第2回 調べる作業を効率的に行う
今後の目次
第2回 調べる作業を効率的に行う ← 今週はココ!
第3回 図形問題に強くなる①(円とおうぎ形)
第4回 図形問題に強くなる②(相似の発見)
今回は前回に引き続き、「②解答にたどり着くまでの作業量が膨大で、効率良い解き方が見つかりにくく難しい。」を解決するポイントを、お子様に身につけさせましょう!
ポイントが身につく問題実践講座
問題
6個の異なる整数があります。
これらの6個の整数の和は365で、6個の整数のうち、最も大きい数は65です。
このとき、最も小さい数として考えられるもののうち最小の数はいくつですか。
(2000算数オリンピックトライアル問題)
【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。
どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
問題文の意味がまずわからない。
意味はわかるけれども、どこからどうやって手をつければよいかわからない。
調べていくところが正確にできない。
そういう様々な課題にこそ難問攻略のためのポイントが有効です。
今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、その中から「効率よく調べていくためのポイント」を2つご紹介します。
今回使うポイント
- 条件を満たすものが見つかったか自信が持てない
⇒【ポイントNo.6】「最小・最大から調べていく」 - 効率良く調べていきたい
⇒【ポイントNo.7】「条件の裏を読み取る」
【ポイントNo.6】「最小・最大から調べていく」
前回、数字を調べていくときには「制約の多い」0や9から考えていくと良い、というポイントを説明しました。
今回のような問題でも、条件に合わせて調べていくことで、求めた答えが必ず条件を満たすことが決まってきます。
条件を満たす最小の数を答えるのであれば、最も小さい数である1から調べていきます。
そうすることで、条件を満たす数が出た瞬間にそれが「条件を満たす最小の数」であることが決まり、それ以上調べる必要はありません。
逆に、最大の数を求める場合は最も大きい数から順に調べていくことで求めることができます。
6個のうち最小の数が1であるとします。
問題文の条件から、
1+A+B+C+D+65=365
⇒A+B+C+D=365-(1+65)=299
1<A<B<C<D<65
では、上の条件を満たすA~Dはあるでしょうか?
いくつか調べてみましょう。
2+3+4+D D=250 Dが65より大きくなるので×
A+62+63+64 A=110 AがBより大きくなるので×
結局、1が最小のとき条件を満たす数の組合せはありません。
【ポイントNo.7】「条件の裏を読み取る」
先ほどは、6個のうち最も小さい数が1の場合を調べました。
以下同様に最も小さい数が2の場合、3の場合……、と調べていけば良いのですが、それでは答えが見つかるまでにかなり時間がかかってしまいます。
何か良い調べ方はないでしょうか?
そこで問題文の条件の「裏」を考えてみます。
6個のうち最も小さい数が最小になる、そして
65以外の5個の数の合計は必ず300になる(和が一定)
ということがわかっています。
このことから、最も小さい数ではなく、それ以外の4個に目を向けてみましょう。
最も小さい数が最小になる=残り4個の和が最大になる
ということに気づけたでしょうか。
5個の和が決まっているので、片方を最小にしたければ残りを最大にすれば良い、ということです。
そうすると、A~Dの4個の数は65より小さく全て異なるという条件から、
D=64、C=63、B=62、A=61
のとき4個の和が最大になります。
このときの最も小さい数は、300-(64+63+62+61)で求めることができます。
【正解】
50
開成・筑駒・灘の問題で今日のポイントを使う
問題 開成中学校 2003 大問2(3)
トランプの13枚のクラブ(♣)のカードを使って、4人で次のようなゲームをします。
「この13枚のカードから4人が同時に1枚ずつカードを取り出し、ある人の得点を他の3人の選んだカードの数の合計とする。」
ただし、エース(♣A)は1点、絵札のジャック(♣J)、クイーン(♣Q)、キング(♣K)はそれぞれ11点、12点、13点として計算し、得点の多い方から順に1位、2位、3位、4位の順を付けます。
(3)4人の誰もがエースを取り出さず、1位の人の得点が15点であったとき、2位、3位、4位の人の得点はそれぞれ何点になりますか。
考えられるすべての場合を答えなさい。
【解説】
1位の人が引いた数字をA
2位の人が引いた数字をB
3位の人が引いた数字をC
4位の人が引いた数字をD
とします。
大きさは、A<B<C<Dとなります。
いま、1位の人の得点が15点なので、B+C+D=15になります。
Dが最も大きい数になるので、D=13のときから考えていきます。←ポイントNo.6
D=13のとき、B+C=2
B,Cは2以上の異なる整数なので、条件を満たす数はありません。
ここで、Aは最も小さくて2である、という条件の裏を考えます。
誰もエースを引いていないので、Aは最も小さくて2
そのとき、Bは最も小さくて3、Cは最も小さくて4になります。
ということは、Dは最も大きくて、15-(3+4)=8になりますので、
Dは8から順に調べていけばよいことがわかります。←ポイントNo.7
D=8のとき、C=4、B=3、A=2しかありません。
D=7のとき、B+C=8より、
C=5、B=3、A=2が考えられます。
D=6のとき、B+C=9より、
C=5、B=4、A=3とC=5、B=4、A=2
D=5のとき、B+C=10となりますが、条件を満たすB、Cはありません。
よってここで調べるのは終了です。
答えるのは1位~4位の得点になりますので、表にまとめると
A | B | C | D | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | |
2 | 3 | 4 | 8 | 15 | 14 | 13 | 9 | |
2 | 3 | 5 | 7 | 15 | 14 | 12 | 10 | |
3 | 4 | 5 | 6 | 15 | 14 | 13 | 12 | |
2 | 4 | 5 | 6 | 15 | 13 | 12 | 11 |
以上4通りになります。
前回のチャレンジ問題の答え
1から5までの数字を1個ずつ使った5けたの整数32154は、どの連続する2けたをとっても、32=4×8、21=3×7、15=3×5、54=6×9のように、九九の答えの数字になります。1から9までの数字を1個ずつ使った9けたの整数のうち、このような性質を持つ整数を答えなさい。
(2015算数オリンピックトライアル問題)
※解答解説は次回掲載いたします。
【解説】
まずは、九九の答えのうち、2ケタで十の位と一の位が異なり、0が使われていないものを書き出します。
12、14、15、16、18 |
21、24、25、27、28 |
32、35、36 |
42、45、48、49 |
54、56 |
63、64 |
72 |
81 |
まずは1回しか出てこない「9」を考えます。
9が使われた答えは49だけです。したがって、9けたの一番右の数が9になります。(○○○○○○○49)
次に少ない数字は「7」です。
7が使われた答えは27と72です。どちらになるでしょうか?
もし27が入るとすると、7に続くものがありません。
したがって、7は72の形で使われ、9けたの一番左になります。
(72○○○○○49)
残りの数字は1、3、5、6、8です。
これらの数でできる九九の答えを書き出すと、
15、16、18 |
35、36 |
32、35、36 |
56 |
63 |
81 |
ここで、8は18か81しかありませんので、この5つを並べたとき左はしか右はしにくることになります。
81○○○の場合
81563と81635の2種類考えられます。
○○○18の場合
○1となる81以外の答えがありません。
これで81563と81635の2つまで絞られました。
このうち、72○○○○○49に入れてつながるものを見つけます。
728156349 ⇒34は九九の答えにないので×
728163549 ⇒全て九九の答えになっているので○
よって答えは728163549です。
今日のポイントを使って問題にチャレンジ!
問題
下の図のように、番号のついたいろいろな大きさの円柱があります。
1の円柱の底面の半径は2㎝で、番号が1つ増えるごとに底面の半径は、前の番号の円柱の半径の2倍になっています。
円柱の高さはすべて3㎝です。これらの円柱の何個かを積み重ねて新しい立体を作ろうと思います。
ただし、円柱の底面の円の中心どうしが重なるように積み重ねます。
<図1>のように3の上に2、2の上に1を積み重ねた立体を〔3 2 1〕、
<図2>のように3の上に4を積み重ねた立体を〔3 4〕
のように表すことにします。
このとき、立体〔3 2 1〕と立体〔1 2 3〕は同じ立体となります。
1、2、3、4、5の円柱を1つずつ使って立体を作ります。
立体〔5 4 3 2 1〕と同じ表面積になる〔5 4 3 2 1〕以外の立体を全て答えなさい。
解答は、〔アイウエオ〕のように答えますがアはオより大きいものとします。
(2015 桜蔭中Ⅳ(3))