど…、と諦めずに、何とかする方法がないかを一緒に考えましょうということです。
お子さんが頑張っている限りは、周りの大人が諦めてはいけないです。
中学受験の教材は選択肢が少ない
では、諦めずに何とかするとして、取り組むべき教材はどうしたらいいでしょう?
学習相談の際に、「おすすめの教材はありますか?」という質問もとても多いです。
このような質問が多いということは、実は多くのご家庭がいま持っている教材に満足していないということです。
しかし、このご質問にうまくお答えすることは、いつも難しいと感じています。
そもそも、誰でもが買えるような教材に、やるならこれ!と言い切れるものを知らないからです。
本屋さんに行って学習参考書のコーナーをのぞいてみると、様々な教材が並んでいると思います。
中学受験だけではなく、高校受験や大学受験の教材もありますね。
これは、あくまで私見ですが、そのなかで内容・質ともに充実しているのは大学受験用の教材だと思います。
一方、中学受験用の教材は、それに比べると内容・質ともにぐっと下がる印象があります。
選択肢が少ないな、というのが正直な印象です。
私は、もともと高校受験の指導から塾講師のキャリアをスタートさせました。
専門は数学と理科でしたが、高校受験でこの2科目ならお勧めの教材というのはあるのです。
本屋さんで誰でも買えるテキストの中で、「数学を仕上げたいなら、まずはこれ!」というものが確実にあります。
しかも、お子さんの実力にあわせて、いくつかお勧めできるものがあるのです。
しかし、中学受験でこういったお勧めができるかというと、少なくとも今の私にはできません。
誰でも買える教材の中では四谷大塚の予習シリーズが一番無難だと感じますが、あくまで無難という感じです。
これも状況としては、致し方のない部分があります。
大学受験や高校受験のテキストなら、受験生の絶対数が多いですし、日本全国のどこでも売れます。
しかし、中学受験の場合は、一部の限られた地域のお子さんやご家庭しか買ってはくれません。
そうなると、多くの出版社や塾がコストをかけて、さまざまレベルやタイプのテキストを作るはずがありません。
ですから、中学受験の場合は、集団塾からもらえるテキストというのが、それでも比較的良い教材なのです。
ありあわせのものでもなんとかなる
では、結局はどうしたらいいか?
まずは、手もとにある教材を何とかやりくりして、勉強していくのがお勧めです。
先ほど、まるで中学受験の教材は少ないかのように書きましたが、それは本屋さんに並んでいるものの話です。
中学受験の集団塾に通えば、処理しきれないくらいのテキストやプリントがもらえるはずです。
むしろ、手つかずのままになっているものが、机の隅に積み重なっているということの方が多いでしょう。
解き直しができていない模試や小テストも、色々とあるのではないでしょうか?
そういったものを、お子さんのレベルや課題にあわせて、色々と織り交ぜて学習するのが一番簡単です。
ただし、ご家庭でそれを判断して、手元の教材でうまくトレーニングを行うのは簡単ではないかもしれません。
こんなに膨大な量のテキストやプリントから、どうやって取り組むべきものを選べばいいのか…。
そんなときは、やはり専門家を頼ってください。
いつも同じような結論で恐縮ですが、やはり生兵法は大怪我のもとであり、餅は餅屋なのです。
このブログでお伝えしたいことのひとつが、中学受験の学習がとても特殊だということです。
そんな特殊な領域の話なのですから、それなりの専門家に判断してもらわないと、よりよい選択はできません。
本当の専門家なら、ありあわせのものでもなんとかできますし、必要があれば自分で教材を作ります。
目の前のお子さんに最適な負荷のトレーニングを行うというのは、そのくらい難しいことなのです。
今回は以上です。
中学受験生を取り巻く状況は、なかなかに厳しく、そしてかなり特殊です。
そんな中で、何とか目の前の課題に取り組んでいるお子さんを、ぜひあたたかく応援してください。
そして、できるだけ効率的で無駄のない負荷のトレーニングにお子さんが集中できるように工夫してください。
次回は、③取り組んでいるトレーニングの量やかける時間は適切か?について考えてみます。
では、また次回お会いしましょう。