みなさん、こんにちは。受験ドクターで算数と社会の講師をしておりますM. Y.です。 今日は「社会の効果的な学習方法」の第4弾として「問題作成者側の視点(選択肢のつくられ方)を見抜く力」についてお話しをします。
選択肢の問題はあたり前ですが、「ア」「イ」「ウ」「エ」と答えるだけです。ですから、前回の「120字で説明しなさい」という記述問題よりは精神的に負担は少ないですね。また、なんとなく答えを選んで、なんとなく答えを書くこともできてしまいます。
しかし、「たかが記号問題、されど記号問題」です。なぜか、多くの模擬試験や入試問題は記号問題・ことばを書かせる問題・記述問題のうち、いちばん大きな割合をしめているのは記号問題です。(もちろん、武蔵中やのようにほとんどすべてが記述問題というところもありますが。)
この、記号問題にしっかりと対策を講じなくては、得点が伸び悩んでしまいます。
ふだんの模擬試験で、社会の勉強をけっこうやっているわりには、偏差値が45~55で伸び悩んでいるという生徒さんは、まず、この記号問題対策をしてあげるといいかもしれません。
記号問題対策は2つの方向から対策が講じられます。
まず1つ目。記号問題で気をつけたいのが、「問題文の読み間違え」です。正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのか、あるいは1つなのか、すべてなのか、この問題文の読み間違えは致命的です。まず、この部分に気をつけましょう。気をつけ方は、いたってシンプルです。「正しいもの」や「1つ選び」の部分をしっかり目立たせることです。線をひいたり、まるで囲んでみたり、方法は自由です。
問題によっては「正しいものを選びなさい。ただし、正しいものがない場合は、×を解答欄に書きなさい。」や「もっともふさわしくないものを選び、記号で答えなさい。」とフェイントをくらう問題文をあります。(個人的には「もっともふさわしくないもの」ってなんかしっくりこないんですよね。何個かふさわしくないものがあって、その中でどれがいちばんダメなのか、という意味合いに感じてしまうんです。)
このように、問題文の読み間違えによる失点を防ぎ、マイナスを減らすことにより得点をあげる方法でした。
さて、次の2つ目です。こちらはプラスをさらに強化する方法です。それは「選択肢の×のパターンの仕組み、○のパターンの仕組みを理解する」ことです。
例えば、次の問題。この問題は、私が作成したもので、入試問題ではありません。ただ、こういう作成をしてくるんだよという例です。
問1 次の中で、13世紀におきたものにうち、誤っているものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア フビライ・ハン率いる元軍が、日本にきた。日本軍は集団戦法や火薬による攻撃に苦戦をした。
イ 北条泰時が武家社会最初の法律である御成敗式目を制定した。
ウ 後鳥羽上皇は朝廷の勢力を挽回するために幕府軍に対して乱を起こした。しかし、1か月ののち、幕府軍の圧倒的勝利におわった。
エ 足利尊氏や新田義貞らの協力により、鎌倉幕府は滅亡した。
この問題でまず、キーワードは「13世紀」です。「世紀」がでてきたら、かならず、何年から何年の期間かをメモ書きしておきましょう。
13世紀はもちろん1201~1300年ですね。13世紀は1300年代と勘違いしていた方がいましたら、ここで修正しておきましょう。
さて問題の解説、アは「元寇」についての記述ですので、文永の役1274年、弘安の役1281年。どちらも13世紀です。イは御成敗式目(貞永式目)ですので、1232年。これも13世紀。ウは承久の乱についての記述です。承久の乱は1221年ですので、これも13世紀。 エは鎌倉幕府滅亡は1333年ですので、これは14世紀ですね。
よって、誤っているものは「エ」になります。
ただ、この問題は意外と多くの受験生あててくるんです。
では、次の問題はどうでしょう。
問2 次の中で、13世紀におきたものにうち、正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア フビライ・ハン率いる元軍が、日本にきた。日本軍は一騎打ちや火薬による攻撃に苦戦をした。
イ 北条義時が武家社会最初の法律である御成敗式目を制定した。
ウ 後醍醐天皇は朝廷の勢力を挽回するために幕府軍に対して乱を起こした。しかし、1か月ののち、幕府軍の圧倒的勝利におわった。
エ 北条泰時は執権の補佐役である連署とよばれる地位をおき、北条氏一族をこの地位にあてた。
いかがでしょう。さきほどの問題と似てますね。ただ、ところどころに小細工しました。ぱ~って読むと、まったく気がつかないかもしれません。
ここには、「失点名物!用語すり替えの術」が使用されています。
まず、この問題、「正しいもの」を選ばせる問題です。
アは先ほどのアとほぼ同じです。元寇だから13世紀だ!と思いきや、よ~く読んでください。「日本軍は一騎打ちや火薬に苦戦」となっています。一騎打ちは日本の戦闘スタイルですね。ですから、ここにすり替えがありました。一瞬、正しいと思いそうだけど、内容が正しくないので、アは誤り。
イも先ほどの文とほぼ同じです。これまた、ぱ~って読むと、御成敗式目だ1232年だから13世紀だ!といきそうですが、よ~く読むと、北条泰時が北条義時にすり替わっていますね。
というわけで、これも誤り。
ウも同じようにすり替えが使用されています。そうですね。「後鳥羽上皇」が「後醍醐天皇」にすり替わっています。仮にすり替わっても乱を起こしたのは事実だ!と思っても、「幕府軍側が勝利」とありますので、やはり誤りですね。
となると、残った「エ」だけが正しいということになります。
どうですか?×の選択肢は、何個かパターンがありました。
問1のように、根本的に時代(年号)がずれている選択肢。
問2にように、パッと見は正しいけど、よく見ると、一部用語がすり替わっている選択肢。
多くの受験生は、この問2のタイプにやられます。
みんなが間違えるところで得点をしっかりとる。これが偏差値アップのカギです。ですから、この問2タイプ(すり替えタイプの選択肢)で点数をとれるようにするのが、偏差値アップの最大の秘訣です。
では、どうすればよいのか。
あまり難しいことではありません。ほんの少しの注意力(ていねいさ)とプラス3分の復習です。
つまり、まずは記号問題がでてきたとき、「すりかえの選択肢があるかも」という気持ちで、ていねいに選択肢を読むようにしましょう。ぱ~って読むと気が付きませんよ。
あとは、復習の仕方です。復習はついつい用語の暗記ばかりになってしまいます。記号の復習をする受験生はあまりみかけません。記号問題は、なぜその選択肢が正解で、他のがなぜ不正解なのかを、自分で解説できるようにするような復習を心がけてください。さきほど、私が解説した程度の、「よ~く読むと、北条泰時が北条義時にすり替わっている。だから×だ。」この程度で大丈夫です。
せっかく社会の学習をしているわけですので、学習した分の得点はとりたいですよね。インプット(暗記)はもちろん大事です、しかし、それと同じくらいアウトプット(得点につなげる力)も大事です。そのアウトプットのトレーニングはインプットほど時間はかかりません。
ちょっとしたコツをつかむ程度です。
「社会は暗記科目だから」と思われがちです。しかし、社会こそが戦略もって学習すれば、少ない時間で最大限の効果を得られやすい科目だと思っています。
まだまだ、時間はあります。あきらめずにがんばってみてくださいね。