「算数の成績が上がらない」

という生徒さんには「1.基本問題から点が取れない」か、基本はわかっているがその先の論理思考部分が止ってしまって「2.応用問題の点が取れない」の2パターンが考えられます。

1.基本問題から点を取れない。

根本原理から理解できておらず点数が取れない生徒さんはどこに原因があるのか。

(1)単元ごとの学習しか出来ていない

⇒大手塾では、単元ごとに区切ってしか教えません。
速さをやっていたかと思うと、急に相似な図形や、立体図形に入ったりと、子供たちは結局何をやっていたのかどんどんわからなくなってしまいます。

(2)自分で考える学習をしていない

⇒先生による解説が授業の全般に及び、子供たちは話を聞いて黒板をノートに写すだけで必死になってしまいます。その結果、いざ自分で問題を解こうとするときに、何がポイントかもわからず手がとまってしまうのです。
以上この2つが考えられます。ではこの問題をどうクリアしていけばよいのでしょうか。

まず算数の問題を解く手順は、

基本事項⇒論理思考⇒解答 です。
このプロセスを経て算数の問題は解けるということになります。そのまず基本事項というのは問題を解く時のキーです。その部分が頭に入っていないと問題には全く手がつけられないということになります。なので解答用紙やノートが真っ白状態になってしまっている生徒さんは結局ここの部分が頭に入っていないということになります。

復習の仕方に問題があるのでは?
覚えるというのは、よっぽど自分が興味を持っていることでない限りすぐには頭に入ってきません。なので反復練習ということが必要になります。ただ、反復といっても、みんなはおそらく宿題はやらなくてはいけないことだという事はわかっているし、やっているんだと思うのですが、ちゃんと勉強はしていても点数が伸びないのは、その宿題のやり方、復習の仕方に問題があるのではないでしょうか。

1週間の復習スケジュールは
授業後⇒帰って(学んだことを)すぐにやる。30分でもいいからやって、記憶に残すようにする。
土日など(時間がある時に)⇒宿題で出た部分の基本問題をもう一度できるまで繰り返し解く。
授業前までに⇒基本問題をクリアしていればさらに練習問題にもチャレンジする。

上記のスタイルはあくまでも例です。はっきり言って算数の勉強は毎日やって欲しいものです。以前教えた偏差値が70ある生徒さんで、宿題に関して感心させられたことがあります。勉強というのが日々の生活の一部に入っていて、宿題を出すとすぐにその横で問題の脇に1週間の日付を振っていき毎日やるようにしているのです。1日大問3~5題+計算問題10題で、それより少ないと「先生、少ない、もっと出して~」と言ってきます。それぐらい勉強する事が当たり前というのはごく稀な例かと思いますが、日々の勉強がやはり大事であることは間違いないようです。

指導実例

基本はできるけどその先に進めない生徒さんがよくいます。それは最初の部分で述べましたように「考える学習」をしていないということが考えられます。入試問題に適応できるようにするため大切なのは、基本事項を自由自在に使いこなせることです。

考えた後を残すようにする。よく頭の中だけでやって「できた」気持ちになってしまう生徒さんがいますが結局点数が伸びないのはそこに原因があります。

ノートに式や言葉を書いて考え方を整理する。

考え方を頭の中だけではなく目に見えるようにして整理していくことが大切。

計算力をつける。

きちんと考えもできている、式もあっているのに、点数がもらえないパターンが計算力の無さです。特に計算ミスを誘う問題が、「3.14を伴う計算」と「速さの単位変換を伴う計算」です。そこまで問題は難しくないのですが、そういうところで計算ミスをして落としてしまうというケースが見受けられます。この2点に細心の注意を払ってやる必要があります。

①太線は400mなので
AD=□mとすると、
30×2×3.14×1/2×2+□×2=400mとなり、
□=(400-188.4)÷2=105.8   答え.105.8m
これはただ円の周りの長さの式を利用して求めるとても単純な問題ですね。

②ここからが本題です。
この問題は、解き方はいたって簡単で、上位校を目指している生徒さんであればすぐに解き方は浮かんできますね。ただ、その解き方の計算がやたらと面倒臭そうだなという予感がしてきます。そう、その通りです。円周の式を1つ1つ出していたらとっても大変なことになります。

まず、悪い例は、
あきら君の走る距離は、
30.5×2×3.14+105.8×2=403.14
たかし君の走る距離は、
31.5×2×3.14+105.8×2=409.42
だから、
409.42-403.14=6.28  答え.6.28m

では、良い例は、
上の式でも分かるように、差が出てくるのは、円周の式の部分だけです。
円周の式=半径×2×3.14ですね。
そうすると、半径の長さだけ差が出てくるということが分かります。そこに気づけばこの問題は2~3分もかからず解けてしまうでしょう。
なので、比を使って解いてみます。
30.5:31.5=○61:○63
○63-○61=○2だけスタートを前にすればよい。
ということは、比の①が出てくればカンタン!
○61はあきら君の円周の長さであるから、
○61=30.5×2×3.14
という事は、①=3.14となり、②=3.14×2=6.28  答え.6.28m

このように、解法は単純ですが、計算であったりもう一方の解き方を自分で発見する力が要求されるのが上位校の問題です。
計算力スピードが要求されます。

悪い例で解いてしまうと、計算に時間がかかり、更に計算ミスをする恐れがあります。大問5題~6題を50分で解くためには、1問の5分も10分もかけていられません。

桜陰では過去5年連続円に関する問題が毎年出ています。(22年度(2)、21年度、20年度、19年度、18年度)円の問題というのは、正に計算力とスピードが要求されている証でしょう。3.14の計算に戸惑わず正確な答えを導き出せるのか、尚且つ、この種の問題を2,3分で処理できる力を持っているのか。前半でこのような問題が出てきます。前半で1問に5分もかけていたら後半の更に難易度の増す問題に着手することさえできなくなってしまいます。

では算数の要である、「計算力」と「処理能力」の力を日ごろからどのようにつけていけばよいのでしょうか。

5年生の段階から、まずは計算力をつけるために難易度の高い計算式に慣れておく必要があります。また、覚えてしまう計算は、覚えてしまいましょう。たとえば、3.14のかけ算や、少数から分数、分数から少数の直しも基本は覚えてしまうことです。そして1つの問題でも、他の視点から見て、どのように解いたら1番スピードが速いのか、合理的なのか、解き方をどんどん増やす観点を持ちましょう。1つやって満足するのではなく、自分で日ごろから他の解き方を考えてみてください。そこから、「考える力」というものも芽生えてくると思います。昨今、こちらが言ったことしかできない生徒さんが目立ちます。そうではなくて、もっと質問したり自分で疑問に思うことが本来の勉強ではないかと思います。特に上位校はそういった自分で考える「良問」を出してきます。自分で試行錯誤して考えることができるのかということを見ているのだと思います。基本をマスターした後は、もっともっと貪欲に解き方を追究する勉強をしていきましょう。