みなさんこんにちは。
理科・算数担当のT.H.です。
2021年の夏も終わりに近づいてきましたが、今年も多くの水害が起こりました。
特によく耳にしたのが 「線状降水帯」 という言葉です。
熱海の土砂崩れ、九州の豪雨災害も線状降水帯が引き起こしたとされています。
2020年の熊本豪雨など、九州や山陰地方に豪雨をもたらすことが多いです。
今後の中学入試の時事問題、環境問題として取り上げられそうですね。
受験学年の皆さんは当然チェックしていると思いますが、実際どこまで知っているでしょうか。
以下の問題に〇×で答えてみましょう。
Q2. 線状降水帯は、長さ10㎞以上の雨雲である。
Q3. 線状降水帯は、低気圧の近くにできる。
Q4. 線状降水帯の発生を、2日以上前に予測するシステムがある。
解答
Q1→〇
線状降水帯はいくつもの積乱雲が連なったもので、局地的に激しい雨を降らせます。
Q2→×
線状降水帯は、一般的に長さ50~300㎞程度とされています。厳密な基準はありません。
Q3→〇
低気圧によってできた前線の周辺に積乱雲が発生するので、それが連なって線状降水帯になります。
低気圧が長時間とどまりやすい梅雨の時期に特に多く発生します。
Q4→×
線状降水帯の予測は極めて難しく、現状では半日~1日前の予測が限界のようです。
何問正解できたでしょうか。
全問正解できた人は、とても素晴らしい知識・感覚をお持ちです。
言葉はよく耳にはするけれども、発生のメカニズムなどは知らないという人が多いと思います。
線状降水帯の発生について簡単に説明しておきたきます。
左下図は梅雨の空気の模式図です。
北側にあるオホーツク海気団と、南にある小笠原気団がせめぎ合って、日本上空に前線ができます。
前線は寒気と暖気の境目なので、この2つの空気がぶつかり合うと、右下図のようになります。
暖気のほうが軽いので、湿った暖かい空気が上昇気流となり、上空で冷えて積乱雲になります。
積乱雲は短時間で消えてしまいますが、前線付近で次々に発生して雨を降らせます。
これが梅雨の長雨を発生させる原因です。
この前線に対して垂直方向に湿った風が吹くとき、線状降水帯が発生しやすくなります(左下図)。
通常の積乱雲は発生してから数十分で水分を使い切って消えてしまいます。
しかし、湿った風によって水蒸気が補給され続ける状態になると、何時間も消えずに残ります。
そこへさらに新しい積乱雲が発生して、右下図のように積乱雲が一列に並んで渋滞をおこします。
これが線状降水帯です。
積乱雲が通常よりも長時間居座ることで降水量が増え、局地的に大雨の被害をもたらします。
以上のことから、線状降水帯の発生は梅雨前線とセットで発生すると考えられることが多いです。
しかし、湿った空気が上昇気流になり続ければ線状降水帯は発生するので、前線ではない場所、
例えば風が山を吹きのぼる場合にも発生するはずです。
夏の夕立(ゲリラ豪雨)も、地面があたたかく上空の空気が冷たいときに上昇気流により引き起こされます。
ここに湿った風が吹き続ければ線状降水帯のようになる可能性もあります。
このように線状降水帯の基本的な発生メカニズムはわかっていても、詳しい条件は解明されていません。
現状では予測が難しいわけですね。
線状降水帯の発生が予想された場合には、 「顕著な大雨に関する情報」 というものが発表されます。
線状降水帯 ⇒ 顕著な大雨に関する情報
入試対策としてこのセットを覚えておきましょう。
今後発生メカニズムが解明されるとともに、中学入試に出題される可能性も高まります。
「線状降水帯」、「ゲリラ豪雨」など、気象に関する言葉の意味を説明できるように準備しましょう。