第19回 正三角形を動かす
今後の目次
第19回 正三角形を動かす ← 今週はココ!
第20回 図形の切り分け①~正方形に切る~
第21回 図形の切り分け②~長方形に切る~
今回は正三角形の動いた様子をとらえる問題です。盤上をどう動いていくかとらえるのがややこしく、「②解答にたどり着くまでの作業量が膨大で、効率良い解き方が見つかりにくく難しい。」という難しさです。
与えられた図をどう使っていくかが重要です。今回は、このような図形の動き方と組み合わせの問題についてのポイントをご紹介いたします。
ポイントが身につく問題実践講座
問題
上の図のような、4つの面が同じ大きなの正三角形
でできているコマと、下の図のような、コマの面と
同じ大きさの正三角形がたくさんかいてある盤があ
ります。コマの1つの面には印☆がついていて、は
じめに、この☆の面が下の図の★のついた三角形と
ぴったり重なるようにおいてあります。
盤についている面の1つの辺を動かさないようにコマを倒し、別の面を下にする操作を何回か行って、コマを動かすことを考えます。例えば、1回目の操作で、コマは図で○をつけた3つの三角形のどれかに移動します。また、例えば、3回目の操作で図の●、4回目の操作で図の■、
5回目の操作で図の▲の三角形にコマはたどりつけて、このときいずれも☆の面が●、■、▲の三角形に重なります。
コマが移動できる盤上の三角形の個数について、次の問いに答えなさい。ただし、はじめにコマをおいた★の三角形は個数に含めません。
(1)2回目の操作で、はじめてコマがたどりつける三角形は何個ありますか。また、そのうち☆の面が重なるものは何個ありますか。3回目の操作、4回目の操作についても同じものを求めなさい。
(2)8回以下の操作でコマが移動できる三角形は全部で何個ありますか。また、そのうち☆の面が重なるものは全部で何個ありますか。
(3)100回以下の操作でコマが移動できる三角形のうち、☆のついた面が重なるものは全部で何個ありますか。
(2006 筑波大付属駒場中 4)
【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。
どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
問題文の条件をしっかり整理できましたか?あるいは、問題の意味はわかるけれども、速さの比をどのように使って解けばよいかわかりましたか?
今回はどのように問題文を図に表し、その図のどこに注目して解いていくかがポイントです。
今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回使うポイント
- 全ての図形の動かし方を整理しにくい
⇒【ポイント№36】「図形の転がりは辺・頂点で探す」
【ポイント№36】「図形の転がりは辺・頂点で探す」
(1)
正四面体は辺をくっつけて転がります。
底面が三角形なので、3本の辺でくっついていることになります。
そこで、今いる場所から3方向に転がすことができます。
そこで1回ずつ操作していきます。
★からつながっている3か所に移動できます。
1からつながっている所に移動できますが、はじめてたどりついた場所なので、既に数字や記号がある場所は除きます。
したがって、2と書かれたマスにはじめて移動することができます。
3回目、4回目も同様です。
これで、はじめてたどりつける三角形の個数がわかります。
次は、「そのうち☆の面が重なるものの数」です。
正四面体に頂点A~Dの名前をつけます。
☆の面が底面になっているとき、頂点B~Dが接しています。頂点Aだけが接していません。このAが接していないときがポイントです。
先ほどの図で頂点Aの位置を考えます。
まず★の位置にいるとき、頂点Aは真上にありますので、ここから倒した3方向の先に頂点Aがくることになります。
ここで、Aを中心とする正六角形に注目します。
ここでは、頂点Aを中心に正四面体が転がることになります。
つまり、 この正六角形の面では必ず頂点Aが底面にあることから☆の面が下にくることはありません。
そして、この正六角形の位置から外側に倒れると必ず☆の面が下にくることになります。
そこで先ほどの図を色分けすると、下のようになります。
ここで点アを考えます。ピンク色の三角形は頂点Aが上にきている正四面体ですから、そこから倒れた場所にある点アは必ず頂点Aとなります。
したがって、ピンク以外の三角形はすべて青色ということになります。
(2)
8回以下の操作でコマが移動できる三角形、というのは
8回以下の回数で『はじめてコマがたどりつける三角形』の合計はいくつですか?という意味です。
そこで、(1)の結果を表にして規則性を考えます。
ここで5回目の操作を描いて調べる前に数値の予想をしましょう。
三角形の数は、3ずつ増えていますので15と予想できます。
☆の面も0、3、6ときていますので、9と予想できます。
では、この予想が正しいか確認しましょう。
しかし、☆の数は予想と異なり3個でした。
三角形のほうは予想どおり3ずつ増やしていけばOKです。
☆の方は増えずに減っています。これは「群数列」の可能性が大です。
群数列はいくつかの数字がグループとなって、グループ全体であるきまりを持って変化していく数列です。
そこで(2)で問われている8回目まで調べていきます。
これで(2)の答えは求められます。
(3)(2)から問題になっている、☆の面の数の規則です。
規則については、確実にわかるまではその先に進まないのが鉄則です。
確証を得るために、9回目の操作によって、☆が下にくる個数を考えます。先ほどの図で、「8」に接している赤い三角形の数を数えます。
すると、6個ということがわかります。
3~5回目のところで「3、6、3」
7~9回目のところで「6、12、6」と同じ動きでちょうど2倍になりました。
あとは10回目、11回目を調べて、「0の個数の規則」と「数字の増え方の規則」を見つけ出します。
ここからこの群数列のきまりが確定しました。
・2回目から4個ずつのグループになる。
・各グループは「0、A、B、A」という形になっている。
・各グループのAは3の倍数でふえている。(3、6、9…)
・同じグループの中で、Bは必ずAの2倍になっている。
したがって、100回目までの合計を考えるときも、グループごとに合計を考えていきます。
2~5回目 3+6+3=12
6~9回目 6+12+6=24
・
・
94~97回目 72+144+72=288
98~100回目 0+75+150=225
12+24+・・・+288+225=(12+288)×24÷2+225=3825
となります。
【正解】
(1)2回目 三角形6個 ☆0個 3回目 三角形9個 ☆3個 4回目 三角形12個 ☆6個
(2)全部で108個 ☆30個
(3)3825個
ポイントを使って開成・筑駒・灘の問題を解こう!
問題
下の図1のように1辺3㎝の正三角形がたくさんかいてある画用紙と、1辺が3㎝の正三角形の厚紙が1枚ある。これを図1の①の三角形にぴったり重ねておく。厚紙の三角形のどれかの辺を画用紙から離さないようにして、厚紙の三角形を裏返して隣の三角形にぴったり重ねることを1回の移動とする。途中では同じ三角形に2度重ねないように移動をくり返して①の三角形に再び重なったとき移動を終わる。図2は移動回数が2回で終わるものの1つであり、移動回数が2回で終わるものはこれを含めて3通りある。図3は移動回数が6回で終わるものの1つである。ただし、図中の矢印は移動の方向を表す。
次の問いに答えよ。
(1)移動回数が6回以下で終わるものは全部で何通りありますか。
(2)移動回数が10回で終わるものは全部で何通りありますか。
(2008 灘中(二日目) 5改題)
【解説】
(1)1回で終わることはありません。
2回で終わるのは図2の1通りで、 最初に動かす方向が3通りありますので、全部で3通りです。
そこで、3回~6回で終わる動かし方があるか考えます。
①から動かした場所に、その回数の数字を書き入れます。
いくつかの進み方が考えられますので、そのうちの1つだけを考えます。2回目まで動かします。
3回目は、2と辺がくっついている左か下に動かせます。 ←ポイント№36
4回目は、それぞれの3に隣り合っている2方向に進めます。
6回以下の回数で①に戻るためには、5回目の操作が終わった時点で、上の図のアかイの位置に来ないといけません。
そのような進み方はこの場合1つあることがわかります。
つまり、6回で①に戻る進み方は正六角形を描くように動かす方法(図3)のみということになります。
1回目に①から動かす方向が3通りあり、2回目に時計回りに進むか反時計回りに進むかで2通り選べますので、3×2=6通りあります。
したがって、6回以下で終わるものは全部で3+6=9通りになります。
答え (1)9通り
(2)
移動回数が10回で終わるということは、8回目の移動が終わったときにある決まった場所に来る必要があります。
例えば、1回目にアの三角形に進んだときを考えます。
10回目に①に戻るためには、9回目にイかウの三角形に来ないといけません。ということは、 その1つ前の8回目にエ~キの三角形にいる必要があります。
また1回目にアに進んだ場合、2回目はクかケの三角形に移動します。
この位置から6回の移動でエ~キの位置に来ることができれば、全部で10回の移動により①に戻ることができます。
ここで図形の対称性よりクにいるときとケにいるときは必ず線対称の進み方がありますので、2回目にクにいるときだけを考えます。
ク→エ 下の図の1通りのみ
ク→オ 下の図の1通りのみ
ク→カ 下の図の1通りのみ
ク→キ 下の図のように2通りあります。
よって、1回目にア、2回目にクと移動したとき5通りあることになります。
1回目にア~ウのいずれかに移動し、2回目にそれぞれ左右どちらに進んでも同様に5通りあることから、全部で3×2×5=30通りになります。
答え (2)30通り
前回のチャレンジ問題の答え
問題
日本にあるJ商店では、アメリカにあるA牧場から毎月肉を一定量輸入して日本国内で売っています。J商店はA牧場に、肉の値段(肉の対価)と輸送費の合計(以下、この合計のことを「仕入れ費」ということにします。)を毎月支払っています。この支払いはすべてアメリカの通貨単位であるドルで行うので、日本円を用意しているJ商店の利益はドルの円に対する価値に左右されます。また、肉の値段は毎月ドルでは一定ですが、輸送費は原油価格の変動によりドルでも変動することがあります。
先月は1ドルは100円でした。先月は、仕入れ費の5割の利益を見込んで定価をつけて肉を完売しました。
今月は1ドルが90円になったので、原油高のため(ドルでの)輸送費が先月の2倍になったにもかかわらず、(円での)仕入れ費は先月の 93.6%ですみました。このため、円高還元セールとして先月の定価の3%引きの値段を肉につけましたが、完売したところ、利益は先月より95万円多くなりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)先月の仕入れにおいて、肉の値段は輸送費の何倍でしたか。
(2)毎月支払っている肉の値段は何ドルですか。
(2009 開成中1)
【解説】
いわゆる売買損益の問題に、「為替」の概念が入った問題です。
まず、 通貨単位が複数ある場合は必ず数値の後ろに単位をつけて考えていくようにしましょう。
問題文も長くややこしいので、図にして考えていきます。
このようになります。
(1)では、肉の値段と輸送費の比を求めますので、この段階で2つの金額を同じ割合で表すことはできません。
そこで、先月の肉の値段を①ドル、輸送費を 1ドルとおきます。
すると、先月の収支は以下のようになります。
今月は、輸送費が2倍の 2になり、また1ドル=90円になっています。
今月の収支は以下のようになります。
問題文でわかっている数値関係は、
今月の円での仕入れ費は先月の円での仕入れ費の93.6%
→(①×90)+( 1×180)=(①+ 1)×100×0.936 ・・・式A
今月の利益は先月の利益より95万円多くなった。
→(①×55.5)-( 1×34.5)=(①+ 1)×50+950000円・・・式B
の2つになります。
式Aを整理して、
(①×90)+( 1×180)=①×93.6+ 1×93.6
→1×(180-93.6)=①×(93.6-90)
→1×86.4=①×3.6
→1×24=① より、先月の肉の値段は輸送費の24倍です。
答え (1)24倍
そこで、 ①= 1×24を式Bにあてはめます。
(①×55.5)-(1×34.5)=(①+1)×50+950000
→(1×24×55.5)-(1×34.5)=(1×24+1)×50+950000
→(1×1332)-(1×34.5)=(1×25)×50+950000
→1×1297.5=1×1250+950000
→1×(1297.5-1250)=950000
→1×47.5=950000
→1=950000÷47.5=20000
したがって、肉の値段①は20000×24=480000(ドル)になります。
答え (2)480000ドル
ポイントが確認できるチャレンジ問題
問題
図①は、4つの面すべてが正三角形の三角すいで、1つの面が赤く塗られている。図②は図①の1つの面と同じ大きさの正三角形を紙の上に46個並べて描いたものである。三角すいを、赤い面が図②のイの三角形を一致するように置き、紙に重なっている三角形のどれかの辺を紙から離さないようにして滑ることなく転がしていく。転がす回数を5回以内とすると、図②の46個の三角形のうち赤い面が重なることのできる三角形は何個ありますか。
(2005 灘中(1日目)13)
※解答解説は次回掲載いたします。