安部 公一郎先生
肝心なのは自学自習するスタイルを
築き上げることです!
指導法:第1段階
【成績が上がらない原因-1】 復習のタイミングを誤っているから上がらない
《成績が上がらない生徒》 月1回のテスト前だけ慌ただしく復習する 6年生になってから、5年生のテキストを開いたことがない ⇒ 復習の時間が日々の勉強に組み込まれていない ⇒ 復習のタイミングを誤っている《成績が上がる生徒》 1週間に1時間先週の単元の復習をする。 1週間に1時間半年以内のテストの復習をする。 ⇒意識的に時間を確保している 理解することと暗記することは相反しません。「理解→暗記→再演習→記憶の固定」のリズムを組み立てて下さい。 月1回のテスト前の復習だけでは、記憶を定着できません
【指導方針‐1】 翌日・3日後・1週間後・1ヵ月後と戦略的に系統立てて復習する
【成績が上がらない原因‐2】 問題の取捨選択に失敗しているから上がらない
《成績が上がらない生徒》 毎週新しい内容に追われて、復習が出来ない 宿題がこなしきれず、ただ宿題に振り回されている テキストは問題番号順に解いている ⇒ 問題を選ぶという作業が行われていない ⇒ 問題の取捨選択を失敗している《成績が上がる生徒》 「考える」→「ヒントを聞く」→「解説を読む」→「質問する」の区切りが明確である。 問題を解くときにいつ復習するかが決まっている(復習の時間を予め確保している)。 テキストの問題には優先順位を付けている。 ⇒ メリハリのある学習が行われている 復習しきれない程の問題数に手をつけているのがそもそも間違っています。10問やってなんとか7問理解するより、6問やって6問全部理解する方が定着度が上がります。 算数が苦手な生徒はほとんどの場合手を広げすぎています。
【指導方針‐2】 問題の取捨選択・優先順位付けを重視し、効率的な学習を進める
【成績が上がらない原因‐3】 日々の学習に緊張感・達成感がないから上がらない
《成績が上がらない生徒》 どの問題が解けてどの問題が解けなかったのかを記録していない。 目次なんて見たことがない。 ⇒ 目の前の問題しか見ていない ⇒ 日々の学習に緊張感・達成感がない《成績が上がる生徒》 ◎○△×などの記号を問題に付し、復習に役立てている。 目次を拡大コピーして壁に貼っている。 ⇒ 学習の全体像が見えている。
緊張感も達成感もないまま効果的な学習は出来ません。自分の今いる位置を常に確認しましょう。↓
【指導方針‐3】 チェックシートを作成し、目に見える形で学習進度を認識させる
【成績が上がらない原因‐4】 基本パターンの反復演習不足だから上がらない
《成績が上がらない生徒》 一行問題は解けるが、文章題になると途端に解けなくなり嫌気がさす。 一行問題を反射的に解けるまで繰り返していない。 ⇒ 一行問題と応用問題との連続性を意識していない ⇒ 基本パターンの反復演習不足《成績が上がる生徒》 解けない文章題に出会うたびに、一行問題のどのパターンか確認する。 一行問題を素早く大量に解くことによってミスが減った経験がある。 ⇒ 一行問題の重要性を理解している
ほとんどの応用問題は基本パターンの組み替え・組合せにすぎません。基本パターンを抽出する手順が不安定なため、文章題が解けないのです。初めての単元では、最初の30分間の一行問題演習が後々の理解度・定着度を左右します。
【指導方針‐4】 常にパターン分類を意識して一行問題を演習し、応用問題につなげる
【成績が上がらない原因-5】 勉強時間が絶対的に不足しているから上がらない
《成績が上がらない生徒》 理・社の宿題に追われて算数に手が回らなかった。 ⇒ 教科の優先順位を間違っています。 1時間でこなす問題数を決めずに勉強している。 ⇒ 時間ばかりで内容が伴っていない。《成績が上がる生徒》 テスト直前は理・社の暗記を優先するが日々の勉強は算数を主体に組み立てている。 一日のうちで最も集中できる時間帯を算数にあてている。 ⇒ 教科の特性を把握した学習スケジュールを立てている。
結局、算数が出来る子ほど算数に時間を費やしています。 算数の勉強時間の絶対量を確保しなければやはり安定しません。
【指導方針‐5】 1週間の算数の家庭学習の時間割を体系的に指導。
【成績の上がらない原因‐1~5】を改善し、定着度が上がれば、次の段階に進みます。
指導法:第2段階
【もっと成績を伸ばすためのポイント-1】 力技で解ききる腕力を養成する
《成績が上がらない生徒》 解けない問題を前に2分以上手が動かない。 手も動かさず「分からない」と言う。 ⇒ 問題に対して能動的に向かいあっていない ⇒ 力で解ききる腕力を養成する。《成績が上がる生徒》 まずは問題文から読みとれる条件を整理する。 「ここからが分からない」と言う。 ⇒ 分かることと分からないことがはっきりしている。 初見の問題ではどんな解法であれまず自力で解こうとすることが重要です。 これを省略すると、たとえ解説を聞いて納得はしても身に付きません。
【指導方針-1】 解けるところまではなんとしても解くという強い意思を養成し、腕力を鍛える。
【もっと成績を伸ばすためのポイント-2】 多角的なアプローチで出題者の意図を見抜く
《成績が上がらない生徒》 答え合わせをして正解していると、解説を読まずすぐ次の問題に進む。 ノートやテキストのコピーを使用せず、テキストに書き込んでいる。 ⇒ 問題を活用しきれていない ⇒ 出題者の意図を見抜く。《成績が上がる生徒》 正解・不正解にかかわらず、解説を読み自分の解き方と比較する。 分野間を横断する共通の解法を意識している。 ⇒ 自分の解法を相対化している。
複数の解法を習得しているという自信があると、問題に対して優位に立てます。 また解説をまねることで式の書き方も自然と身に付き、記述問題に対応できます。
【指導方針-2】 複数の解法を模索し、出題者の意図を読みとる力を養う。
【もっと成績を伸ばすためのポイント-3】 言葉で説明させることで思考を整理する
《成績が上がらない生徒》 答えは合っているが、途中式を書こうとしない・書き方を知らない。 以前解けていた問題なのに途中で詰まる。 ⇒ 思考の流れが明確でなく、偶然に左右されている ⇒ 解法パターンの確立《成績が上がる生徒》 問題を解いた後、もう一度最初から頭の中でイメージトレーニングしている。 失敗した理由・勘違いしたところを声に出して確認している。 ⇒ 思考段階・手順を明確に分解・統合している
式だけでなく言葉で手順を説明する訓練が必要です。 思考の流れが明確になり、自分でも気付いていない不完全な部分が発見できます。
【指導方針-3】 目で確認する・声に出して表現する・手を動かすという基本動作を習慣化させる。
安部流指導実例
カタラン数……聞き慣れない言葉ではありますが、時々狙われる論点です。
近年の主な出題を並べてみると、
平成14年 駒場東邦1
平成16年 武蔵3
平成20年 慶應普通部7
平成21年1次 渋谷幕張2
等があります。まさか出ないだろうと油断していると、ひょっこり出る頻度です。
これらのカタラン数の問題は、解法を知っていると即座に解けますが、解法を知らないと調べ上げに非常に時間がかかる問題です。そう言われると解法を知りたくなりますね!
簡単な例題で始めてみましょう。
合計6匹のトラとヒツジをすべて囲みのなかに入れていきます。しかし困ったことに囲みの中にいるトラの数がヒツジより多くなると、トラはヒツジを食べてしまいます。ヒツジが食べられないように囲みの中に入れる方法は全部で何通りありますか?
ヒ-ヒ-ヒ-ト-ト-ト
ヒ-ヒ-ト-ヒ-ト-ト
ヒ-ヒ-ト-ト-ヒ-ト
ヒ-ト-ヒ-ヒ-ト-ト
ヒ-ト-ヒ-ト-ヒ-ト
ト-ヒ-ヒ-ヒ-ト-ト
ト-ヒ-ヒ-ト-ヒ-ト
全部で7通りありますね。ちゃんと書き出せましたか?
これくらいなら書き出せますが、もっと増えたら…、どうしましょう。
ところで皆さん、道順の問題というのをご存知でしょうか。
左図のような、3×3のマス目において、
左下の黒丸から右上の黒丸に進む道順が何通りありますか。
全部で20通りありますね。
さてここで、
トラを囲いに入れる…右に進む(→)
ヒツジ を囲いに入れる…上に進む(↑)とすると、
例えば、「ヒ-ト-ヒ-ヒ-ト-ト」という入れ方は、「上-右-上-上-右-右」と考えることができます。(矢印で書くと↑ → ↑ ↑ → →)
図に記入してみると、
となります。つまりトラとヒツジをどんな順序で囲みに入れてもいいのなら、道順と同じで20通りあるということになります。しかし囲みの中のトラの数がヒツジの数より多くなってはいけませんので、通ることが出来ない道(×印)が存在することになります。
×印を書き込んだ図が、
この図に数字を打ち込んでいくと、
最初の書き出しと同じ7通りになりましたね。
ではこの解法を使って、
さっそく慶應普通部(H.207)の問題を使ってやってみましょう!
どの数も右隣りの数より小さく、また真下の数より小さくなるように入れるとき、何通りの並べ方がありますか。
同じ解法で解けるのでしょうか。
またまた根気よく書き出してみましょう。
左上と右下は1と8で決定ですから、1の右横が2の場合と3の場合に分けて書いていきます。
ふ~。14通りありました。
次に別の考え方でやってみましょう。
いま、各枠に1から順に8まで入れていくと考えると、上の段に数字が入っていないときに下の段に数字を入れることはできません。
なぜなら上図のように、先に下の段に数字を入れてしまうと、“真下の数より小さくなる”という条件に合わなくなってしまうからです。
結局この問題は、
「下の段の数字の個数が上の段の数字の個数より多くならないように枠に入れていく」
という問題であり、それは
「トラの数がヒツジの数より多くならないように囲みの中に入れていく」
という問題と同じであることが分かります。
上の段に数字を入れる…上に進む(↑)
下の段に数字を入れる…右に進む(→)とすると、
左図のような数字の入れ方は、「上-上-下-下-上-上-下-下」と考えることが出来ます。
(矢印で書くと↑ ↑ → → ↑ ↑ → →)
図に記入してみると、
となりますね。
下の段の数字の個数が上の段数字の個数より多くなってはいけませんので、先ほどと同じように通ることが出来ない道(×印)を記入してみましょう。
お~、見事14通りになりました!
慶應普通部では試験時間と問題数を考えると、1問4分ペースで解かなければいけません。つまり解法を知っていることが大前提の出題であるとも言えます。
いかがでしたか?
駒場東邦・武蔵・渋谷幕張の問題にも是非チャレンジしてみて下さい。
ラ・サールの平成11年4や城北の平成18年2次5もカタラン数を題材にしている問題(凸多角形を三角形に分割する問題)ですが、これは場合分けして考えていくしかありません。