こんにちは。
受験Dr.の松本 佳彦です。
前回に引き続き、紛らわしい漢字の覚え方についてご案内いたします。
今回は「同音異義語」です。
同音異義語は熟語の形で出題される為、言葉の意味や熟語の組み立てを把握することが必要になります。
漢字を学習する段階で、その漢字が用いられる熟語についても意識して取り組めていれば、同音異義語で間違えることも少なくなります。
そこで今回は、同音異義語を漢字の意味と関連付けて覚えていく方法をご紹介いたします。
前回の記事と合わせて、同じ読み方をする漢字・語句の区別を完璧にしましょう。
(「同音異義語」の「異義」という語も、「異議」「意義」という語と紛らわしいので意味の違いを押さえておきましょう)
❶はじめに~熟語の組み立て~
二字熟語を考えるにあたり、熟語の組み立てを判別することで、意味の理解が進みます。
ですので、はじめに二字熟語の組み立てについて確認しておきましょう。
二字熟語の組み立てには主に以下の7つがあります。
1 意味が似た漢字を組み合わせたもの 例:温暖(どちらも「あたたかい」)
2 対になる漢字を組み合わせたもの 例:強弱(強い↔弱い)
3 上下が修飾・被修飾の関係になっているもの 例:紅葉(紅い葉)
4 上下が主語・述語の関係になっているもの 例:国営(国が営む)
5 下の字が上の字の目的語になっているもの 例:登山(山に登る)
6 上の字が下の字を打ち消すもの 上の字は「非・無・未・不」 例:不利
7 下の字が上の字の状態を表すもの 下の字は「的・然・化」 例:自然
他、三字以上の熟語を縮めたもの(例:特急←特別急行)、というパターンもあります。
このうち、数が多いのは3の「修飾・被修飾」の組み立てです。
(本ブログのタイトルにも、「熟語」(熟した(よく知られた)語)・「漢字」(漢(中国)の字)・「同音」(同じ音)・「異義」(異なる義(意味))・「対策」(対応する策)と、3の組み立ての熟語が5つ含まれています)
二字熟語の組み立ては、実際の中学入試の問題でも問われており、区別を正しく付けておく必要があります。
(例1)次の熟語の、二つの漢字はどのような関係になっていますか。(2024年度 白陵中学校 改題)
⑧安易 ⑨明暗 ⑩日照 ⑪水面
解答…⑧ 1(どちらも「やすい」) ⑨ 2(明るい↔暗い) ⑩ 4(日が照る) ⑪ 3 (水の面)
(例2)「消火」「発熱」と同じ組み立ての熟語を次のア~コからすべて選び、記号で答えなさい。(2021年度 灘中学校)
ア 運送 イ 恩師 ウ 解放 エ 学者 オ 兄弟 カ 集金 キ 洗顔 ク 全力 ケ 走行 コ 読書
解答…「消火」「発熱」は5 (「火を消す」、「熱を発する」)
ア…1(運ぶ、送る) イ…3(恩を受けた師) ウ…1(解く、放つ) エ…3(学ぶ者) オ…2(兄↔弟)
カ…5(金を集める) キ…5(顔を洗う) ク…3(全ての力) ケ…3(走って行く) コ…5(書を読む)
より、答えはカ、キ、コ
6と7については、特定の字が含まれているのでそこで判別しましょう。
3と4については、「が」を1文字目と2文字目の間に入れて意味が成り立てば4、成り立たなければ3、と覚えましょう。
以下、いくつか同音異義語の例を挙げて説明します。
❷カンショウ
「鑑賞」「干渉」「感傷」等、様々な同音異義語があります。
出題例:
どうしてもカンショウ的になってしまう。 (2024年 豊島岡女子学園中学校)
熟語の構成と漢字の意味:
鑑賞→鑑みて(見極めて)賞賛する (ほめる)→(芸術作品の)良さを味わうこと 構成:3
干渉→どちらも「関わる」という意味(干犯、交渉)→人のことに立ち入って従わせようとする 構成:1
感傷→感じて傷つく→感じやすく、すぐ悲しんだり同情したりすること 構成:3
❸ケントウ
「見当」「検討」「健闘」の3つを押さえておきましょう。
出題例:
今後のテレワークでの働き方をケントウする必要がある。 (2021年 岡山白陵中学校)
熟語の構成と漢字の意味:
見当→見て当てる→大体の予想をつけること 構成:3
検討→どちらも「調べる」という意味(検定、討論)→良く調べて、良いか悪いか考えること 構成:1
健闘→健やかに闘う→困難に屈せず、頑張って闘うこと 構成:3
❹ヘイコウ
「平行」「並行」「閉口」の3つを押さえておきましょう。
出題例:
つまらないお話で、難しい単語が多くて閉2⃣した ( 2⃣に当てはまる漢字を選ぶ) (2021年 早稲田実業学校中等部)
熟語の構成と漢字の意味:
平行→平らに行く→どこまで行っても交わらないこと 構成:3
並行→並んで行う→2つ以上のものを同時に行うこと 構成:3
閉口→口を閉ざす→手に負えなくて言葉に詰まること 構成:5
❺キカイ
「機械」「器械」「機会」の3つを押さえておきましょう。
出題例:
絶好のキカイを逃す。/キカイ体操の選手。 (2022年 白陵中学校)
熟語の構成と漢字の意味:
機械→どちらも「からくり」という意味→動力に応じて一定の仕事をするもの 構成:1
器械→器に入った械(からくり)→動力を持たない小型で小規模な器具 構成:3
機会→機(きっかけ、時機)に会う→物事をするのに丁度良い時 構成:3
他にも、「交代」と「後退」、「貴重」と「記帳」等、様々な同音異義語が出題されています。それぞれ熟語の構成や漢字の意味を考え、書き分けができるようになりましょう。
❻同音異義語とことわざ・四字熟語
ことわざや四字熟語の中にも同音異義語を含むものがあり、漢字を取り違えるとことわざの意味が成り立たなくなってしまいます。
以下、間違えやすいことわざや四字熟語をいくつか紹介します。
. 袖振り合うも多生の縁…「多く生まれ変わる(=前世からの因縁)」という意味 「他生(現世とは他の生=前世)」と書くこともありますが、「多少」ではありません
絶体絶命…「体も命も絶える(なくなる)」という意味 「絶対」ではありません (出題例:2022年度 大阪星光学院中学校 「ゼッタイゼツメイ」を漢字に直して答える)
五里霧中…「五里(=約20㎞)四方にわたって霧の中にある(=判断が付かない)」という意味 「夢中」ではありません (出題例:2020年度 湘南白百合学園中学校 「五里夢中」が正しいかどうか判断する)
いかがでしたでしょうか。
同訓異字や同音異義語は、正しく認識しているつもりでも、いざ書くとなると取り違えてしまうことが多々あります。
どの字を使うべきか迷った際は、同訓異字なら熟語の形で考える、同音異義語なら熟語の構成や漢字を考えることで、適切な字を判断できます。
勿論、漢字を最初に学習する際にそれらを意識しておくと、より正確に知識を定着させることができるので、漢字を覚える時には、漢字字典や漢字ドリルに掲載されている熟語についても一通り目を通す習慣をつけましょう。
それでは、今回はこの辺りで失礼いたします。