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投稿日:2017年10月30日

テーマ: 理科

アナレンマ~デジタル時代が生み出した自然との乖離

こんにちは。受験ドクター理科のEです!

秋が深まり朝晩は冷え込む日も出てきましたね。
寝つく時には暑くて布団を蹴っ飛ばしてしまうんだけれども夜中にぐぐっと冷え込んで風邪をひいてしまう、
なんてことも起こりがちな季節です。体調管理にはくれぐれも気をつけましょう。

今回は太陽の描く曲線「アナレンマ」をご紹介しましょう。

アナレンマ

ジレンマなら聞いたことあるけど、アナレンマって何?

1年を通して同じ場所で同じ時刻に太陽を観察すると、その位置が8の字形を描きます。
この太陽が描く8の字をアナレンマと呼びますが、察しの良い方お気づきでしょうか。

あれ?上下方向(南北方向)に動いて見えるのは、季節によって太陽の高度が変わるからわかるけど、
左右の動きは何??

そう、普通、同じ地点で観察した場合、南中高度が季節によって変化するのはわかるけれど、
南中時刻については、経度によって標準時からのずれはあれど、同じ地点で観察し続けるならいつも同じなんじゃないの?
ですよね・・・。

実は込み入った話になるので中学受験のテキストではあまり触れられていない情報ですが
南中時刻は日本の標準時明石市だったとしても、年間を通して12時(正午)というわけではなく
季節によって最大15分程度のずれがあるのです。

なぜでしょう。

もしも地軸が公転面に対して傾いておらず、地球の公転速度が常に一定であれば
太陽は一年を通して同じ時刻に、同じ高さで南中します。

けれど、実際には
地軸は公転面に対して傾いており(こちらは有名ですね)
しかも「地球の公転速度が一定ではない」ので
南中から翌日の南中までの時間が変動してしまうのです。

地球が太陽の周りを1年に1回まわっているのは有名な話ですが
実はこの公転軌道はきれいな円ではありません。

円ではなく楕円形をしているため、太陽に近い近日点では公転速度が速く
太陽から遠い遠日点では公転速度が遅くなります。

その結果公転速度が速い時には、南中から次の南中までは普段よりも多めに自転しないとたどりつけない
ということが起こるので、南中時刻のずれが生じます。

紛らわしいのですが、この近日点は現在は冬至の頃になっています。

こんな話を生徒にすると、「え~っ太陽に近いのになんで寒いの??」
なんて反応が返ってくることもありますが、

高い山に登ったら太陽に近くなるけど寒いよね
ってな話で、地球から太陽までの距離を考えると
太陽にわずかばかり近づくことの影響よりも地軸の傾きによって太陽の光が斜めに当たる影響の方が
遥かに大きいわけなので、近日点でも冬なんですね。

さて、この南中時刻の「ずれ」。天文学者の間でははるか昔からよく知られたことだったそうなのですが一般に問題になるのは、最近(といっても200年ぐらいさかのぼる)のこと。

なぜならふりこ時計や機械仕掛けの時計が普及する以前に時を知る大きな手掛かりといえば何といっても太陽の動き、すなわち日時計が立派に活躍していたのであり、その時代には時刻の基準は、実際の太陽の動きそのものだったからです。

太陽が南中する時刻が「正午」なのだから、正午に太陽が南中していない、なんてことはそもそも起こりようがないんですね。
その時代には年間を通してさりげなーく、一日の長さが変わっていたわけです。

自然と一体となり、自然とともにあった時代から
学問や技術が発達し、自然を客観視できる時代へと移り変わる中で生じた「アナレンマ」

そんなことにしみじみと思いをはせながら、秋の夕日をしみじみ眺めてみるのもいかがでしょうか。

ではまた。

理科ドクター