皆さま、こんにちは!
ご家庭からのよくあるお悩みについて、回答してみようという企画の第3弾です。
「やってもやっても伸びないのですが?」という、お悩みについて考えています。
前回は、1回目のブログで挙げた4つのチェックポイント
①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?
②取り組んでいるトレーニングはいまの実力や改善点に適したトレーニングか?
③取り組んでいるトレーニングの量やかける時間は適切か?
④取り組んでいるトレーニングが応用的な場合は基礎となることの理解は十分か?
このうちの、③について考えてみました。
今回は、④について考えてみます。
応用的な問題に取り組むときは、まずはその基礎となる内容の理解をチェックしてみようということです。
特に、やってもやっても伸びないと感じるときは、意識してその基礎的な内容の理解をたしかめてみましょう。
単元ごとの関連性を意識しよう
何事も基礎・基本が大切です。
応用は、基礎・基本の応用ということですから、基礎・基本がなければ応用がないのは言うまでもないです。
特に、算数や国語といった積み上げ型の科目は、基礎・基本がより重要になります。
学年が進めば進むほど応用的な内容になっていくわけですが、それは以前に学習したことがベースになります。
ですから、基礎・基本があやふやなまま学習が進むと、どこかで急にできなくなったりします。
そしてその状態で、いくら応用的な学習をやり続けても、なかなか伸びないことに当然なります。
そうなると、理解があいまいな部分に戻って、基礎・基本からやり直さないといけなくなります。
極端な場合は、6年生だとしても、4年生の内容から復習しなおす必要すら出てきます。
ですから、4年生・5年生のうちは、今やっている学習内容がきちんと理解できているかが重要になります。
さて、ここでひとつポイントがあります。
ある分野の問題ができなくなっているとして、ではどこまでさかのぼって復習するべきでしょう?
実はこれがなかなかわかりにくいのです。
たとえば、算数の規則性の分野について考えてみましょう。
規則性の分野は、一番の基礎に植木算や周期算があります。
その次に、等差数列や等差数列の和についての学習があります。
さらに、群数列や分数列などの様々な数列の問題があり、数表や規則を見つけ出す問題などが続きます。
これらの学習はすべてが関連しており、以前に学習した内容が次の学習の基礎になります。
しかし、これが体系的な学習になっているということを、小学生はあまり理解していません。
なかには、これらのことがすべてひとつひとつバラバラのものだと感じているお子さんもいます。
算数の各単元がどういう関係になっていて、どう体系だっているかはきちんと教えてあげる必要があります。
①取り組んでいるトレーニングの意味や理屈を言葉で説明できるか?が大切であることは以前に書きました。
あわせて、いま取り組んでいるトレーニングがどういう位置づけのものかを確認することも大切です。
いまやっていることが、以前の学習のどこの上に立っていて、次にどういうことにつながっていくのか?
そんなことを小学生が自力で理解することはとても難しいです。
全体像をイメージして、全体のどのあたりのことをいまやっているのか意識して練習できるようにしましょう。
そこがわかっていれば、どこかで行き詰ったときに、どこから復習すればいいかがある程度はわかります。
ただし、これに関してはご家庭でもわからないということがあると思います。
その場合は、いつものことですが専門家に相談してみてください。
そしてどこかで行き詰っているときは、どこから復習しなすべきか指導してもらってください。
ぱっと見はできているだけに…
さて、どこまでさかのぼって復習するべきか?という疑問ですが、実はもうひとつわかりにくい点があります。
それは、お子さんが解いている様子を見たときに、一見すると正しいことをやっている場合です。
残っている計算のあとや図を見ても、正しいことをやっているし、答えも正しく出ている。
しかし、それでも実はよくわかっていないということがあり得ます。
以前にも解法の丸暗記状態になっているお子さんが多いことについて書きました。
一見すると正しいことをやっているので、その基礎がわかっていないとは、ぱっと見は気がつかないのです。
実際に、私が以前に教えていたお子さんでこんなことがありました。
そのお子さんは規則性の問題が苦手だということでした。
先ほども書きましたが、規則性は植木算・周期算をベースにして、さらに等差数列の学習につながります。
ためしに、基本的な等差数列の問題を解かせてみました。
すると、ちゃんと解けるのです。
3、7、11、15、19、……、と続く数列の30番目はという問題を解かせてみると、119と答えられます。
どんな計算をして求めているかをチェックすると、以下のように解いています。
3+4×(30-1)=3+4×29=3+116=119
正しいです。
いわゆる「等差数列の一般項」を求める計算をしています。
しかし、ではちょっとひねった数列の問題が解けるかというと、これが解けないのです。
階差数列や群数列の問題をいくら教えても、いまひとつできるようにならないのです。
普通に考えると、応用力がないのだ、という結論になりそうですが、どうもそうではないと感じました。
そこで、さっきやっていた3+4×(30-1)=3+4×29=3+116=119という計算の意味を聞いてみました。
すると、それはよくわからないという返事だったのです。
3はなに?と聞けば、それは最初の数字だと答えます。
じゃあ、4は?と聞けば、それはそれぞれの数の差だと答えます。
では、(30-1)は?と聞けば、30番目の30から1を引いていると答えます。
しかし、3+4×(30-1)という計算になる理由はわからないと答えるのです。
特に、(30-1)=29という計算がなぜでてくるのかは、よくわからないとのことでした。
まさかそんなことはないだろう
(30-1)で求めている29という数字は、並んでいる30個の数の「間の数」です。
そして、これは主に4年生のときに学習する植木算の問題として学びます。
そのお子さんは、この部分がよくわかっていないのでした。
ためしに、簡単な植木算の問題を解かせてみると、たしかにそれは解けないのです!
等差数列の一般項は求められるのに、簡単な植木算は解けないのは、正直驚きでした。
まさかそんなことはないだろうと思い込んでいたのです。
この「間の数」がいくつになるのかという問題は、規則性の問題を解く際には非常に重要になります。
この部分でミスを誘う「作問者のワナ」が仕掛けられていることもよくあります。
ですから、このポイントがきちんと理解できていないなら、規則性の問題全体に影響があるのは当然なのです。
そのお子さんは、等差数列の一般項の求め方を、完全に公式の丸暗記として覚えているだけでした。
そのため、3+4×(30-1)という計算がやっていることのイメージがなかったのです。
30番目の数は、最初の3に、差の4を間の数の29だけ足したものだと考えられます。
理屈がわからないまま、単に公式的に計算をしていただけだったので、応用が利かない状態だったのです。
そこで、きちんと植木算から復習してあげると、最終的には等差数列の一般項の求め方も理解できていました。
「なんだ、そういうことだったのか~」と嬉しそうに納得していました。
この場合は、原因が植木算の学習にあることがたまたまわかったから良かったです。
しかし、まさか植木算がわかっていないとは思っていなかったので、これは本当にたまたまでした。
それ以来、私は「さすがにこれはわかっているよな…」と感じることでも、念のためチェックするようになりました。
意識して基礎・基本をチェックするようになると、想像以上に基礎・基本の理解が浅いということがわかりました。
そうか、そこがわかっていないのが原因だったのか…、と妙に納得することが増えました。
問題によっては、かなり高度なことができていたりするので、意識してチェックしないとそれを見落とすのです。
ご家庭と学習相談をしていても「けっこうできていると思うのですが…」というお話になることがあります。
しかし、その「できている」というのが、何がどうできているのか、掘り下げて確認した方が良いかもしれません。
思わぬところに大きな穴が開いていて、そのせいでやってもやっても伸びないのかもしれないのです。
基礎・基本を大切に
なぜそういう状態になってしまうのかというと、中学受験の学習の量とスピードが普通ではないからです。
どうしても目の前の学習に追われて、ひとまずそれを暗記的に乗り切ることになりがちなのです。
そして、以前の内容を復習したいと思っても、そんな時間もなかなか取れないのが現実です。
どうやって以前の内容を復習する時間を作れますかというお悩みは本当に多いです。
そもそもが、かなり無茶なことをやっているのだということは理解しておきましょう。
そして、できるだけ今やっている目の前の学習内容の理解があいまいにならないように気を付けましょう。
特に、4年生、5年生のお子さんは、どんなに簡単に感じることでも、基礎・基本を大切にしましょう。
このあたりのことについては、このテーマの2回目のブログに書きました。
興味のある方はこちらも参考にしてください。
今回のポイントをまとめると以下のようになります。
ひとつ目は、いまやっていることの学習が、何を基礎・基本にしているのかを確認しましょうということ。
きちんと体系だってはいるのですが、それがわかりにくいことは多いので、全体像を意識してみましょう。
ふたつ目は、ぱっと見は出きているようでも、実はよくわかってないことが多いと知っておきましょうということ。
特に、少し応用的なことができていても、その基礎・基本にあたる内容が理解できていないことはあります。
まさかそんなことはないだろう、と思うようなことでも念のため確認してみましょう。
もし、このあたりのことがご家庭ではよくわからないというときは、専門家のアドバイスを受けてみてください。
次回は、この「まさかそんなことはないだろう」について、最近ときどき見かける実例をひとつ取り上げます。
今回は以上です。
では、また次回お会いしましょう。