皆さんこんにちは。
受験Dr.講師の勝山利信です。
前回に引き続き『難解なグラフ』についてお話します。
データを読み取ることが難しいグラフについての問題が出題されると正答率は低くなります。
初めて見るグラフであっても、データを読み取り正答にたどり着くためには、どのような目線でグラフを見れば良いのか参考にしてみてください。
ユールストロームダイアグラム
グラフの名前が既に難しそうですが、用語として問われるわけではないので心配しないでください。
これは、流水のはたらきにより岩石や石ころが運ばれたり積もったりすることについて考えるためのもので、次のようなグラフをユールストロームダイアグラムといいます。
前回のブログでポイントとしてまとめましたが、特に難解なグラフからデータを読み取るときのコツは、
・グラフは点を線にしたものであることを意識する → 線の形の複雑さにだまされない!
・読み取った情報を生かすための基本的な知識は事前に身につけておく
この2点です。
今回も形の複雑さにだまされずに、学習した知識をもとにこのグラフを読んでみましょう。
まず、グラフで使われている用語の意味を知識として分かっていることが前提になります。
緑色の線は「堆積していた粒が運搬され始める流速」を表していますが、これは「止まっていた石ころが動き始める流れの速さ」と言い換えると意味をとらえやすくなります。言い換えができるのは、理科の知識を持っていてこそですね!
すると、たとえば粒の直径が1mmの石ころが堆積していた(止まっていた)ときに、流速がおよそ秒速40cmを超えると運搬され始める(動き始める)ことが読み取れます。
では、逆に流速が秒速40cmよりも遅くなると、流されていた粒の直径が1mmの石ころが止まるのでしょうか?そうではないことをこのグラフは表しています!
青色の線は「運搬されていた粒が堆積し始める流速」を表していますが、同様に言い換えてみると、「動いていた石ころが止まり始める流れの速さ」となります。
よって、流されていた粒の直径が1mmの石ころが止まり始めるのは、青色のグラフからおよそ秒速6cmよりも遅くなったときと読み取ることができます。
ちなみに、流速がおよそ秒速6cmから40cmの間の速さで水が流れているのであれば、その水の流れの中では粒の直径が1mmの石ころは止まっているものもあれば動いているものもあるという状態になります。自然界では、川の流れの速さは傾きや水量で変わるため、一定ではなく様々な速さが入り交ざっており、より複雑な状況になります。
例えば、「氷が解け始める温度」と「水が凍り始める温度」がどちらも0℃であるように、物事が切り替わる境目は1つであることの方が多いようですが、向きの違いによって境目が異なることもあるのですね。
このように、物事の境目を表すようなグラフは表している内容自体の難度が高いため、読み取りが難しくなります。
物質の状態図
もうひとつ難解なグラフを紹介します。
これは、状態が変化する温度と圧力の関係を物質ごとにまとめたもので、例えば水の状態図は次のようになります。
1013hPa(1気圧)は普段生活している大気圧の平均的な数値だととらえてください。
するとその気圧のときは、固体と液体の境目の温度(融点)が0℃、液体と気体の境目の温度(沸点)が100℃であることが読み取れます。
話題にもなりやすい現象として、山の頂上付近など標高が高くなると気圧が下がるので、水が沸騰する温度が下がるということが挙げられます。
そのことを状態図から読み取るときは、次のような目線で見ることになります。
次に二酸化炭素の状態図を見てみましょう。
水とは異なり、1013hPa(1気圧)では-78.5℃を境目に固体と気体が切り替わる「昇華」が起こることが分かります。
ドライアイスで遊んだことがある人も多いと思いますが、二酸化炭素の固体は解けると直接気体になるので、周りに二酸化炭素の液体がつきません。まさに「乾いた氷」なわけです。
では、液体の二酸化炭素は存在しないのでしょうか?
こちらのグラフから、圧力と温度を高くすると二酸化炭素も液体になることが読み取れます!
ドライアイスを閉じ込めて圧力を高くした状況で高温にしなくてはならないので、実際に目にすることは難しそうですね。
グラフからデータを読み取る力
今回紹介した2つのグラフは入試問題において出題頻度が高いものではありませんが、難解なグラフからデータを読み取ること自体のトレーニングにはうってつけです。受験予定校の理科の傾向から、普段の学習に使用しているテキストや問題集には出てこないようなグラフが頻繁に出題されているようであれば、初めて見たグラフからでも情報が読み取れるように、グラフを読み取る目線を磨くことを意識してトレーニングしておきましょう!
目指せ判断力UP!
それでは、またお会いしましょう!