第15回 数当て問題~ヒントの読み方~|受験Dr.が「算数」の偏差値をアップさせる奥義を伝授!

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第15回 数当て問題~ヒントの読み方~

今後の目次

第15回 数当て問題~ヒントの読み方~ ← 今週はココ!
第16回 数表の読み方・考え方
第17回 立体の展開図

今回は数学オリンピックでよく出題される「数当て問題」を取り上げます。与えられたヒントをもとに数字を絞りこんでいく、論理的思考が試される問題です。中学入試では少しレベルが高い内容になりますが、論理的思考は開成・筑駒・灘中を突破するためには不可欠です。難しさとしては、「①問題に条件(ヒント)が少なく、どう進めていいかわからないので難しい」になります。今回は、ヒントの読み方を学んでいきましょう。

ポイントが身につく問題実践講座

問題

博之くんと太郎くんが数当てゲームをしています。
まず、博之くんが各けたの数字がすべてことなる4けたの整数を1つ決めて太郎くんに見えないように紙に書いてふせます。それを当てようと太郎くんが4けたの数字をいいます。
数字もけたも合っていれば○、数字は合っていてもけたがちがっていれば△となります。
たとえば、博之くんが1234と整数を決めて、太郎くんが1354というと、
○2つ△1つとなります。
次の文章を読んで問題に答えなさい。

太郎「9856でどう?」
博之「○が1つ△が1つだね」
太郎「じゃあ6972では?」
博之「これも○が1つ△が1つだね」
太郎「3058だとどう?」
博之「これも○が1つに△が1つだよ」
太郎「4732では?」
博之「これは△2つだ」
太郎「うーん、なかなか当たらない。8369はどう?」
博之「これも△2つだね」

(問1)
ここまでの会話から博之くんの決めた数字として考えられるものを4通り答えなさい。

この後、博之くんは自分の決めた4けたの整数をはじめからかんちがいして答えていたことに気づきました。
博之「ごめん、数字をかんちがいしていた」
太郎「え~、そんな~」
博之「1けただけ数字をかんちがいしていたよ。さっき言った中で、4732に対する答えだけ変化するね。正しくはそこが○1つと△1つだったよ」
太郎「ちょっと待ってね。……わかった!じゃあ博之くんが決めた整数は    だね?」
博之「大正解!よくわかったね」

(問2)
博之くんがはじめに考えて書いた4けたの整数を求めなさい。

(2008 算数オリンピックファイナル)

【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。

どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。このゲーム一度は遊んだことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?どうやって使われている数字を決めていくのか、そしてその数字の場所をどうやって確定させていくのか、そこがこの問題のポイントです。

今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。今回は、その中から「ヒントを読み解いていくためのポイント」を2つご紹介します。

今回使うポイント

【ポイント№30】「近くに並べて、相違を考える」

まずは(問1)です。太郎くんの全ての質問と、それに対する博之くんの回答を表にしてみましょう。



このようにヒントを近くに並べることで、共通点や違いが見えるようになってきます。和差算や消去算でも同じ記号を縦に並べると、そのあとの計算がわかりやすくなるのと同じ理由です。

まずは同じ数字が何個入っているかを調べます。

9856と6972⇒2個
9856と3058⇒2個
9856と4732⇒0個
9856と8369⇒3個
6972と3058⇒0個

6972と4732⇒2個
6972と8369⇒2個
3058と4732⇒1個
3058と8369⇒2個
4732と8369⇒1個

となり、9856と4732⇒0個、9856と8369⇒3個、
6972と3058⇒0個が特徴的であることがわかります。
特に、共通する数字が0個というのが大きなヒントです。

○でも△でも、その個数だけ4ケタの中に使われている数字があるわけですから、9856の中に2個、4732の中に2個、答えの数字が入っています。ということは、ここで使われなかった0と1は博之くんが選んだ整数の中に使われていないことになります。

同様に、6972の中に2個、3058の中に2個、答えの数字が入っているということは、ここで使われなかった1と4は博之くんが選んだ整数の中に使われていないことになります。

このことを最初の表に取り入れてみます。



3058の0は使われていませんので、3、5、8のうち2つが答えに入っています。同様に、7、3、2のうち2つが答えに入っています。

このことから答えに入っている数は、
「3、5、7、□」「3、5、2、□」「3、8、7、□」
「3、8、2、□」「5、8、7、2」の5通り考えられます。


これは、以前紹介しました【ポイント№4】「候補が5個以下になったら調べの作業」にあてはまりますので、ここからは場合分けをして調べていきます。

【ポイント№31】「論理=候補の正確な調べの作業」

論理的とは、きちんと筋道を立てて考える、ということです。
先ほどは「0~9の10個の数字のうち、この4つのうち2個、別の4つのうち2個使っていることがわかっているので、残り2個が使われることはない」という論理に従って候補を見つけました。

ここからは、その中に他の条件を満たすものがあるわけですから、条件を考えながら調べます。

(1)「5、8、7、2」の場合
「9856⇒○1つ、△1つ」と「6972⇒○1つ、△1つ」は条件を満たしますが、「8369⇒△2つ」は条件を満たしません。したがって、この場合はありません。

(2)「3、5、7、□」の場合
「3058⇒○1つ△1つ」より、□は8ではありません。
「4732⇒△2つ」より、□は2でもありません。
「9856⇒○1つ△1つ」より、□は6か9
「6972⇒○1つ△1つ」より、□はやはり6か9
「8369⇒△2つ」より、□はやはり6か9
よって、「3、5、7、6」か「3、5、7、9」が候補になります。

(3)「3、5、2、□」の場合
「3058⇒○1つ△1つ」より、□は8ではありません。
「4732⇒△2つ」より、□は7でもありません。
「9856⇒○1つ△1つ」より、□は6か9
「6972⇒○1つ△1つ」より、□はやはり6か9
「8369⇒△2つ」より、□はやはり6か9
よって、「3、5、2、6」か「3、5、2、9」が候補になります。

(4)「3、8、7、□」の場合
「3058⇒○1つ△1つ」より、□は5ではありません。
「4732⇒△2つ」より、□は2でもありません。
「9856⇒○1つ△1つ」より、□は6か9
「6972⇒○1つ△1つ」より、□はやはり6か9
しかし「8369⇒△2つ」より、□に6、9は入りません。
したがって、この場合はありません。

(5)「3、8、2、□」の場合
「3058⇒○1つ△1つ」より、□は5ではありません。
「4732⇒△2つ」より、□は7でもありません。
「9856⇒○1つ△1つ」より、□は6か9
「6972⇒○1つ△1つ」より、□はやはり6か9
「8369⇒△2つ」より、□に6、9は入りません。
したがって、この場合はありません。

以上(1)~(5)より、使われている4つの数字は
「3、5、7、6」「3、5、7、9」「3、5、2、6」「3、5、2、9」の4通りになります。

あとは数字の並べ方です。ここでは、○1つ△1つのヒントから考えます。
(ア)「3、5、7、6」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「○○○6」
「6972」のヒントから、「6○○○」か「○○7○」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」になります。
3つとも満たすのは「6○5○」か「3○76」になります。
「6○5○」は「6357」か「6753」になりますが、
6357だと「8369⇒△2つ」に矛盾し、
6753だと「4732⇒△2つ」に矛盾しますのであり得ません。
「3○76」は「3576」になります。これは8369、4732どちらの条件も満たしますので、答えのうちの1つになります。

(イ)「3、5、7、9」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「9○○○」
「6972」のヒントから、「○9○○」か「○○7○」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」になります。
3つとも満たすのは「○95○」だけになります。
「○95○」は「7953」になります。
これは8369、4732どちらの条件も満たしますので、答えのうちの1つになります。

(ウ)「3、5、2、6」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「○○○6」
「6972」のヒントから、「6○○○」か「○○○2」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」になります。
3つとも満たすのは「6○5○」か「○○52」になります。
「6○5○」は「6352」か「6253」になりますが、
6352だと「8369⇒△2つ」に矛盾します。
6253だとどちらにも矛盾しませんので答えの1つです。
「○○52」は「6352」になりますが、先ほどと重複しますので調べる必要はありません。

(エ)「3、5、2、9」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「9○○○」
「6972」のヒントから、「○9○○」か「○○○2」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」になります。
3つとも満たすのは「○95○」か「○○52」になります。
「○95○」は「2953」になります。
これは8369、4732どちらの条件も満たしますので、答えのうちの1つになります。 「○○52」は「3952」か「9352」になりますが、3952は3058の条件に、9352は9856の条件に矛盾しますので、この場合はありません。

以上(ア)~(エ)で見つかった4つの整数が答えになります。

(問1)【正解】 2953、3576、6253、7953

(問2)解説

せっかく4つまで絞ったのに、博之くんから回答が間違っていた、と大変なことが知らされました。

しかし、変わる回答は4732のところだけで、△2つから○1つ△1つへと「使われている数字の個数」は変わりません。
したがって、(問1)で調べたうち、
・0、1、4が使われていない
・全ての回答と使われている個数のヒントを満たすのは
「3、5、7、6」「3、5、7、9」「3、5、2、6」「3、5、2、9」の4通りになる

ところまでは問題ないことになります。

ここから調べていくことになります。

(ア)「3、5、7、6」の場合>
「9856」のヒントから、「○○5○」か「○○○6」
「6972」のヒントから、「6○○○」か「○○7○」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」
「4732」のヒントから、「○7○○」か「○○3○」になります。
4つとも満たすのは6753だけです。
これは「8369⇒△2つ」も満たします。

(イ)「3、5、7、9」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「9○○○」
「6972」のヒントから、「○9○○」か「○○7○」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」
「4732」のヒントから、「○7○○」か「○○3○」になります。
4つとも満たす組合せはありません。

(ウ)「3、5、2、6」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「○○○6」
「6972」のヒントから、「6○○○」か「○○○2」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」
「4732」のヒントから、「○○3○」か「○○○2」になります。
4つとも満たす組合せはありません。

(エ)「3、5、2、9」の場合
「9856」のヒントから、「○○5○」か「9○○○」
「6972」のヒントから、「○9○○」か「○○○2」
「3058」のヒントから、「3○○○」か「○○5○」
「4732」のヒントから、「○7○○」か「○○3○」になります。
4つとも満たす組合せはありません。

したがって、(ア)~(エ)より答えが決まります。

この数当てゲームの考え方は、
① 4つの数字を重複しないように質問し、使われている4つの数字を確定させる
② ○、△のヒントからどの位にどの数字が入るかを絞り込んでいく

が基本的な戦略となります。ぜひ、みなさんも遊んでみてください。

(問2)【正解】 6753

開成・筑駒・灘の問題で今日のポイントを使う

問題

物のおよその値段をきかれたとき、A君はその値段の10の位で切り捨てて答え、B君は10の位で四捨五入して答えます。次の問いに答えなさい。
(1)ある物のおよその値段をきかれて、B君が700円と答えました。A君は何円と答えますか。考えられるものをすべて答えなさい。
(2)「りんごを3個買ったらおよそいくらですか。」ときかれて、A君は200円と答え、B君は300円と答えました。りんごは1個いくらですか。ただし、りんご1個の値段に10円未満の端数はありません。
(3)「バナナを9本とみかんを12個買ったらおよそいくらですか。」ときかれて、A君もB君も500円と答えました。また、「バナナを18本とみかんを25個買ったらおよそいくらですか。」ときかれて、A君もB君も1100円と答えました。バナナとみかんはそれぞれ1個いくらですか。ただし、バナナ1本とみかん1個の値段に10円未満の端数はありません。

(1993 筑波大学付属駒場中

【解説】

(1)B君が700円と答えるのは、650円以上749円以下です。
650円以上699円以下の場合⇒A君は600円と答える
700円以上749円以下の場合⇒A君は700円と答える


したがって、A君が答える値段は600円、700円です。

答え 600円、700円

(2)A君が200円と答えるのは200円以上299円以下のときです。
B君が300円と答えるのは250円以上349円以下のときです。
この2つを並べてみます。←ポイント№30



りんご1個の値段は250÷3=83.333…円以上
299÷3=99.666…円以下となります。
りんご1個の値段は10の倍数になりますので、90円となります。

答え 90円

(3)まずはバナナ9本とみかん12個の場合を考えます。



次に、バナナ18本とみかん25個の場合を考えます。



バナナ、みかんの値段はともに10の倍数ですから、
バナナ9本みかん12個⇒500円、510円、520円、530円、540円
バナナ18本みかん25個⇒1100円、1110円、1120円、1130円、1140円


このように並べてみると何か気づくことはないでしょうか?
ポイント№30
バナナが9本と18本、ちょうど2倍になっています。
そしてみかんは12個と25個、2倍+1個になっています。
つまり(バナナ9本みかん12個の値段)×2+みかん1個の値段
=バナナ18本+みかん25の値段
、になるわけです。

ここに注意して調べていきます。←ポイント№31

(ア)バナナ9本みかん12個=500円のとき
500×2=1000より、みかん1個の値段で考えられるのは、
100円、110円、120円、130円、140円になります。
しかし、12個買うとすべて500円より大きくなってしまうため、条件を満たすものはありません。

(イ)バナナ9本みかん12個=510円のとき
510×2=1020より、みかん1個の値段で考えられるのは、
80円、90円、100円、110円、120円になります。
しかし、12個買うとすべて500円より大きくなってしまうため、条件を満たすものはありません。

(ウ)バナナ9本みかん12個=520円のとき
520×2=1040より、みかん1個の値段で考えられるのは、
60円、70円、80円、90円、100円になります。
しかし、12個買うとすべて500円より大きくなってしまうため、条件を満たすものはありません。

(エ)バナナ9本みかん12個=530円のとき
530×2=1060より、みかん1個の値段で考えられるのは、
40円、50円、60円、70円、80円になります。
このうち40円のときだけ、12個の値段が480円となります。
しかし、バナナ1本は(530-480)÷9=5.55…となり、10の倍数にならず、条件を満たしません。

(オ)バナナ9本みかん12個=540円のとき
540×2=1080より、みかん1個の値段で考えられるのは、
20円、30円、40円、50円、60円になります。
先ほど40円のときは条件を満たさないことがわかりました。
みかん1個=30円のとき、バナナ1本は
(540-30×12)÷9=20円 で条件を満たします。
みかん1個=20円のとき、バナナ1本は
(540-20×12)÷9=33.333…円で10の倍数にならず条件を満たしません。

(ア)~(オ)より、バナナ1本20円、みかん1個30円になります。

答え バナナ1本:20円 みかん1個30円

前回のチャレンジ問題の答え

問題

下のア、イ、ウ、エに当てはまる整数を求めなさい。

ア×ア+イ×イ+ウ×ウ+エ×エ=2017

ただし、ア、イ、ウ、エは以下の条件を満たす全て異なる数です。
(条件)
・イ、ウ、エはアの約数
・ウ、エはイの約数
・エはウの約数

(受験Dr.オリジナル問題)

【解説】

エがウの約数である、ということから、ウはエの倍数になります。
同様に、イもアもエの倍数になります。
したがって、ア×ア、イ×イ、ウ×ウはエ×エの倍数になり、2017もエ×エの倍数になります。

2017を素因数分解してみると……、どの素数でも割り切れません。
そうです、2017は素数なのです(おぼえておくと良いです)。
このことから、2017の約数は1か2017しかありませんから、エ×エ=1より、エ=1となります。

式を整理して、ア×ア+イ×イ+ウ×ウ=2016 です。
ここで、ア、イはウの倍数ですから、2016はウ×ウの倍数になります。
2016=ウ×ウ×□  2016を素因数分解して、
2×2×2×2×2×3×3×7=ウ×ウ×□
となります。
したがって、ウにあてはまる数は、2、3、4、6、12が考えられます。
ここで、ア×ア=ウ×ウ×○×○
    イ×イ=ウ×ウ×△×△ とすると、
2016=ウ×ウ×(1+△×△+○×○)になります(△<○)

(1)ウ=2のとき
△×△+○×○=503
この式を満たす整数○、△はありません。

(2)ウ=3のとき
△×△+○×○=223
この式を満たす整数○、△はありません。

(3)ウ=4のとき
△×△+○×○=125
この式を満たす整数○、△は、○=10.△=5があります。
このとき、ア=40、イ=20、ウ=4は条件も満たしています。

(4)ウ=6のとき
△×△+○×○=55
この式を満たす整数○、△はありません。

(5)ウ=12のとき
△×△+○×○=13
この式を満たす整数○、△は○=3、△=2があります。
しかし、このときのア=36、イ=24は約数の条件を満たしていません。

したがって、ア=40、イ=20、ウ=4、エ=1が答えです。

答え ア=40、イ=20、ウ=4、エ=1

今日のポイントを使って問題にチャレンジ!

問題

1~6の数字を1つずつ使われている6けたの整数があります。
いま、A~Eの5人でこの整数を当てるゲームをしています。

A「数字は123456かな?」
B「いやいや数は654321だよ」
C「二人ともちがうよ。きっと563241だ」
D「そうかしら?245631の気がするわ」
E「なんにもヒントなしだから当たるはずがないよ。542163?」

A~Eの答えた整数はすべて正解とはことなりました。さらに、けたと数字が一致した個数は全員ことなりました。正解の6けたの整数を答えなさい。

(2015 算数オリンピックファイナル)

※解答解説は次回掲載いたします。