ケアレスミス。
和製英語だそうですが、敢えてアルファベットで綴るとcareless mistake。
直訳するならば「注意不足によるミス」というところでしょうか。
お子さまのケアレスミスにお悩みの親御さまも多いでしょう。
われわれ講師の立場としても、ケアレスミスに関するご相談をいただく機会が尽きることはありません。
「毎日の計算練習を丁寧にやりましょう」という程度のアドバイスはよくありますが、結局ミスがあまり減らないのよね…という親御さまに向けて、今回はお子さまのケアレスミスとの付き合い方について、お話しします。
<ケアレスミスの原因>
ケアレスミスという言葉には、
「本来は出来たはずなのに、注意力不足のせいで間違えた」
というニュアンスが含まれている感じがしますよね。
しかし、ここで強調しておきたいことがあります。
実は、いわゆる「ケアレスミス」の、主な原因は「注意力不足」ではないのです!
どういうことでしょうか?
算数のテストで×がついたというとき、その原因をざっくりまとめれば、そもそも2つしかありません。
① 正しい解法にたどり着けなかった。
② 正しい解法は分かっていたが、途中で単純なミスをした。
①の理由で間違えた問題は、ある意味、諦めが付きますね。
要は、正解するには実力が足りなかったのですから、今後の勉強を頑張っていくしかありません。
問題は②の方。これがいわゆる「ケアレスミス」。
ちゃんと解いていたら出来ていたはずなのに…。
非常にもったいなく感じます。
一方で、「あー、ケアレスミスで間違えたー」と軽く捉え、
「問題の理解はしているから、まぁしょうがない」と思っているような受験生もいます。
ところで、そもそも、出来るはずの問題がどうしてきちんと解けなかったでしょうか?
それは、まだ「理解不足」なので、解いている最中に余計なストレスが脳に掛かってしまい、頭が疲れたり、集中が途切れたりし、結果として単純ミスの形で現れたからなのです。
言い換えるならば、すらすらと解ける問題ではケアレスミスはあまり出ないが、自信を持ちきれずにおっかなびっくり解いているようなときには、ケアレスミスが出やすいということです。
親御さまには、「出来たはずなのにもったいない」のではなく、「ケアレスミスが出るということは、まだしっかりとは分かっていない可能性がある」と捉えていただきたいですし、受験生にも「ミス無く確実に解けるためには、もっとしっかりと理解しなければいけないな」という意識を持たせなければなりません。
<ケアレスミスを減らすには>
さて、ケアレスミスの原因が「理解不足」だとするならば、ケアレスミスを減らすには、ストレスなく問題が解けるようになるために、「間違えた単元の理解そのものを向上すること!」という結論になってしまいますね。
確かに、それはそれで非常に大切です。学びはしたものの自信を持ちきれない単元や解法があれば、もっとしっかりと身につけるために反復練習を行うのは、言うまでもなく重要なことです。
しかしそれだけでは受験生にとってちょっと身も蓋もありません…。
現実に「ケアレスミス」で多くの点を落としていると感じている受験生は、算数の学習の王道を説かれても、正論だけど遠い道のりすぎて困ってしまいますよね。
そこで、ケアレスミスとの付き合い方です。具体的に2つご提案します。
① 日々の計算・一行問題練習の素材の「難度」の見直し
ケアレスミスが多いからといって、やみくもに計算練習の量を増やすということにあまり意味が無いことは、ご理解いただけるでしょう。ケアレスミスの原因はそもそも「計算力不足」や「注意力不足」ではないのですから、単に量を増やしてもだめなのです。
計算や一行問題の練習はどんな受験生にとっても大切ですが、適切な量と難度というものがあります。「量」を増やすのはあまり意味がありませんが、「難度」を見直す必要がある受験生は多いでしょう。
計算・一行問題の演習の素材は、易しすぎても難しすぎてもいけません。
目安としては、「気を抜くと間違えそうだが、充分に集中していれば満点が取れそう」という程度の問題が理想的です。一般に、「ケアレスミスが多い」というお子さんが取り組んでいる計算練習は、難度が高すぎる場合が多いと感じています。
②ケアレスミスをするたびに「自力で具体的なミスの箇所を発見させる」
日々の学習においても、テストの復習においても、出来たつもりなのに答え合わせをしたら間違っていたということはよく起こります。その後に、お子さまはどのように動いているでしょうか?
「×をつけて、赤で答えを書くだけ」ではダメなのは当然ですが、間違えた問題を単に最初から解き直すのも、意味が無いわけではないが、効果は大きくありません。
「答えが違うけど、これはケアレスミスのはずだ!」と思ったときは、すぐに解き直すのではなく、解いた跡の中から「具体的に」どこで間違えているのか、「自力で」ミスの箇所を探させるようにしてください。
「具体的に」というのは、例えば「ここで16×5=90としてしまっていた」とか「ここの6を0と読み間違えた」とか、そういうレベルでのことです。また、原則「自力で」探させることに大きな意味があります。「ここで間違えている」という指摘は、極力控えてください。
本人が無事に探し出せたら、間違いノートを作って記録するのもいいのですが、きっと多くのお子さまにとって、そんな面倒な作業は続きません(笑)。
探し出したミスは、本人が記憶の隅の方に刻みこんでくれれば充分です。自分のケアレスミスの事例を継続的に収集することは、ゆっくりと、しかし確実に効きます!
しばしば、簡単には探し出せないこともあるでしょう。
そういうときには、具体的なミスの箇所を探しだす目的で「仕方なく」頭から解き直してみるのも良いですし、どうしても探しきれないときには、もちろん大人が指摘してあげるのも有りです。
日々の学習の中で解いた問題のすべてを、このように復習するのは時間的に厳しい場合が多いでしょう。まずは、「大きいテスト」と「日々の計算練習」でのケアレスミスだけでも、ミスの箇所を自分で探すことを習慣化してみましょう。