第20回 図形の切り分け①~正方形に切る~
今後の目次
第20回 図形の切り分け①~正方形に切る~ ← 今週はココ!
第21回 図形の切り分け②~長方形に切る~
第22回 図形の切り分け③~いろいろな形に切る~
今回から3回に分けて、図形の切り分け問題を取り上げてまいります。図形の切り分けは、平面図形としての要素だけでなく、数の性質・規則性・場合の数など様々な要素を含む問題で、開成・筑駒でもよく取り上げられています。このタイプの難しさは、「③問題に条件(ヒント)が少なく、どう進めていいかわからないので難しい」という難しさです。
作業を通してどこに注目していくか、そのためのポイントを今回もご紹介してまいります。
ポイントが身につく問題実践講座
問題
1以上の二つの整数の組m、n(ただし、nはmより大きい)について、つぎの文章をよく読み、以下の問題に答えなさい。
短いほうの辺の長さがm㎝、長いほうの辺の長さがncmである長方形を、つぎのように、いくつかの正方形に分割することを考えます。
まず、図Aのように、短いほうの辺を一辺とする正方形(この長方形に含まれる最大の正方形)でできる限り分割します。このとき、長方形が残った場合は、その新しい長方形の短いほうの辺を一辺とする正方形で、その残った長方形をできる限り分割します(図B参照)。
以後この操作を、残りの長方形ができなくなるまでくり返します。
たとえば、短いほうの辺の長さが7cm、長いほうの辺の長さが10㎝である長方形は、図Cのように分割されます。
そこでいま、分割に使った正方形の個数を正方形の面積が大きい順に並べて書き(数の間に-をつける)、整数の組m、nの「関係」とよびます。さらに、分割する正方形の種類の数を、「関係の長さ」とよぶことにします。
たとえば図Cから、整数の組7、10の「関係」とその「関係の長さ」は、
7、10の「関係」……1-2-3
7、10の「関係の長さ」……3
であることが分かります。
またたとえば、整数の組3、5、および4、6の「関係」とその「関係の長さ」は、それぞれ
3、5の「関係」……1-1-2
3、5の「関係の長さ」……3
4、6の「関係」……1-2
4、6の「関係の長さ」……2
となります。
(1)(ア)4、7、および(イ)24、38について、その「関係」と「関係の長さ」を答えなさい。
(2)(ア)一番小さい正方形の一辺の長さが1㎝であり、「関係」が
1-3-1-1-2となる整数の組を答えなさい。
(イ)「関係」が1-3-1-1-2となる整数の組を、1以上100以下のはんいですべて答えなさい。
(3)1以上100以下のはんいで、「関係の長さ」がもっとも長くなるような整数の組を調べたところ、「関係の長さ」が9である組がもっとも長く、しかも一組しかないことが分かりました。その一組を答えなさい。
(2003 開成中 3)
【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。
どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
動かし方はわかってもどうやって全ての動かし方を整理していくかが難しいところです。
今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、図形の動かし方と組み合わせを考えていくためのポイントを1つご紹介します。
今回使うポイント
- 作業をどう効率よく行い、解答につなげていくかわからない
⇒【ポイント№5】「計算する調べの作業は表で行う」
【ポイント№5】「計算する調べの作業は表で行う」
これは以前ご紹介したポイントです。今回は図形を使った問題ですが、辺の長さ、正方形の個数、正方形の種類と数字に関係する部分が大きいです。そのような場合にはこのポイントが有効です。
(1)まずは、この問題の大きな柱である「分割のルール」と「関係・関係の長さの表現」について、きちんと理解できているかを試す問題です。
問題文をきちんと読み、そして文中の例で確認しておけば難しくはありません。
(ア)作業していくうえで押さえておきたいのは「長方形のたて・横の長さ」「分割する正方形の一辺の長さと個数」です。次のような表を作ります。
まず4、7を調べます。
この表の個数の列を見れば「関係」が、列の数を数えれば「関係の長さ」がわかります。
※解答は(3)の後にあります。
(イ)24、38も同様に調べましょう。
(2)(ア)今度は表に予め数字を記入し、もとに戻っていきます。
また、(1)の作業から次の関係式がわかります。
・「分割一辺」=「短い辺」
・「短い辺」=「次の列の長い辺」
・「長い辺」÷「短い辺」=「個数」あまり「次の列の短い辺」
まずは5列目です。
「短い辺」=1㎝
「長い辺」÷「短い辺」=2 より、「長い辺」=2㎝
したがって、4列目の「短い辺」も2㎝です。
同様に4列目を考えると、
「長い辺」÷2=1あまり1 より、「長い辺」=3㎝
3列目の「短い辺」も3㎝になります。
あとは同じように1列目まで計算をくり返していきます。
これでmとnが求められます。
(イ)最初に表に記入した数値のうち変えることができるのは、5列
目の「分割一辺」の長さです。一辺は必ず整数になりますので、ここが2㎝のときを考えてみます。表で作業をすると以下の通りです。
このことから、最後の正方形の長さを2倍にすると、最初のmとnも2倍になることがわかります。
したがって、大きいほうのnは100以下の23の倍数ということになり、mとnの組み合わせを求めることができます。
(3)これも表に予め数字を記入することでもどっていくことができます。気をつけないといけないのは、最後9列目の「個数」のみ、1にならないということです。nが最も小さくなるように表を作ると以下の通りになります。
(2)より、最後の正方形の一辺を2㎝にすると、n=89×2=178となり、条件を満たしません。このことからmとnの答えがわかります。
ところで、この数字の列に見覚えありませんか?気づいた人はかなり算数の問題に慣れている人と言えるでしょう。これはフィボナッチ数列になっています。
図形を使った規則性ではよく登場しますので、数字の並びから規則性を見つけられると解きやすくなります。
【正解】
(1)
(ア)「関係」…1-1-3 「関係の長さ」…3
(イ)「関係」…1-1-1-2-2 「関係の長さ」…5
(2)(ア) 18、23 (イ)(18、23)(36、46)(54、69)(72、92)
(3) 55、89
ポイントを使って開成・筑駒・灘の問題を解こう!
問題
長方形の紙をはさみで何回か切り、切り分けたすべての部分が正方形になるようにします。ただし、もとの長方形も切り分けられた正方形も、辺の長さはすべてセンチメートル単位で測ると整数になるものとします。たとえば、横5㎝、たて3㎝の長方形の紙を、正方形の個数が最も少なくなるように切ると、図のように4個の正方形になります。そのうち2個だけは同じ大きさです。次の問いに答えなさい。
(1)面積が56㎠の長方形の紙は何種類かありますが、それぞれの紙を正方形の個数が最も少なくなるように切ります。このうち、正方形の個数が最も少ない場合について、その個数を答えなさい。
(2)ある長方形の紙は6個の正方形に切り分けられ、そのうち2個だけが同じ大きさで、それらは一番小さい正方形でした。このような長方形の紙のうち、面積が最も小さい長方形の2辺の長さを求めなさい。
(3)ある長方形の紙は14個の正方形に切り分けられ、そのうち2個だけが同じ大きさで、それらは一番小さい正方形でした。このような長方形の紙のうち、面積が最も小さい長方形の2辺の長さを求めなさい
(2003 筑波大学附属駒場中 2改題)
【解説】
先ほどの開成中の問題と同じ切り方の問題です。そこで、同じ表を使って考えてみましょう。
(1)
面積が56㎠になる長方形の2辺の組み合わせは、
(1、56)、(2、28)、(4、14)、(7、8)の4通りあります。
その一つ一つを調べます。 ←ポイント№5
より、(4㎝、14㎝)のときの5個が最小です。
答え (1)5個
(2)
6個の正方形に分けられて、一番小さい正方形だけ2個、残りは全て1個ずつという条件を表に記入します。
正方形の一辺の長さは全てセンチメートル単位で整数になりますので、
面積を最小にするには、最後の正方形の1辺を1㎝にすれば良いことになります。そうすると表は下のとおりになります。
したがって2辺の長さは、8cmと13cmになります。
答え (2)8cm、13cm
(3)これは(2)の続きです。さきほどの表を続けていくと、下のようになります。
したがって2辺の長さは、377㎝と610㎝になります。
答え (3)377cm、610cm
このように、一見ややこしい問題でも表にまとめていくことで、規則性が見えてきます。ぜひ活用してください。
前回のチャレンジ問題の答え
図①は、4つの面すべてが正三角形の三角すいで、1つの面が赤く塗られている。図②は図①の1つの面と同じ大きさの正三角形を紙の上に46個並べて描いたものである。三角すいを、赤い面が図②のイの三角形を一致するように置き、紙に重なっている三角形のどれかの辺を紙から離さないようにして滑ることなく転がしていく。転がす回数を5回以内とすると、図②の46個の三角形のうち赤い面が重なることのできる三角形は何個ありますか。
(2005 灘中(1日目)13)
【解説】
この問題は、前回説明しました筑波大学附属駒場中の問題と全く同じ解き方で解くことができます。復習もふくめて確認していきましょう。
正四面体は辺をくっつけて転がります。
底面が三角形なので、3本の辺でくっついていることになります。
そこで、今いる場所から3方向に転がすことができます。
そこで1回ずつ操作していきます。
1回目
イからつながっている3か所に移動できます。
2回目
1からつながっている所に移動できますが、転がる回数が5回以内で進むことができる最も広い場所を考えますので、既に数字や記号がある場所は除きます。そうすると、2と書かれたマスにはじめて移動することができます。
3回目
4回目
5回目
3回目、4回目、5回目も同様です。
次は、「そのうち赤い面が重なるものの数」です。
正四面体に頂点A~Dの名前をつけます。
赤い面が底面になっているとき、頂点B~Dが接しています。頂点Aだけが接していません。このAが接していないときがポイントです。
先ほどの図で頂点Aの位置を考えます。
まずイの位置にいるとき、頂点Aは真上にありますので、ここから倒した3方向の先に頂点Aがくることになります。
ここで、Aを中心とする正六角形に注目します。
ここでは、頂点Aを中心に正四面体が転がることになります。
つまり、この正六角形の面では必ず頂点Aが底面にあることから赤い面が下にくることはありません。
そして、この正六角形の位置から外側に倒れると必ず赤い面が下にくることになります。
そこで先ほどの図を色分けすると、下のようになります。
ピンク色の三角形は赤い面が重なっている面で、頂点Aが真上にあります。そこから倒れた場所にある点は必ず頂点Aとなりますので、ピンク以外の三角形はすべて赤い面が重なることができない面ということになります。
したがって、図②の46個の三角形のうち、赤い面が重なることのできる三角形は13個となります。
答え 13個
ポイントが確認できるチャレンジ問題
問題
縦40㎝、横128㎝の長方形の紙があります。この紙を縦または横の辺に平行に切り、面積が小さい方の紙を捨て、大きい方の紙だけを残します。2枚の紙の面積が同じ場合には、どちらか一方を残します。この操作を1回とかぞえ、残った長方形の紙に対して、同じ操作をくり返し行います。何回かの操作の後、残った紙が正方形になるようにするとき、次の問いに答えなさい。
(1)3回の操作で、1辺の長さがもっとも短い正方形になるようにしました。この正方形の1辺の長さを答えなさい。
(2)13回の操作で、1辺の長さがもっとも短い正方形になるようにしました。このとき、捨てた紙の面積の合計を答えなさい。
(2001 筑波大学附属駒場中学1改題)
※解答解説は次回掲載いたします。