第10回 立体図形必勝法③(立方体の複数切断)|受験Dr.が「算数」の偏差値をアップさせる奥義を伝授!

  • ログイン
  • 新規会員登録
  • サイトマップ
  • 採用情報

第10回 立体図形必勝法③(立方体の複数切断)

今後の目次

第10回 立体図形必勝法③(立方体の複数切断) ← 今週はココ!
第11回 調べる立体図形・サイコロ
第12回 数の性質と場合の数の融合問題

今回は立方体の複数切断です。1回切断するときの切断面の求め方は、
「同じ面にある2点を結ぶ」
「平行な面にできる切り口は平行」
「切り口の線と辺を延長して、立体の外で交点を見つける」

の3つがポイントです。
では、そのあとさらに切断する場合はどうすれば良いでしょう?
また、2回切断されてできる立体の体積はどうやって求めればよいのでしょう?

この問題を解決するのは図形センスではなく、あくまで決まったルールに従って正確に作業する力と、条件に合った図形を見つける力です。
そのためのポイントを今回もご紹介してまいります。

ポイントが身につく問題実践講座

問題

体積が72㎤の立方体ABCD-EFGHについて、辺BF、CGのまん中の点をそれぞれM、Nとします。 いま、この立方体を3点A、B、Gを通る平面と、3点A、M、Nを通る平面で切ると、4つの立体に分けることができます。 その中で、BM、MF、CN、NGを含む立体をそれぞれP、Q、R、Sとおきます。 立体Sの体積は何㎤ですか。

ただし、角すいの体積は

(底面積)×(高さ)×1
3

です。
2007 ラ・サール中 大問6(4)
(2007 ラ・サール中 (4))

【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。

正解はこちら

どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
切断の問題では、切り口(切断面)が立体図形に描けたかどうかがポイントです。

今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、その中から「複数回切断された面を上手く描いていくためのポイント・複数回切断された立体の体積を求めるためのポイント」を2つご紹介します。

今回使うポイント

【ポイントNo.24】「2つの交点、1つの交線」

1つ1つに切り口はイメージできますが、2つ切り口が重なったときに、どう交わってどんな図形になるのかはイメージしにくいです。
立方体の図の中に切り口を2つ書いてみても、どことどこが交わっているのか見づらくなったりします。
そこで、以下の順番で作図していくと切り口がわかるようになります。

①1つめの切り口を描く
これはどちらを先に描いても構いません。
今回は問題文の順番通り、A、B、Gを通る平面を描きます。
A、B、Gを通る平面
AとB、BとGがそれぞれ同じ平面上にあるので結ぶことができます。
そして、Aを通りBGに平行な直線は頂点Hを通ります。
よって、四角形ABGHが一つ目の切り口になります。

②2つ目の切り口を描きながら、立方体の表面で交わる点を見つける
次に、2つ目の切り口を描いていきます。
この時にただ描いていくのではなく、切り口と切り口が交わる「2つの交点」を見つけるのがポイントです。
面と面は平行でなければ必ず交わり、その交わった形は直線になります。
そして、立方体と直線が交われば必ず「直線の両端」が存在するため、2つの点が現れます。
この2つの点を見つければ、それを結ぶことで交わる直線が見つかる、
というわけです。
面と面、方体と直線が交わる場合
では、A、M、Nを通る平面を描いていきましょう。
AとMを直線で結ぶと、頂点Aが共通しています。
つまり、頂点Aが1つ目の交点になります
AとMを直線で結ぶ
次にMとNを直線で結びます。
すると、BGとMNはともに、正方形BFGCの上にありますので、この2本の直線は交わることがわかります。
その交点をIとすると、Iが2つ目の交点になります
これで2つの交点が無事見つかりました。
あとは、切り口を完成させます。
Aを通りMNと平行な直線はADになりますので、四角形AMNDが2つ目の切り口です。
2つ目の切り口四角形AMND
今回は立体S、つまり辺NGを含む立体の体積を求める問題です。
立体Sの形を考えます。
まずは、今見つけた2つの交点を結びます。
2つの交点、AとIを結ぶ
これで2つの切り口も直線AIによって、それぞれ2つの部分に分けられました。
この2つの部分のうちN、Gを含むほうの面を太線で囲みます。
N、Gを含む立体を太線で囲む1
あとは立体になるよう、NとG、DとHを結べば完成です。
N、Gを含む立体を太線で囲む2
これはいったいどんな立体でしょうか?
その体積の求め方は次のポイントで説明いたします。

【ポイントNo.25】「線の向きで『柱』か『すい』を判断」

立体がわかりましたので、次は体積を求めます。
立体には必ず「底面」とそれに対する「高さ」が存在します。
しかし、「底面」は一つではありません。どの面を下に向けるかで「底面」はいくつも考えられます。
そして、底面と高さがどのような関係になっているかで、その立体の形も決まり、体積の求め方も決まります。

基本的には底面は面積が求められる図形にします。
今回は、面ADHを底面にする場合と、面NGHDを底面にする場合の2通り考えていきます。
面ADHを底面にする場合と、面NGHDを底面にする場合

①面ADHを底面とした場合
底面に対する高さを表す辺は、AI、DN、HGの3本になります。
この3本が平行かどうかで『柱』と見るか『すい』と見るかが決まります。
これは前回紹介したポイント№22、№23と関連しています。

AIとDNとHGは平行ではありません。
この場合は『すい』となります。

同じ平面上にある2本の直線が平行でない場合、直線を延長すれば必ず1点で交わります。
つまり、AIとDNはどこかで交わりますし、DNとHGもどこかで交わります。
この交わる点が1つに集まり、結果三角すいを形づくるわけです。

そこで、AIとDNとHGを延長し、交わる点をJとします。
この立体は三角すいJ-ADHから、三角すいJ-INGを取り除いた立体になることがわかります。
面ADHを底面とした場合
立方体の1辺の長さを②とします。
AD=DH=HG=②、NG=①
三角形DHJと三角形NGJは相似形で、相似比が2;1です。
HJ:GJ=2:1より、GJ=②になります。
また、DJ:NJ=2:1より、AD:IN=2:1となり、IN=①
になります。

三角すいJ-ADH

②×②×1××1
23


三角すいJ-ING

①×①×1××1
23


立体Sの体積は、

②×②×1××1①×①×1××1
2323
=①×①×①×7
3

になります。
立方体の体積、②×②×②=①×①×①×8=72㎤より、
①×①×①=9㎤となりますので、立体Sの体積が求められます。

②面NGHDを底面とした場合
底面に対する高さを表す辺は、NI、DAの2本になります。
GとHからは直線が出ていませんので、高さ0㎝と考えましょう。
NIとDAは平行です。
この場合立体Sは『柱』となります。

つまり、NGHDを底面とする四角柱を切断した『切断四角柱』として体積を求めます。
面NGHDを底面とした場合
切断四角柱の体積の求め方は、第9回で説明いたしました。
ポイントは、
・底面の対角線で垂直に分割し、切断三角柱2つに分ける。
・切断三角柱は、底面積×高さの平均で求める。

でした。
先ほどと同様に、立方体の1辺の長さを②とし、NGHDをHNで2つに分けます。

立体I-HNG
HG×GN÷2×(IN+0+0)÷3
=②×①÷2×①÷3

=①×①×①×1
3


立体AI-HND
三角形HND×(IN+AD+0)÷3
=②×②÷2×(①+②)÷3
=①×①×①×2

したがって、立体Sの体積は

①×①×①×12)
3
=①×①×①×7
3

となり、先ほどと同じ結果になります。

このように複雑な切断立体の体積を求めるときは、どれを底面とし、高さがどうなっているかで立体を把握し、正しい計算式を使うことがポイントです。

【正解】

21㎤

開成・筑駒・灘の問題で今日のポイントを使う

問題 灘中(一日目) 201611

下の図は、1辺の長さが6㎝の立方体です。この立方体を3点A、I、Gを通る平面で切ったとき、この平面と辺DHは点Jで交わります。
四角すいK-AIGJの体積は㎤です。
また、3点B、D、Gを通る平面で四角すいK-AIGJを2つの立体に分けたとき、点Kを含む立体の体積は㎤です。
灘中(一日目)2016大問11

【解説】

まずは、Jの位置(DJの長さ)を求めます。

IGとAJは平行になります。正面から見た投影図で考えると、
正面から見た投影図
三角形IFGと三角形JDAは合同なので、DJ=FI=2㎝です。

では、四角すいK-AIGJの体積を求めていきましょう。
四角すいの体積は底面積×高さ÷3で求めますが、四角形AIGJを底面とすると、底面積も高さも求めることができません。
そこで見方を変えて、大きな立体から小さな立体を切り取って、四角すいK-AIGJが作れないかを考えます。
すると、面AIGJで立方体を切断した上側の立体から、面ABCDを含む立体をさらに切り取ると四角すいになることがわかります。
面AIGJで立方体を切断した上側の立体から、面ABCDを含む立体をさらに切り取る
この2つの立体は、面ABCDを底面とすると高さを表すBI、CK,CG、DJが全て平行で面ABCDに垂直です。 このことからどちらも「切断四角柱」として体積を求めることができます。←ポイントNo.25

三角形ABC=三角形CDA=6×6÷2=18㎤
BI=4㎝、CK=3㎝、CG=6㎝、DJ=2㎝より、
立体ABC-IG 18×(0+4+6)÷3=60㎤
立体CDA-GJ 18×(0+6+2)÷3=48㎤
⇒立体ABCD-IGJ 60+48=108㎤

立体ABC-IK 18×(0+4+3)÷3=42㎤
立体CDA-KJ 18×(0+3+2)÷3=30㎤
⇒立体ABCD-IKL 42+30=72㎤

したがって、四角すいK-AIGJ=108-72=36㎤です。

①答え 36㎤


次に、この立方体をB、D、Gを通る平面で切断し、四角すいK-AIGJとの交点・切り口を考えます。

BとD、BとG、DとGはそれぞれ同じ平面上にある2点なので、切り口の線として結ぶことができます。
このとき、四角すいの辺との交点ができないかを考えながら線を引きましょう。ポイントNo.24
BとD、BとG、DとGを線として結ぶ
すると、BGとIKは同じ正方形BFGC上の直線なので交わることがわかります。
この点をPとします。
また、DGとJKも同じ正方形CDHG上の直線なので交わることがわかります。
この点をQとします。
頂点Gも共有していますので、P、Q、Gが切り口の点になります。
しかし、辺AKとの交点がまだわかっていません。
そこで、第9回で説明しました【ポイント№20】「交点は対角・垂直切りで解決」を使って考えていきます。

この立方体を対角線ACに垂直な面で切り、面ACGEを考えます。
面ACGEで考える
BDとACはまん中の点で交わります。
この点をLとします。直線LGは面BDGと面AEGCの交線になります。
そこで、面AEGCを考えます。
面ACGEのAKとLGの交点をR
AKとLGは交わります。この交点をRとします。

四角すいK-AIGJは、面GPRQで切り分けられることがわかります。
四角すいK-AIGJは、面GPRQで切り分けられる

この頂点を共有する四角すいの体積は、第9回で説明した【ポイント№22】「角すいのてっぺんは辺の比の積」を使います。

三角すいK-AIJ×RK×PK×QK
AKIKJK

=三角すいK―RPQ

三角すいK-GIJ×GK×PK×QK
GKIKJK

=三角すいK―RPQ

三角すいK-AIJ=三角すいK-GIJ=36÷2=18㎤

あとはAK:RK.IK:PK,JK:QKを求めます。
ALと平行になる直線KMをひく
LはACのまん中の点です。そこで、AC=④とすると、
ALと平行になる直線KMをひくと、CG:KG=CL:KM=2:1より、KM=①になります。
AR:RK=AL:KMより、AR:RK=2:1、よってAK:RK=3:1です。
四角すいK-GPRQの体積を求める
IP:PK=BI:GK=4:3より、
IK:PK=7:3
KQ:QJ=GK:DJ=3:2より、
JK:QK=5:3

三角すいK―RPQ

18×1×3×3119
37535


三角すいK-GPQ

18×1×3×3422
17535


したがって、四角すいの体積は

11942266㎤になります。
353535
②答え 66
35

前回のチャレンジ問題の答え

問題

図のように四角すいの各辺の長さを8㎝とします。
さらに、この立体を下図の3点X、Y、Zを通る平面で切断し、上部(点Pをふくむ部分)を取り除きます。
このとき、残された立体を矢印の方向から見た図をかきなさい。
なお、切り口はエンピツで黒くぬりつぶすこと。
2004 開成中 大問2(1)の問題
2004 開成中 大問2(1)の解答用紙

(2004 開成中 (1))

【解説】

まずは同じ平面上にYとZがあるので、この2つを結びます。
YとZを結ぶ
新たな交点を見つけるため、YZを延長します。
底面の正方形の頂点をA、B、C、Dとし、ADとCDも延長します。
そして、延長線の交点をQ、Rとします。
YZを延長
XとQは同じ平面上にありますので結ぶことができます。XとRについても同様です。
それぞれ交点をS、Tとします。
同一平面上のX、Q、Rを結ぶ
すると、SとYが同じ平面上にあるので結ぶことできます。
TとZについても同様です。これで切り口の五角形が完成しました。
切り口の五角形
この切り口を矢印の方向から見た図に書きこんでいきます。
矢印の方向から見える辺は、PA、PB、PC、AB、BCの5つです。
ただし、辺PDは直接見えませんが、辺PBと重なった場所にあります。
矢印の方向から見る
ここに、切り口の頂点であるX、Y、Z、S、Tを書きこんでいきます。
X、Y、Zの位置はわかっていますので、SとTの位置を決めるために、
PS:SA,PT:TCを求めます。
まずは底面の正方形を考えます。
底面の正方形を考える
三角形QAYとZBYが相似形で、AY:BY=1:1より、QA=ZB=1:1です
したがって、QA=4㎝
同様に、三角形BYZと三角形CRZも相似形で、BZ:CZ=1:1より、BY:CR=1:1です。
したがって、RC=4㎝
次に、三角形PADの面を考えます。
三角形PADの面
Xを通り、ADと平行な直線を引き、PAとの交点をUとします。
三角形PADとAUXは相似形で、PD:PX=4:1より、AD:UX=4:1となり、UX=2㎝です。
三角形XUSと三角形QASが相似形になり、QA:XU=2:1となりますので、AS:US=2:1です。
AU=6㎝なので、AS=4㎝となります。
三角形PCDの面について考えますが、QA=RC=4㎝、三角形PADと三角形PCDが合同なので、PS=PT=4㎝になります。
三角形PCDの面
PS:SA=PT:TC=1:1がわかりましたので、これを解答の図に書きこんでいきます。
正解

答え 上の図

今日のポイントを使って問題にチャレンジ!

問題

図1のような立体を「三角すい」といい、その体積は、
(底面の三角形の面積)×(高さ)÷3
で求めることができます。
図1 三角すいの体積
図2のような底面が正方形の直方体があります。
辺AEを3等分する点をAに近い方から順にP、Qとします。
図3は、この立体を真上から見た図と、真横から見た図です。
この立体から、まず三角すいPEFHを切り落とし、さらに三角すいQABDのうち残っている部分を切り落としました。
図の1目盛りは1㎝であるとします。
でき上がった立体の体積を求めなさい。
図2 直方体ABDC-EFGH
図2 直方体ABDC-EFGHを真上と真横から見た図

(2014 開成中 (2))

※解答解説は次回掲載いたします。