こんにちは。久しぶりに理科の記事を書いてみる永田です。
2025年度入試も終わり、新6年生が新たに受験学年となりました。今回は(おそらく)どこよりも早い2026年度の理科時事問題の解説をしたいと思います。
…まだ2025年が1割ちょっとしか終わってないのに何を言っているのかって?大丈夫、未来予測はできなくても、起こるとわかっていることなら解説できます。
ということで今回解説するのは、「2025年注目の天体現象3選」です。実際にその年に観察できた現象を基に問題を出してくる学校は多くありますので、関連した問題が出てくるかもしれないと思って見ていただければ幸いです。
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地球と火星の最接近 2025年1月12日
最初からもう過ぎてしまったものになりますが、今年の1月12日は地球と火星が最接近した日でした。地球と火星の公転周期から計算すると、およそ780日ごとに地球と火星は最接近しています(受験生は本番までに計算手順を理解しておくように!)。ですが、地球や火星の公転軌道がきれいな円からすこしゆがんだ楕円になっているせいで、今回の最接近ではそこまで地球と火星の距離は近くなりませんでした。その距離9608万km(地球の中心から火星の中心まで)。だいたい太陽までの3分の2くらいの距離でした。次回の2027年2月20日の最接近ではさらに遠ざかり1億142万kmになり、2035年9月11日の最接近では5691万kmまで近づきます。
さらに、13日から15日にかけて、月と火星が近い位置に見えました。それぞれの動き方の違いによって13日夜と14日夜で位置関係が変わっていることがわかります。最接近してきたことで火星はかなり明るく見え、シリウスとほぼ同じ明るさになりました。
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金星の最大光度 2025年2月15日
こちらもピークを過ぎてしまったものにはなりますが、現在金星が非常に明るく見えるようになっています。現在の金星は日の入り1時間後くらいの時間で、西の空で「宵の明星」として見えています。2月15日にはマイナス4.9等級と非常に明るくなりました。最大光度になるときの太陽・金星・地球の位置関係は、東西の最大離角より地球に近づいた位置で、金星は三日月型に見えています。この後の金星は、太陽と地球の間に入る内合を迎えた後、明け方に見える「明けの明星」へと変化していきます。
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月食が2回 2025年3月14日と2025年9月8日
ようやくこの先起こるものが出てきました。2025年には皆既月食が2回起き、どちらも日本で見られます(なお、日食も2回起きますが、どちらも日本で見られないため省略)。ただし、1回目の3月14日の月食は、始まる時間が早すぎるため、日本で月が上ってきたときには皆既月食の状態は過ぎてしまっており、部分月食の状態で月が上ってきます。月出帯食(げつしゅつたいしょく)というらしいです。2回目の9月8日は食の始めから終わりまで見られますが、見られる時間が遅いのが残念なところ(欠け始めが深夜1時半ごろです…)。
このような天体現象が2025年注目のものになります。実際に観測できそうなものがほぼないのが残念ですが…。下にこれらの現象を基にした練習問題を用意してみました。ぜひ挑戦してみてほしいのですが、正直なところ難易度はかなり高めだと思うので、今わからなかったからといってがっかりする必要はありません。秋になったころに見直して考えられるようになっていればokです。
それでは、Have a good science !!
練習問題
(1)地球は365日、火星は687日周期で太陽の周りを公転しています。地球と火星の最接近から、次の最接近までの間が約何日になるか、小数点以下を四捨五入して整数で求めなさい。
(2)地球と火星が最接近したときの地球と火星の距離は、最接近する場所によって変わります。一番距離が短いときの最接近では、一番距離が長いときと比べて地球と火星の距離が約半分になります。この地球と火星の距離だけを使って、最接近したときの火星の明るさを考えます。一番距離が長いときと短いときで、どちらが何倍明るいですか。
(3)惑星は恒星の中を移動するように見えますが、1日ではそこまで大きく位置関係は変化しません。それに対して、月と惑星や恒星の位置関係は、1日で大きく変わります。その理由を答えなさい。
(4)オリオン座のリゲルは青白く見える星で、地球から見た明るさは0.1等級です。2月15日の金星(マイナス4.9等級)はリゲルの何倍の明るさですか。
(5)皆既月食が見られるときの月の形を答えなさい。
(6)3月14日の月食は、日本で月が上ってきたときには皆既月食の状態は過ぎてしまっています。この月食を欠け始めから観察するためには、日本からどちらの方角に移動すればよいですか。東西南北で答えなさい。
(7)皆既月食のときに月はどのように見えるか、理由とともに答えなさい。
(8)日食と月食を比べると、日食のほうが起こる回数は多いですが、同じ場所で観察できる回数は月食のほうが多いです。理由を答えなさい。
解答・解説
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「1日に公転する角度は…」と考えてもかまいませんが、計算を楽にするため、「1日あたり何周するか」と考えましょう。地球は1日で
周、火星は1日で
周します。あとは旅人算の要領で、「地球が火星より1周多く公転するのに何日かかるか」を計算すれば終わりです。
1÷(-
) =778.74・・・ より779日
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距離が遠いと同じ量の光が広い範囲に散らばるので暗くなります。明るさは同じ量の光を受ける面積に反比例するので、距離が近い方が4倍明るいv
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恒星はほぼ動かないため、1日での見え方の変化はほぼ地球の公転によるものです。そのため、同じ場所で同じ時刻に観測すると1日で約1度ずつ西へ動いていきます。惑星はそれぞれ太陽の周りを公転しており、火星であれば1日に約0.5度、金星であれば1日に約1.6度ずつ位置を変えていきます。そのため、恒星と惑星は1日での動き方が異なり、さらに地球との位置関係によって複雑に見え方を変えます(惑う星=惑星の語源ですね)。これに対して、月は公転周期が27.3日なので、1日に約13.2度と非常に大きく動きます。ということで理由は、月が1日に公転する角度が、地球や他の惑星が1日に公転する角度と比べて非常に大きいから
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リゲル(0.1等級)と金星(マイナス4.9等級)の間にはちょうど5等級の違いがあります。等級(星の明るさ)は、数字が5小さくなる(6等級から1等級)と明るさが100倍になるように定められているので、100倍
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月食は、太陽―地球―月の順にまっすぐに並ぶときに見られるもので、このときの月の形は満月です。
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東に移動すると月の出の時刻が速くなるので、月食を始めから観測できるようになります。ハワイあたりまで移動すると、月食を欠け始めから観測できます。
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理由込みで頻出なので覚えておきましょう。地球の大気によって太陽光が屈折して、赤い光が月に届くため、赤銅色に見える。
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日食は見られる場所が月の影に入った場所に限られるのに対して、月食は起きている間に月が見られる場所であればどこでも見られるから。地球の半分近くで見られる月食は観察しやすい現象です。