第22回 図形の切り分け③~いろいろな形に切る~
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第23回 円の転がり
第24回 図形の規則性を調べる
今回はある図形の紙を切り分けて、別の図形を作る問題です。どのように切ってくっつければよいかわかりにくく、まさに「③問題に条件(ヒント)が少なく、どう進めていいかわからないので難しい」という難しさです。今回は、このような図形感覚が問われる問題を論理的に解き進めるためのポイントをご紹介いたします。
ポイントが身につく問題実践講座
問題
下の二等辺三角形は、まっすぐな線で2つに切り、その2つを図のようにくっつけて長方形にすることができます。
では、次の(1)~(6)の図形は、例のようにまっすぐな線で2つに切って、長方形にすることができるでしょうか。できる図形には〇、できない図形には×を書きなさい。
(2006 算数オリンピックトライアル)
【解くための考え方】
まずは、先ほどの問題を直接お子様に解かせてみてください。
どうでしたか?正解にたどりつけたでしょうか?
正解できなかった場合、どこまで解き進めることができたのかが重要です。
動かし方はわかってもどうやって全ての動かし方を整理していくかが難しいところです。
今後受験Dr.では、「難問攻略イメージde暗記ポイント」カードを作成する予定です。
今回は、図形を切断し組み合わせる問題を解くためのポイントを1つご紹介します。
今回使うポイント
- 切り分け方とくっつけ方がわかりにくい
⇒【ポイント№38】「角度の和が90°、180°となる部分は残す」
【ポイント№38】「角度の和が90°、180°となる部分は残す」
この問題では、辺の長さの指定がなく、とにかく「長方形」を作れるかどうかが問われています。そこで「長方形」の形と特徴を振り返ってみましょう。
・4つの角度が全て直角(90°)
・向かいあう辺の長さが等しく平行
この条件を満たしていれば長方形になります。したがって、この条件を作るためには「直角を4つ作る」「平行で長さの等しい辺を2組作る」ことを考えていけば良いのです。
その点に注意して(1)~(6)の図形を見ていきましょう。
(1)五角形
これはわかりやすいのではないでしょうか。なぜならすでに2つ直角が見えています。また、直角でない部分にも同じ2㎝の辺があるため、
ここでくっつけることが想像しやすいからです。
下のように切断し、くっつけましょう。
(2)直角三角形
直角がすでに1つ見えています。ということは、直角をはさむ辺のどちらかと平行に切ることで、直角・平行という2つの条件をクリアできます。また、残る角度20°と70°を合わせると90°になることから、
斜めの辺の真ん中で切り分け、くっつければよいことになります。
(3)平行四辺形
こちらはすでに「2組平行で同じ長さの辺」という条件をクリアしています。あとは「直角を4つ作る」だけです。平行四辺形の角度は向かい合う角度は等しく、隣り合う角度の和が180°になる、という特徴がありますので、ここをくっつけて直線にすることになります。したがって、底辺に垂直に切ればOKです。
(4)台形
これは(2)直角三角形と同じです。全体の形が長方形と直角三角形からできていますので、直角三角形の部分を(2)と同じ切り方をすることで長方形にできます。
(5)ひし形
これは(3)平行四辺形と全く同じ考え方です。ひし形は全ての辺の長さが等しい平行四辺形です。
(6)三角形
この三角形の角度は10°、20°、150°の3つからできています。
ここまでの切り方から、ある辺に垂直に切ると直角が2つできることはわかりました。今までは、残った角度を組み合わせて90°、180°を作ってきましたが、(6)の角度の組み合わせではどちらもできません。
したがって、この図形は2つに切って長方形を作ることはできません。
このように、図形を切り分けてくっつける問題では、どの辺とどの辺をくっつけるとちょうど重なるのか、そのためにはくっつけて180°になる角度を考えること、そして辺に垂直に切れば直角ができる、など角度に注目して考えていくとよいことがわかりました。
【正解】
【正解】(1)〇
(2)〇
(3)〇
(4)〇
(5)〇
(6)×
ポイントを使って開成・筑駒・灘の問題を解こう!
問題
図1のような底辺が8㎝、高さが9㎝の
二等辺三角形の紙があります。
この紙を切って、何枚かに分割した後、
並べかえて別の図形を作ります。
次の(1)~(3)のように図形を作る
とき、紙の切り方のひとつの場合につ
いて、下の(1)~(3)の三角形に、
切るときの線をかきなさい。
図1
(1)紙を2枚に分割して、図2のような縦9㎝、横4㎝の長方形
を作る
(2)紙を3枚に分割して、図3のような底辺が8㎝、高さが9㎝の
直角三角形を作る
(3)紙を5枚に分割して、図4のような1辺が6㎝の正方形を作る
(2004 筑波大附属駒場中2)
【解説】
(1)
まずは長方形をつくります。縦の辺の長さが三角形の高さと等しいので、上の頂点から底辺に向けて垂直に切りましょう。そうすることで、直角も2つできます。
←ポイント№38
答え (1)
(2)
今度は直角三角形です。底辺の長さはもとの二等辺三角形と同じなので、これを上手く活かしたいところです。
ところで、難関校ほどよく出てくるテクニックに「前の問題の答えをヒントにして考える」というものがあります。誘導とも言われます。それは図形の問題でも例外ではありません。
この直角三角形を作ることを、(1)の長方形から考えてみましょう。
直角三角形から長方形を作る方法は、最初の例題で示したとおりです。
その切り方は、
です。
ということは、この切り口の線が(1)の答えの線に重ならないように
引けば、3つに切り分けて直角三角形を作ることができます。
答え (2)
(3)
最後は正方形です。辺の長さがもとの二等辺三角形のどの辺・高さとも異なるため、普通に考えていくとかなり難しいです。
そこでこれも(1)の長方形から考えていきます。
長方形の辺の長さが4㎝と9㎝なので、縦を3等分、横を2等分します。
そうすると、長方形は縦3㎝・横2㎝の6つの長方形に分けられます。
正方形の1辺6㎝は、3×2でできていますので、この6つの長方形を下のように並べ替えると正方形になります。
したがって、(1)で切り分けた線に、下の切り分ける線を重ねて、
全体が5つの部分になれば良いということです。
答え (3)
切り方は一例です。向きが変わった他の切り方でも正解です。
前回のチャレンジ問題の答え
問題
2辺の長さが1㎝と2㎝である長方形を、下の図のような2辺の長さが5㎝と4㎝の長方形の上に、重なることもはみ出すこともすきまを作ることもなく並べると、全部で何通りの置き方がありますか。
ただし、まわしたり裏返したりして重なるような並べ方は、同じものと考えます。
(受験Dr.オリジナル問題)
【解説】
順番に調べていく方法もありますが、規則を見つけるつもりで考えていきましょう。
考え方の方針は、4×5の長方形をいくつかのブロックに分け、そのブロックの中での並べ方を考える、というものです。
そこで、この長方形を横に切って、4×□の形に分けていきます。
4×1の長方形
これは、下の1通りしかありません。
4×2の長方形
ここで大切なのは、4×1の長方形に分けられない並べ方にする、ということです。4×1の長方形に分けられると、組み合わせが重複してしまいます。その点に気を付けると、次の4通りがあります。
4×3の長方形
同様に、4×2と4×1に分けられないように並べると、次の2通り
あります。
4×4の長方形
次の3通りになります。
そして、4×5の長方形は、次の2通りになります。
これとは別に、縦の5列を1~4列に分ける方法を考えます。
1+1+1+1+1
1+1+1+2
1+1+3
1+2+2
1+4
2+3
それぞれ順番と、そのブロックの並べ方をかけて、並べ方を求めます。
ここに、5列分けられない2通りも加えます。
よって合計は、1+16+6+48+6+16+2=95通りとなります。
答え 95通り
ポイントが確認できるチャレンジ問題
問題
図1のような5×5の正方形を下の2つのルールで4つの部分に切り分けます。
ルール1 正方形の辺に平行に、点線にそって切ること
ルール2 切られた4つの部分をうまく組み合わせると3×3と
4×4の2つの正方形ができること
これらのルール通りの切り分け方として考えられるものは何通りかありますが、例以外に5通り答えなさい。ただし裏返しや回転で同じになるものは1通りと考えます。
(2007 算数オリンピックトライアル)
※解答解説は次回掲載いたします。