第4回 図形問題に強くなる②(相似の発見)
今後の目次
第4回 図形問題に強くなる②(相似の発見) ← 今週はココ!
第5回 図形問題に強くなる③(図形の移動)
第6回 規則性に強くなる
前回から図形問題を取り上げており、前回は円とおうぎ形を含む図形を題材に、補助線の効果的な引き方について説明いたしました。
今回は、三角形・四角形・六角形を中心に「どのように相似形を見つけ、どう活用していくか」を説明してまいります。
前回も述べましたが、図形問題は問題文の代わりに図が与えられており情報量が少なく、自分で補助線を引いたりしていく必要があるため、難易度が高くなるとお手上げというお子様もとても多いです。
まさに③問題に条件(ヒント)が少なく、どう進めていいかわからないので難しいので難しい単元です。
それでは、この「③問題に条件(ヒント)が少なく、どう進めていいかわからないので難しい。」を解決するポイントを、お子様に身につけさせましょう!
ポイントが身につく問題実践講座
問題
図のような五角形ABCDEがあり、角BAE=90°、AP=10㎝、PE=8㎝、AB=3.9㎝、PQ=5.5㎝、PQとCEは平行、BR:RD=5:8、PR:RC=3:5、QS=SD、CS=16.5㎝になっています。
※ただし、図は正確とは限りません。
(1)AQとQDの比をできるだけ簡単な整数の比で答えなさい。
(2)角QRSは何度になるか答えなさい。
(3)三角形QRSの面積を求めなさい。
(2012算数オリンピックファイナル問題 改題)
【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。
どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
今回は(3)を答えるためのヒントを(1)(2)で求められたかがポイントです。
(1)を解くための条件を選べたでしょうか?
(2)を解くために必要な相似形は見えたでしょうか?
難しそうな図形の問題こそ、ポイントに基づいて解いていくことができます。
今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、その中から「効率よく調べていくためのポイント」を2つご紹介します。
今回使うポイント
- どこから手をつけるとよいかわからない
⇒【ポイントNo.10】「直線上の3つの比に注目」 - 相似比の使い方がわからない
⇒【ポイントNo.11】「設問から解法を導き出す」
【ポイントNo.10】「直線上の3つの比に注目」
三角形・四角形・多角形に様々な直線が引かれた相似の問題では、図形が多すぎて、どこから手をつければ良いかがわかりにくいです。
設問で問われている相似形から考えていく方法がよく使われますが、ここでは直線が3つに分けられている部分に注目するというポイントを紹介します。
この3つの部分の比は、相似に関する応用問題ではよく問われるところで、さらには立体図形の切断に関する問題でも出題されます。
難関校を目指す受験生は身につけておきたいところです。
そして、設問で聞かれていなくてもこの3つの部分の比が解答への糸口となっていることが多いのです。
では(1)から見ていきましょう。
三角形の相似形は平行線を探すとよいでしょう。
今回はPQとCEが平行、という条件が与えられています。
三角形APQと三角形AESが相似です。
相似比は、
AP:AE=10:18=5:9 になります。
AQ:AS=5:9 → AQ:QS=5:4
そして、QS=SDより、AQ:QS:SD=5:4:4になります。
(1)【正解】
AQ:QD=5:8
【ポイントNo.11】「設問から解法を導き出す」①
図形の問題で、いくつかの数値は出せたけれど、そこからどうすれば解答にたどりつけるかがなかなか難しいです。
そこでこの「設問から解法を導き出す」というポイントを使います。
このポイントは文章題でも使用することができる大切なポイントです。
(2)の設問は、角QRSの大きさを答える問題です。
そこである疑問が出てきます。
「どうしてこの部分の角度が求められるのか?」
(1)は辺の長さの比の問題、(3)は面積の問題ですし、与えられた図や条件でも角度についてあるのは、角BAE=90°だけです。
この疑問に対する答えは、
①辺の長さから角度が求められる図形が隠されている
②与えられている角度との図形的特徴により求められる
のどちらかになります。
①は正方形や正三角形のような図形が実は隠れていた、というような場合です。
正方形であれば90°、正三角形であれば60°と決まった角度が求められます。
そして、今回は②の図形的特徴を使う解き方になります。
(1)より、AQ:QD=5:8が求められました。これを他の条件と組み合わせていきます。
どうでしょう、BR:RD=5:8と同じ比が与えられていることに気がつきましたでしょうか。
AQ:QD=BR:RDより、三角形DABと三角形DQRが相似であることがわかります。
そして、ABとQRが平行ということもわかります。
これで、唯一の大きさが分かっている角BAEと、求めたい角QRSがつながりました。
ここでもう一つの辺、AEとRSの関係が分かれば正解に大きく近づくのでは?と考えられます。
PR:RC=3:5 という条件があります。そこで対応するES:SCを求めましょう。
SC=16.5㎝と長さがわかっていますので、ESの長さを考えます。
先ほど三角形APQと三角形AESが相似であることがわかりました。
その相似比は5:9なので、PQ:ES=5:9です。
PQ=5.5㎝より、
ES | = | 5.5× | 9 | = | 9.9㎝です。 | |
5 |
したがって、ES:SC=9.9:16.5=3:5となりました。
PR:RC=ES:SCより、三角形CRSと三角形CPEも相似です。
よって、RSとPEは平行であることがわかります。
ABとQRが平行、AEとRSが平行、そして角BAE=90°より、
角QRSがわかります。
(2)【正解】
90°
【ポイントNo.11】「設問から解法を導き出す」②
AQ:QD=5:8より、AB:QR=13:8
AB=3.9㎝なので、
QR | = | 3.9× | 8 | = | 2.4㎝です。 | |
13 |
PR:RC=3:5より、PE:RS=8:5
PE=8㎝なので、
RS | = | 8× | 5 | = | 5㎝です。 | |
8 |
角QRS=90°より、三角形QRSの面積が求められます。
(3)【正解】
6㎠
開成・筑駒・灘の問題で今日のポイントを使う
問題 灘中学校(1日目) 2016 8
図のような正六角形ABCDEFがあり、点P、Q、Rは、それぞれ辺AB,BC、DEの真ん中の点です。
2本の直線PR、QFは点Sで交わっています。
このとき、三角形QRSの面積は、正六角形ABCDEFの面積の何倍ですか。
【解説】
三角形QRSが全体の何倍になるのか、という問題です。
面積を求められませんので、問題から解法を考えてみましょう。
直接何倍になるかがわからない場合は、
(ア)正六角形の面積の何倍になるかがわかる図形がある
(イ)三角形QRSがその図形の何倍になるかがわかる
という2つの条件が必要になります。
この2つについて考えます。←ポイントNo.11
(イ)から考えます。
面積の割合がわかるのは、相似形の場合と、高さが等しい場合が考えられます。
ここでは高さが等しい場合を考え、PS:SRを求めることにします。
(QS:SFを求めていっても構いません)
Q、RがBC,DEの真ん中の点なので、QRとCDは平行になります。
ということはQRとAFも平行になりますので、ここに相似形を作るように補助線を引きましょう。
FAを伸ばした線とRPを伸ばした線の交点をG、
ABを伸ばした線とRQを伸ばした線の交点をHとします。
そうすると直線GRがGP、PS、SRの3つの部分に分かれていますので、この3つの比を求めます。←ポイントNo.10
ここで、正六角形の1辺を②とおきます。
AP=①、角APG=90°、角PAG=60°より、AP:AG=1:2になりますので(30°、60°、90°の直角三角形でおなじみの辺の比です)AG=②です。
また、CD=②、BE=④より、QRはCDとBEの平均である③になります。
そして、三角形BQHは正三角形になりますので(角HBQ=角HQB=60°より)、QH=①です。
三角形QRSと三角形FGSが相似形で、相似比はQR:FG=3:4です。
よって、GS:SR=4:3になります。
また、三角形GAPと三角形RHPも相似形で、相似比はAG:HR=2:4=1:2です。
よって、GP:PR=1:2になります。
GS+SR=GP+PR=GRより、GRを4+3=7の7と1+2=3の3の最小公倍数である21とおきます。
GP | = | 21× | 1 | = | 7、 | |
3 |
SR | = | 21× | 3 | = | 9、 | |
7 |
PS=21-(7+9)=5となりますので、
PS:SR=5:9です。
したがって、三角形QRSの面積は
三角形PQRの | 9 | 倍 | です。 | |
14 |
(ア)にもどり、三角形PQRが正六角形ABCDEFの何倍の面積かを考えましょう。
三角形BHQは下の図より、正六角形を24等分した大きさです。
PB:BH=1:1より、
三角形PHQは全体の | 1 | × | 2 | = | 1 | |
24 | 12 |
HQ:QR=1:3より、
三角形PQRは全体の | 1 | × | 3 | = | 1 | |
12 | 4 |
よって、三角形QRSは全体の
三角形QRSは全体の | 1 | × | 9 | = | 9 | 倍 | ||
4 | 14 | 56 |
になります。
答え | 9 | 倍 | ||
56 |
前回のチャレンジ問題の答え
問題
下の図のように1辺の長さが3㎝の正方形ABCDがあり、頂点A、B、C、Dをそれぞれ中心とする半径3㎝の円をかきました。
斜線部分(正三角形4つと正方形1つ)の合計は何㎠ですか。
(1998ジュニア算数オリンピックファイナル問題)
【解説】
BDに直線を引き、図のように頂点P、Q、Rを決めます。
BDとPQは平行になりますので、三角形PQRの面積と三角形PQBの面積が等しくなります。
これは前回説明した2016年開成中の問題でも出てくる手法です。
三角形PQRは中央の正方形を4等分した形ですので、三角形PQBも中央の正方形を4等分した面積と等しくなります。
AB=AP=BC=CP3㎝より、三角形BCPも1辺3㎝の正三角形になります。
これは正三角形ABSと同じ大きさです。
したがって、求める面積(正三角形4個と正方形1個の和)は、正三角形1個と正方形を4等分した大きさを合わせた四角形BCPQ4個分と同じことになります。
角EBC=60°、角QCB=30°より、角BEC=90°になります。
したがって、四角形BCPQの2本の対角線PBとQCは垂直に交わりますので、BCPQの面積はひし形と同じ対角線×対角線÷2で求められます。
よって答えは、3×3÷2×4=18㎠になります。
今日のポイントを使って問題にチャレンジ!
問題
下の図のような正六角形ABCDEFがあります。辺BC,CDのまん中の点をそれぞれG、Hとします。
(1)三角形AGEの面積は正六角形ABCDEFの面積の何倍ですか。
(2)FGとAHが交わる点をI、FGとADが交わる点をJ、FGとAEが交わる点をKとします。
次の長さの比を、最も簡単な整数の比で表しなさい。
①BGとAJ
②AKとKE
(3)正六角形ABCDEFの面積を12㎠とするとき、三角形AIKの面積を求めなさい。
(2016 駒場東邦中 4)
※解答解説は次回掲載いたします。