指導方針

みなさんこんにちは。ご父母のみなさんは、算数に対してどんなイメージを持っていますか?算数が好きな人、嫌いな人、様々な方がいらっしゃると思いますが、算数は苦手な人と得意な人にはっきり分かれやすい科目だという共通認識はあるのではないかと思います。
算数はいくら勉強しても点取らない人は取れない、センスがないと出来なくて当たり前。そう思っている人が大多数ではないでしょうか。
しかしその認識は間違いです。算数はやればやった分だけ応えてくれる科目なんです。

『なぜ算数ができないのか。その原因を探るのがまず大切』

算数ができない人には大きく分けて4つのパターンがあります。そのパターンを探るのがまず大切です。そのために、まずお子様が解いたテストの問題用紙と答案を見てみましょう。問題用紙・答案用紙は宝の山です。成績を向上させるヒントがザクザク詰まっています。

  • ①序盤の正答率の高い計算問題や一行問題はできるけど、後半の文章題になるとできない。他の教科は悪くないのに算数だけ今ひとつなタイプ。
  • ②後半の難しい問題は意外とできるのに、序盤の簡単な問題をポロポロ落として合計点が取れないタイプ。
  • ③普段の算数の成績はそれほど悪くないのに、平面図形・立体図形など特定の分野になると大きく成績を落としてしまうタイプ。
  • ④算数は苦手だという思い込みが強すぎて、テストでも過緊張や自信喪失になり、式や答えが空欄のまま×になっているタイプ。

それでは、どうやって算数の成績を向上させていけばいいのか、タイプ別に見ていきましょう。

まずは①からです。真面目で几帳面な性格をしているお子さんに多いタイプです。真面目なだけに、できない問題があることを強くとらえすぎて、算数の総合的な成績は悪くないのに「私は算数が苦手」と思いこんでしまって自信を喪失してしまうこともあります。こういうお子さんにはできるだけプラスの声掛けをしてください。後半の問題である、長い文章題である、というだけで臆してしまって、正答率の高い問題を白紙で出したりしていませんか?そういう時、つい保護者様も私たち講師も、「この問題は簡単だったのに出来なかったのはもったいないね」という声掛けをしてしまいがちですが、これでは出来なかった事実を確認するだけで、次のテストで問題が解けるようになるわけではありません。 まずはテストのやり直しが大切ですが、やり直しの最初にお子様ご自身で「×だったけどできそうな問題に印を3つつける」ところから始めます。これは問題の難易度と自分の実力を客観的に見る練習になります。そして印をつけた問題を解きなおします。時には正答率20%以下の問題に印をつけてしまい、難しすぎて手が出ないことがあります。こういう場合、
①の真面目なタイプのお子さんにはその問題はあきらめてもらい、×だった中からもっと簡単な問題を探すところから再スタートします。そしてやり直しの時に大切なのは答えではなく解き方です。正しい式や図を一部でも書いていれば、それだけで褒め、問題が解けたかどうかだけではない評価軸を打ち出します。そうすることで、算数が他科目と同じく「努力すれば報われる」科目であることをお子さんが認識すれば、自然と算数の成績は伸びていきます。

次は②です。このタイプのお子さんは算数は嫌いではなく、むしろ好きなことも多々ありますが、その割に点数が伸びない人が多いです。4年生や5年生前半では算数が得点源になっていたのに、学年が上がるにつれて成績が下がっていってしまうこともあります。本人は答えが合っているかどうかは気にするけど、解き方は気にせず、良く言えば自由奔放、悪く言えばいい加減。式や図をあまり残さず、暗算だけ、数字の当てはめだけで答えを出してしまうやり方を好みます。こういうお子さんには、まずは式や図を書いてもらうところからスタートしなければなりません。まずはテストで×だった問題の中で正答率が高かったものだけ、式や図を書いて解き直しをやってもらい、書くとこれだけできるんだ!ということを本人にわかってもらうことを目標にします。しかしこれを書かせるのがなかなか難しいんです。本人の中での評価軸がテストの〇×だけなので、やり直し自体を好まないタイプが多いからです。そういう場合は、本人が〇になった問題の解き方を聞きます。「この問題、難しかったのによくできたね!どうやって解いたの?」 「なるほど、そうやって解いたんだ!式にしてみるとどうなるのかな?」など。そして次の段階では、お子さんが興味のある分野、好きな分野のちょっと難しめの問題にチャレンジして、「式を書く成功体験」を重ねていくことで、本人の意識改革を図っていきます。

次は③です。これには分野別の根本原理を理解してもらうことが大切なのですが、その際に重要なことが二点あります。一点目は「どの根本原理を使えば問題が解けるのかを徹底的に練習すること」、二点目は「根本原理の基本的な使い方をマスターするために易しめの問題演習を多く行うこと」です。お子さんに苦手分野の問題を10題くらい出して、どの根本原理を使えばいいかだけを問題に書き入れてもらいます(実際に問題は解きません)。ここを直感に頼っていると苦手分野の克服にはつながりません。そうやって、問題を解くための根本原理が分かるようになってからパターン演習を繰り返していくと、必ず解けるようになります。上記二点ができるようになったら「根本原理の組み合わせ」を行います。「この問題を解くためには、2つの根本原理が必要なんだけど、どれとどれか分かる?」など、お子さんに問いかけながら組み合わせ方を探ります。この段階までくれば、御三家レベルの入試問題でも6割は解くことが可能です。

最後に④です。実はこのパターンの子が一番成績が上がりやすいのです。今まで家でも塾でも算数の勉強をしていないし、テストも真面目に受けず試験時間の半分は鉛筆を回して遊んでる。または前半の計算問題に引っかかって後ろの問題は全部空欄…。こういうタイプのお子さんに必要なのは「限定」です。算数全体の成績を上げようとしても時間と集中力がもたないです。特定の分野に絞って勉強し、ここだけはできる!という自信を積み重ねていくと、少しずつ意欲が増し、問題に取り組めるようになって、劇的な成績向上が望めます。
勉強する分野としては計算問題、周期算、食塩水、円とおうぎ形の面積などがおすすめです。計算問題は練習量が点数に比例しやすいので取り組めばできるようになること、周期算はひたすら書いていけば全体のイメージがつかめること、食塩水は問題のパターンが少なく覚える解き方が少なくて済むこと、円とおうぎ形の面積は図が目に見えて把握しやすく答えも決まった数になりやすいことがその理由です。6年生の入試間際、志望校の偏差値には遠く届かないんだけどなんとかしたい!という場合にもこのような「解きやすい分野だけは解けるようにする」という作戦は有効です。

それでは、根本原理の組み合わせを使って、実際の入試問題を解いてみましょう。

指導方針について

H25年 慶應中等部 算数【4】

ある日の正午に3つの時計A、B、Cを正しい時刻に合わせました。この日の午後、時計Aが1時をさしているとき、時計Bは1時3分をさしていました。また、時計Aが2時をさしているとき、
時計Cは1時56分をさしていました。それぞれの時計は一定の速さで動いているものとして、次の□に適当な数を入れなさい。
(1) 時計Aが2時50分をさしているとき、時計Bは□時□□分□□秒をさしています。
(2) 時計Bが3時51分をさしているとき、時計Cは□時□□分□□秒をさしています。

この問題は時計を使っているので、長針と短針、または正しい時計とずれた時計の速さの差に注目した「時計算」の問題のように見えます。しかし、この問題は基本となる正しい時計が存在しないので、時計算では(1)はできても(2)で間違ってしまいます。ここでは「それぞれの時計は一定の速さで動いている」こと「AとBが比べられBとCが比べられている」ことの2点に注目し、「速さ」と「連比」を使うと、驚くほど簡単に解けます。

(1) 時計Aが0時から1時まで60分の道のりを進む時間に、時計Bは0時から1時3分まで63分の道のりを進むと考えます。同じ時間に進む道のりの比=速さの比となるので、AとBの速さの比は60:63=20:21。時計Aが0時から2時50分まで110分の道のりを進んでいるので、A:B=20:21=170:□ □=21×170÷20=178.5となり、時計Bは178.5分進む。
178分=2時間58分、0.5分=60秒×0.5=30秒なので、Bは2時58分30秒をさしています。

(2)BとCは直接比較できないので、まずAとCを比較します。(1)と同様に考えてA:C=120分:116分=30:29
Aを60にそろえると、
A:B=20:21=60:63
A:C=30:29=60:58

A:B:C=60:63:58 したがってB:C=63:58 ここに(2)の条件を当てはめると63:58=231:□ □=58×231÷63=212と2/3分=3時間32分40秒なので、時計Cは3時32分40秒をさしています。

いかがでしたか。御三家や早慶の問題でも、2つもしくは3つの根本原理の組み合わせを使うことで、算数の合格点は必ず取れます。塾で習っていないことをその場で新しく考えるのではなく、今まで学習した問題と似ている部分を探して粘り強く取り組み、一緒に合格を勝ち取りましょう。