吉岡 英慈先生
やる気があればなんでもできる
やる気にさせるコーチング術
吉岡流コーチング術について
春野「 本日は、吉岡先生の子どものやる気を上げるコーチング術についてお伺いいたします。
吉岡先生の生徒さん方、いつも楽しそうにかつ真剣に授業を受けている様子が伝わってきます。相当、やる気アップしていますね。」
吉岡「 そうですね、かれら、かなりやる気を出してくれていて、うれしいですね。」
春野「 お子さんのモチベーションを上げるのに、吉岡流コーチング法が活かされているとお伺いしているのですが。」
吉岡「 よく能力があっても、成績がぱっとしないお子さんがいますよね。
ぼく、そういうのもったいないなあって思うんです。
「やれば、できる」、そういうお子さんが多い。
その「やれば」の部分、そこをなんとかできないか、なんとかしてあげたい。
それが、コーチングを考えて実践するようになったきっかけです。」
春野「 やる気がない、親御さんが一番悩む部分ですね。
では、どうすればやる気アップするのでしょうか?」
吉岡「 まず、どんなときにやる気が上がるのかと申しますと、
手が届きそうなところ、ちょっとジャンプすれば届くあたり、
ここを狙うとき、やる気は一番アップします。
課題が高すぎても低すぎても、人間はやる気を失います。
ですから、指導の際、お子さんに渡す課題もちょっと頑張れば自力で解ける、というものをやらせる。」
春野「 ほどよいレベルの見極めが大切なんですね。」
吉岡「 そうです。そして、できた瞬間、心から「よくできたね」と認めてあげる。
小さな達成感、これがやる気を上げるんです。」
春野「 小さな達成感が次の課題に取り組む意欲を生む。」
吉岡「 そういうことなんです。
そして、与える課題を少しずつステップアップしていく。
その際、子どもに今何を評価しているのか、評価の基準を明確にしておきます。
たとえば、宿題。
初めの段階はとりあえずやってくればOK。
ここで、ちゃんとしてきたことに対してほめる。
次も、その次も。
じゃあ、そろそろステップアップしよう、というときに、
「これからは、答え合わせまでしてくるんだよ。
そこまでするのがこれからのルールにしよう」とルールが変更されたことを宣言する。
あるときまでほめられていたのに、突然ほめられなくなったら、子どもは混乱するし、プライドも傷つきます。
でも、ルールを明確にすることで、次のステップに向けて意欲をもってもらえるんです。」
春野「 なるほど。」
春野メモ
・子どもの学習到達度を見極め、ちょっと頑張れば自力で解ける、という課題を与えて、できた瞬間、「できたね」と声かけする。
⇒小さな達成感を積み上げる
・ステップアップするときは、評価の基準を明確にして子どもに伝えることで、次の課題の意欲を育てる
子どものモチベーションアップは親の接し方次第
吉岡「 子どもがやる気を失う原因の多くは、接する大人側にあると思うんですよ。」
春野「 耳の痛いご指摘ですね。」
吉岡「 すみません。
でも、教える側の期待値がどんどん高くなってくると、ちょっとやそっとのことではほめてもらえなくなる。
どんな優秀な子でもほめられたいですからね、やっぱり前に気持ちよく進みたいじゃないですか。」
春野「 そうですね。子どもは親や先生の期待には応えたいという欲求がある。
だから褒められたら、認められた、と嬉しくなってがんばりますものね。
ところが、親や教師の側の期待だけでどんどん膨らんでいくと、注意されたり叱られたり、という場面が増えます。
いきおい、やる気はなくなりますね。」
吉岡「 まさしくそうなんです。
そして子どもは、常に親の期待を超えたい、という欲求があるんですね。
その期待が超えられないくらい高く設定されていたら、そりゃあ気持ちはしぼみます。
たとえば勉強頑張っているときに「いつもそれくらいやれよ」と言われるより、
「そんなに勉強してお前はえらい奴だ。体を壊すから、その辺にしておけよ」と言われるのとでは、やる気が違ってくるでしょう。
「その辺にしておけよ」と言われれば、ようし、もっと驚かせてやれ、と思って頑張る。
でも「それくらい」と言われると、「もうするもんか」って気になる。
受験Dr.の『子どもソーシャルスタイル診断』を用いた接し方とリンクするのですが、声がけのしかたは重要ですね。」
春野「 コーチングの結果、子どものやる気がアップした。
勉強するようになった。
それがどのような結果につながるのか、単なる志望校合格、だけではないと思うのですが、いかがでしょうか?」
吉岡「 そうですね。
やはり、コーチングの究極の到達点って、子どもの自立だと思うんですよね。
自己管理能力の養成。最終的には自分で細かくルールを設定して、自分のモチベーションを上げる方法を身に着ける。」
春野「 なるほど。自己管理能力。自省をこめて、大人でもできない方は多いかと思います。」
春野メモ
・大人の子どもへの期待値を吊り上げない。段階を追って課題を設定する。
・コーチングの到達点は、子ども自身が自己管理できるようになること。
・大人の声がけは、子どもが期待を上回りたくなるような工夫をすること。
小さなアメと大きなムチ~自己コントロールを考える~
吉岡「 面白い実験があるんですよ。
子どもを3つのグループに分けて、Aグループにはクレヨンと画用紙を与えた。
Bにはクレヨンと画用紙、『描いてね』の言葉がけ。
Cにはクレヨンと画用紙、描いたらご褒美を与えた。
しばらく続けて、結果を観察した。」
春野「 Aには環境のみ。Bには環境と指示。Cには環境と成果へのご褒美。というわけですね。」
吉岡「 結果は、Aのグループが一番絵を描くようになった。次にB。
一番絵を描かなくなったのは、Cだった。」
春野「 ご褒美はだめなのですね。」
吉岡「 ご褒美制はこわいということです。
ぼくは自身の経験上、『小さなアメと大きムチ』の大切さを訴えたいですね。」
春野「 小さなアメとは?」
吉岡「 ちょっとした目先のことで、自分で自分を励ます。
だましだましやっていく方法です。
たとえば、お腹すいたな、ってときに、よし、この問題一問解けたら、チョコレート1粒食べるぞ!みたいな。
で、1粒口に入れて、ああおいしい、じゃあ、次の問題解けたらもう1粒。」
春野「 自分でも、チョコ1粒がたいしたことじゃないことはわかっている。
自分を次に向かわせるちょっとしたきっかけのようなものなのですね。」
吉岡「 そうです。ばかばかしくても目先のちょっとしたことだから、自分を奮い立たせることが出来る。
これが、成績あがったらゲーム機買ってもらえる、とかだったら、
努力の途中で苦しくなって「要らないや」ってあきらめてしまう。
そこで終わりますよね。
モノで釣っても、苦しさの方が大きくなったらあきらめる。
あきらめ癖をつけるのも問題です。」
春野「 では、大きなムチとは?何やら怖いのですが・笑」
吉岡「 自分にとって本当にいやなことを設定する。
腕立て100回とかはだめです。やれてしまうので。
僕は大学受験の時、決めた学習量を一日でも怠けて終わらなかったら、
携帯水没、オーディオを破壊する、など決めて周囲に協力を求めました。」
春野「 すさまじいですね・笑。
逆に自分をそうやって続けさせるためにコントロールする、自己制御の方法を自ら考える、
そのことこそが重要だという気がいたします。」
吉岡「 そう、モチベーションの保ち方を自ら考え、実行できるようにする。
自立した学習ができるようになる。
それが、コーチングの最終目標です。」
春野「 お子さんのやる気を上げて、少しずつ手を離していく、
最終的には自分で学習を計画し実行できるようにする。
吉岡流コーチング術、すばらしいですね!
私も学ばせていただきました。
ぜひ実行したいと思います。
ありがとうございました!」
春野メモ
・モノによるご褒美制は弊害が大きいので、避ける。
・「小さなアメと大きなムチ」など、自己コントロールの方法を考えて実行する。
※2013年9月9日メルマガより