「日日是学日!」(⇒ 日々、これ学び!)」
受験Dr.の松西です。【夏期講習】がはじまりますね! まとまった時間があるので
「ふりかえり内容」をする塾も多いかと思います。もし、一学期に「漢字の積み残しがある」と
お悩みでしたら…今回の授業がお役に立つと思います。
前回のブログ「ブレイクコード:しめすへん」の続編となりますので、まだご覧でない方は
そちらをさきにご確認ください。今回は➁「ころもへん」をあつかいます。
では、シリーズ恒例の『早速ですが問題』!
しかもそれを、今回のテーマに沿って「漢字で」選んでいただきたいと思います。
小学生のお子様にとっては、見たことがあるような、ないような漢字…
①か➁か、答えが決まりましたら続きをご覧ください。
それでは始めましょう。LET’S BREAK THE CODE!
正解発表をひっぱるようですが、5、6年以外のいろいろな学年のお子様にも「なるほど」と
思っていただけるよう、順を追って説明します。クイズの解答は記事の中ほどでお伝えします。
まずは書き順。ころもへんは書き順を間違えやすい字として中学受験で狙われやすいです。
※ブロックで分かりやすく表現しているため、トメ・ハネ・ハライは不正確です。
正しい形は教科書などでご確認ください。
下準備にころもへんの元字、「衣」の書き順を、お子様にも指で空書きしていただいて確認。
この「衣」を省略したものが「ころもへん」です。青い部分がひとつながりになります。
とはいっても、大まかな書き順の流れに変更はありません。しっかりと覚えておきましょう。
下準備その2、中学受験の基礎知識「漢字の分類」のうち、主なもの4つの確認です。
⑴ 象形文字
⑵ 指事文字
⑶ 会意文字
⑷ 形声文字
この記事では漢字の組み合わせを学びますので、⑶と⑷が学習対象です。
そのうえで「まず番外編」を確認します。それは「初」。
「衣」と「刃物」を組み合わせた⑶ 会意文字で、衣に刃を当てて服を作る最初の切り口から
「初」の意味が出ています、「部首『刀』の意味が強く出ている文字」とみなして「刀」の部に入る漢字です。本日のテーマは「ころもへん」ですから、この字は以後あつかいません。
テストなどでもひっかけ問題で見かける字です。ご注意を。
ではここからが本番、まずは小学校で学習する「しめすへん」の漢字の一覧です。
…え? たったこれだけ? と驚かれるかもしれませんが、学習指導要領によると
これだけです。では「小学校で学ばない漢字」からいくつかをピックアップしてみましょう。
基準は「中学受験:国語の文章で、よく見かける文字(私調べ)」です。
グッと量が増えました。のちの説明のため、二つのグループに分けてあります。
たとえ学習漢字に入っていなくても、中学受験では「読んで意味を取れるべき」漢字群です。
まずはグループAから触れていきます。
グループAは「服」との結びつきが強い字です。服、と言っても漢字が出来た時代ですから
ジーンズやスカートはもちろんありません。
ここで冒頭のクイズの答えあわせ。「裾」は衣服の足元を指す言葉ですね。現代の洋服でも
店頭で「お裾直しいたします」のように使われる読みです。または「山の裾野が広がる」なんて
表現を見てどんな光景を連想しますか? 「山の足元=ふもとのゆるやかな傾斜」をイメージ
できればバッチリです。
一方で「袖」の方は、季節的に「半袖」のシーズンですし、見知った人も多かったでしょう。
慣用表現の「袖の下を渡す」は「わいろで相手の歓心を買うこと」ですが、これは
現代のシャツ袖では意味が分からないですね。昔の着物はポケットがない代わりに、ゆったりとしている袖の下に物を収めることができたのです。
袴は「紺屋の白袴(こうやのしろばかま)=専門家が自身の身辺には目が届いていない様子」や「藤袴(ふじばかま)=秋の七草」くらいでしか習いませんが、「ころもへんが入っている」
ことには納得できるのではないでしょうか。
さてグループB。こちらはちょっと手ごわいですよ。私もつい腕まくりして説明します。
前回ブログで「学習漢字の8割を占める⑷形声文字には音を表す音符と意味を表す意符がある」
ことを確認しました。
今回はその知識をフル活用! とはいってもブログもそろそろ終盤ですので…3つに絞ります。
漢字学習は、「漢字の中の漢字に気づくこと」 これが大切。
表の一番上の段はすべて「フクと読む」点が共通しています。
「複」…衣が二枚以上→複数、複雑
「復」…ぎょうにんべん=「行ったり来たり」に関連
→往復、復習
「腹」…にくづき=人間の体→腹筋、腹痛【はら】
「覆」…「復」におおいをのせた→覆面、転覆【おお(う)】
この表では縦のつながりが意符、横のつながりが音符になるように組んでいます。
全部を説明する紙面はないのですが、例えば「先生、『彼(かれ)』は音符と関係ないでしょ?」
目ざとい生徒ならそんな質問も出るかもしれません。ところがどっこい、
ほら、きちんと「ヒ」と読んだでしょう。対義語は「此岸(しがん)」。この「此」もまた、
「雌雄(しゆう)を決する=勝敗をはっきりさせる」などのときに「シ」と読みますよ。
大人でもなかなか読めない字に「瑕疵」という語がありますが、これも「あ、後ろはたぶん
『シ』と読むぞ」と推測できるのです。ちなみに「かし」と読み、欠点や傷のことを言います。此岸の意味は「こちら側の岸」。です。彼岸は「あちら側の岸」。つまりは死者が渡るとされる
三途(さんず)の川の話です。年に二度あるお彼岸の意味も、だんだんと見えてきたのではないでしょうか。彼方は「かなた」と読み、「かの有名な」は「彼の有名な」です。彼とは「あの」「あちら」であって、彼氏は「あなたにとってのあの人」という意味になりますね。
では、まとめです。
私のお伝えしたいことは、この図に表れています。漢字に含まれた規則性や仕組み。
つまり「コード(code)」を意識しよう、ということ。漢字のコードは「意符」と「音符」です。
(ちなみに「コード(cord)」ではないですよ。これでは電気のコードになってしまいます…
プログラムや暗号、もしくは「ドレス・コード」などのコードです)
木が地中で根を張りめぐらせる、その様子と「漢字のコードのつながり」を比喩で表しました。
今回はその一端をご紹介しましたが、「高度な文章を読む必要に迫られる受験生」にこそ
意識的に「部首」などに注目してほしいですね。例えば「同音異義」の文字などは、
「音符が同じで意符が異なる字」と定義することもできます。部首の知識が同音異義の知識に
秩序をもたらしてくれるのです。
さらには、「思考言語の語彙(ごい)力はしっかりと蓄えるべきだ」という思いがあります。
中学受験は最終的なゴールではありません。中学からは「英語」が本格的に加わります。
私は「思考言語が英語ならば、漢字の勉強はそこまでしなくてもよい」と考えます。ですが、
「日本語で思考する」のであれば、どの学問に臨むときにも語彙力は学習効果に直結します。
語彙力は、まさに思考の結実に必要な「根」であると考えます。なんでも片っ端からネットで
調べているようでは、解決策やアイデアなど「AIに対抗できる武器」が育ちません。
中学以降はさらに難しい漢字を学びますが、中学だろうと高校だろうと学ぶ漢字に
「まったくの新規の文字」は少なく、大半が「小学校で学んだ漢字の組み合わせ」なのですよ。
もう一度申し上げます。「漢字の中の漢字に気づくこと」
この作業をせずに、力づくで漢字を覚えては忘れ…を繰り返しているともったいないです。
初めに確認しましたが、今まさに【夏期講習】がはじまる時期です。
植物が目に見えない地中でしっかりすくすく根を張りめぐらせるように、漢字学習も「この夏が
いちばん勉強した!」っていうくらいに積極的に取り組んでください。収穫の秋に向けて…
「日日是学日!」(⇒ 日々、これ学び!)」