特別編⑤ 2016 第25回算数オリンピックファイナル 問題解説(その2)|受験Dr.が「算数」の偏差値をアップさせる奥義を伝授!

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特別編⑤ 2016 第25回算数オリンピックファイナル 問題解説(その2)

はじめに

受験Dr.の亀井章三です。いつも「開成・筑駒・灘中!すべて合格大作戦!」をお読みいただきありがとうございます。今回は、いつもの形式を離れた特別編!7月24日(日)に実施された「第25回算数オリンピックファイナル」の問題を1問ずつわかりやすく解説してまいります。
 本連載では、いつも応用問題を解くために必要な「解法ポイント」というものをご紹介しています。今回のファイナル問題を解いていくうえでも、もちろんこの「解法ポイント」を使っていくことで簡単に解いていくことができますので、たくさん「解法ポイント」をご紹介してまいります。

【問題3】

1~13までの数字が1つずつ書かれた13枚のカードがあります。いま、先生がこの中から2枚をひいて、その2つの数字について、A君には積を、B君には和を、C君には差を教えました。3人は先生がひいた2枚のカードの数字を当てようとして、次のように順に会話しています。
A君「わからないな。」
B君「ぼくもわからないよ。」
C君「うーん、やっぱりわからないなあ。」
A君「まだわからない。」
B君、C君「ぼくたちもわからない。」
先生がひいた2枚のカードの数字を2つとも答えなさい。

問題3は算数オリンピックではよく出題される、会話から数字を当てる数当て問題です。問題文を読むだけでは、みんな「わからない」と言っていて、何がヒントなのか全く見当もつけられません。
この問題を解くためには2つのことがわかっていないといけません。それは、
・1つしか組み合わせがなければ確定する。
・全員同じことを考える
ということです。具体的に解説していきます。

<解説>
1~13枚の13枚から2枚を選ぶ組み合わせは、
13×12÷2=78通りあります。
そのうち、「積が等しくなる組合せ」のみ考えていくと
積が等しくなる組み合わせ

となります。
そして、B君とC君も、「A君がわからなかった」という事実から、2枚のカードの積は上のどれかになる、ということを
考えることができるわけです。

次にB君を考えてみましょう。
先ほどの表の組み合わせまでは考えられますので、「この表の中で「同じ和になる組合せがない」場合、B君は2枚の組み合わせがわかることになります。
しかし、B君は「わからない」といいましたので、この表の中で「同じ和になる組合せが2組以上ある」ということになります。
同じ和になる組合せが2組以上ある

表より和が7、9、11、13、14、16、17になるものまで絞られました。
C君も同様にここまでは組み合わせを絞り込むことができます。そのうえで「わからない」となるのは、この組み合わせの中で、「差が等しい組み合わせ」ということになります。
差が等しい組み合わせ

表より差が1、3、5、7になるものまで絞られました。
いよいよ2巡目に入りますが、作業は同じことの繰り返しです。ここまで絞られた組み合わせは全員がわかっています。
それでもA君が「わからない」ということは、やはり「積が同じになる組み合わせ」であることになります。
積が同じになる組み合わせ

これで(2、9)(3、6)(3、10)(5、6)の4組まで
絞られました。
ここまできてもB君、C君が「わからない」というのは、
「和・差ともにこの4組の中で同じになる組合せが他にある」からです。
和・差ともにこの4組の中で同じになる組合せが他にある

和が等しくなるのは、(2、9)と(5、6)
差が等しくなるのは、(2、9)と(3、10)
よって、両方に共通する(2、9)が先生の引いた2枚のカードになります。

答え2と9

このような会話だけから数字を当てる問題は、算数オリンピックではよく出題されています。来年以降もチャレンジするお子様は、対策しておくことをおススメします。

【問題4】

図の三角すいA-BCDで、角BAC=60度、AB:BC=
3:2、BC=CD=DB=7cm、角ABD+角ACD=
180度のとき、次の各問いに答えなさい。ただし、図は正確とは限りません。
三角すい図1
(問い1)この三角すいの体積は、すべての辺が1cmの正三角すい(正四面体)の体積の何倍ですか。ただし、角すいの体積は、底面積×高さ÷3で求められるものとします。
(問い2)この三角すいの表面積は、1辺が1cmの正三角形の面積の何倍ですか。

問題4は、立体図形の問題です。この問題は今回屈指の難問でした。ヒントが抽象的で使い方が難しい。立体のイメージがつかみにくい。結局どうしていいかわからない。実際の大会では、この問題を後回しにして次の問題に進まれた方が多いのではないでしょうか。そんな難問を以下のポイントを使って解説してまいります。
【ポイント№38】「角度の和が90°、180°となる部分は残す」

<解説>
(問い1)問題文にある図形の条件を整理しますと、
 角BAC=60度
 AB:AC=3:2
 BC=CD=DB=7cm ⇒ 三角形BCDは正三角形
 角ABD+角ACD=180度
です。この中で特殊なのが一番最後の条件です。
角ABDと角ACDは同じ面にはありません。その2つの角度の和が与えられている、ということは、この2つの角度をくっつける、ということになります。
そこで、三角形ABDと三角形ACDだけを取り出してみます。
BD=CD、AD共通、角ABD+角ACD=180度より
下の図のように、2つの三角形はくっついて二等辺三角形を作ります。
2つの三角形はくっついて二等辺三角形を作ります

このことから、三角すいA-BCDを2つ並べると下の図のようになります。
三角すいA-BCDを2つ並べる

そうすると、もう一つ三角すいA―BCDをくっつけることができます。
もう一つ三角すいA―BCDをくっつける

出来上がった立体は大きな三角すいとなります。
まん中にある三角すいはどんな立体でしょうか?
辺の長さは、BC=CD=DE=7cmとすべて等しく、正四面体であることがわかります。
そうすると、三角すいA-BCDと1辺7cmの正四面体は高さが等しいことになりますので、体積の比は底面積の比に等しくなります。
そこで底面積の比を求めるため、底面だけ取り出してみます。
底面だけ取り出す

三角形EHI、FIJ、GJHの面積は、三角形EFGの面積の

2 × 3 6 倍なので、
5 5 25

三角形HIJの面積は、三角形EFGの面積の、

1- 6 ×3= 7 倍です。
25 25

よって、三角形EHI:三角形HIJ=6:7となり、
三角すいA―BCDの体積は、1辺1cmの正四面体の体積の

7×7×7× 6 =294倍
7

となります。

答え 294倍

(問い2) 三角すいA-BCDの面のうち、三角形BCDの面積は1辺が1cmの正三角形の49倍であることはわかります。
また、(問い1)より、三角形ABCと三角形BCDの面積比は6:7になりますので、三角形ABCは42倍になります。

そうすると残りは三角形ABDと三角形ACDの面積の合計になりますが、これは(問い1)で組み合わせた大きな三角すいの側面の三角形の面積になります。
そこで、この面積が1辺1cmの正三角形の何倍になるのかを考えましょう。

そこで、大きな三角すいの展開図を作ります。
大きな三角すいの展開図

KとIから辺EGに下ろした垂線の交点をそれぞれM、Lとします。
三角形KEGは二等辺三角形なので、EM:MG=1:1
EH:HG=AC:AB=2:3より、連比を作ると
EH:HM:MG=4:1:5となります。
また、三角形ELIは角Eが60度の直角三角形なので、EI:EL=2:1となります。したがって、EL:LH:HM:MG=3:1:1:5となり、LH=HMだとわかります。

LH=HM、KH=HI=7cm、角HLI=角HMK=直角より、三角形KMHと三角形LHIは合同になることがわかります。
したがって、KM=LIとなり、三角形KEGの面積(三角形ABDと三角形ACDの面積の和)は三角形EGIの面積と等しく、三角形EHI(三角形ABCと同じ面積)の2.5倍になります。
よって、三角すいA-BCDの表面積は、1辺1cmの正三角形の面積の49+42+42×2.5=49+42+105=196倍です。

答え 196倍

難しい立体の問題も平面部分を考えて、展開図を使っていくことで正解にたどりつく解法は、開成・筑駒・灘といった最難関校にも通じます。ぜひ練習してみてください。
次回は問題5と問題6を解説いたします。