皆さん、こんにちは。
吉岡英慈です。
前回お話したつまづきポイントの洗いだし、これには2つの役割があります。
まず指導者や親がイライラしないための予防線。
次に、子どもが自分で気づくチャンスを広げるという利点です。
前回のブログでは、「差一定」に着眼できない場合に、簡単な導入でイメージさせる例を挙げました。
ここで大切なのは、「差が変わらない」という答えを、大人が先に言及しないこと。
差が同じだよと教えてしまったほうが早い気がしますが、逆なんです。
これほどもったいないことはありません。
子どもは自分で気づくとノってきます。
教わったことは、使えない
お菓子作りに例えるとこのような感じでしょうか。
A.ホットケーキの焼き方を教わった子ども
フライパンの温度、ひっくり返す時間まで丁寧に教わった場合。
子どもは、指示通り実行し、手順を覚えることに集中します。
そのときはきれいなケーキができるかもしれません。
しかし、同じ調理器具がない環境や、他の料理に応用することは難しいでしょう。
B.ホットケーキの焼き方に自分で気づいた子ども
大きなケーキを焼く前に、フライパンの隅っこで、少しだけ焼いてごらんとお母さんがアドバイスした場合はどうでしょう。
少したらして焼いてみて、あ、裏が焦げた。じゃあ今度は火を弱めて、もう少し短い時間でやってみよう。
ホットケーキは少し焦げても、他の料理に応用できる可能性が広がるのは、このタイプです。
前者はホットケーキを焼く方法を与えられてしまいましたが、後者はホットケーキを焼くことを通して、より本質的な「焼き方」そのものを学んだわけです。
教えられた表層的な知識は、なかなか使えるようになりません。逆に、自分で発見した根本原理は、どんどん使いこなせるようになります。
考えて、観察して、工夫する。
自由な感覚があると、子どもはノッてきてくれます。
子ども自身に気づかせるための導入例
集団塾で習ったニュートン算がまったくわからないという、男の子がいました。
ニュートン算とは、次のような問題です。
問題:100Lの水がたまっている水槽に、毎分10Lずつ水を入れながら、毎分20Lずつ排水します。水槽は何分で空になりますか。
水がたまっている水槽から水を排出するのですが、同時に水を入れているところがややこしい問題ですね。
ポイントは、入れる量と排出する量の「増減の差」に着目できるかどうかです。
解き方を教えるのではなく、自身で気づくよう、以下のように誘導してみました。
【段階①】興味をひく条件にきせかえる
ニュートン算は問題の構造自体もさることながら、設問の条件がイメージしづらいことが特徴です。
そこで、ゲーム好きの少年の興味をひくであろう設定に条件を着せ替えます。
・水槽→兵士が100人いる城
・排出する水→城に攻め入る呂布
・流入する水→増援
【段階②】排出のみにしぼり減る量に着目させる
そのうえで、いきなり増減から入らずに、まずは「減る量だけに着目」させます。
問いかけ:兵士が100人いる城に、一分間に20人やっつける呂布が攻めていったら、何分で全員たおせる?
【段階③】増える量も加えて「増減に着目」させる
次に増える量も加えて、「増減の差に着目」させます。
問いかけ:じゃあこ城に、一分間に10人ずつ増援ある場合は何分かかる?
ニュートン算を苦手といっていた男の子。
実は、この問いかけだけで、「100÷(20-10)=10分!」
と正しく解答し、その後ノリノリで自分で設定を置き換え、応用問題まであっという間に解いてしまいました。
水槽ではよくわからなかった「増減の差」の感覚が、ゲームの三国志ならピンときたわけです。
そして解き方を一方的に教わるのではなく、「増減の差」を見るという根本原理を、自身で発見できました。
子どもも大人も楽しむために
教えるときにイライラしないコツ。
それは、子どもがつまづいた時の回避策と、導入方法を下準備しておくということです。
ご家庭で算数に取り組まれる際は、10分だけで構いません、テキストに目を通してからとなりに座るようにしてみてください。
受験勉強を、効率的に楽しむヒントになれば幸いです。