こんにちは。実験大好き講師の永田です。
前回は、ぶどうジュースを使って色の変化を見てみました。身近なものでもうまく使えば実験に使えるということがわかっていただけたかと思います。
野菜や果物には色のついているものがたくさんあります。他の色のものを使うとどんなことができるかが気になりますね。
今回は、トマトジュースについて調べてみましょう。
実験
使うもの:
・トマトジュース 少量
・ドリップコーヒーフィルター いくつか
・透明なコップ いくつか
・消毒用アルコール 少量
・(あれば)懐中電灯やレーザーポインター等の光源
手順:
(1)まずは、前回と同じように水でうすめて見てみましょう。
左がトマトジュースをうすめたもの、右が前回と同じぶどうジュースをうすめたものです。写真では伝わりにくいですが、この時点で大きな違いがあります。
この写真がぶどうジュースの方にレーザーポインターの光を当ててみた様子です。後ろの壁に光が当たっていますね。一方…
トマトジュースだとこうなります。後ろの壁に光が当たってない!
ぜひご自身の眼で確かめていただきたいのですが、ぶどうジュースは向こうが透けて見えるのに対して、トマトジュースはにごって向こうが見えなくなります。つまり、・・・
ぶどうジュースは水溶液といえるのに対して、トマトジュースは水溶液ではないのです。
(2)さて、にごっているということは、そのにごりを取り除くことができるのではないか?ということで、
ドリップコーヒーフィルターを使ってろ過してみました(入れたのはうすめていないトマトジュースです)。ですが・・・
時間がかかった(40分ほど)にもかかわらず、透明な液体にすることはできませんでした。
光を当てるとこのとおり。やはり壁には光が届いていません。今回使ったのは不織布を使ったフィルターなのですが、不織布では目が粗すぎるようです。
(ちなみにこの後、紙製のコーヒーフィルターでも試してみましたが、やはり液体のほうはにごってしまいました。)
フィルターに残ったものはこのようになりました。まだ水分が少し残ってはいますが、赤い固体が取れました。
(3)さて、この固体の中から赤い色素を取り出すことはできるでしょうか?ろ過して残るということは、水には溶けにくいということ。しかし、溶かすのに使えるのは水だけではありません。手元にあったアルコールをフィルターに入れて、何か溶かすことができないか見てみました。
黄色!?
フィルターの中身はこのとおり。鮮やかな赤色の固体が残りました。
ちなみににおいを確認したところ、最初にろ過した液体からはトマトジュースのようなにおいがしましたが、アルコールを入れてろ過した黄色い液体からはアルコールのにおいだけ、残った固体からはほとんどにおいがしませんでした。
解説
トマトの赤色の正体はリコピンという色素で、水にはほぼ溶けません。一方、トマトの中にはβ‐カロテンという黄色の色素も含まれ、これがアルコールを加えたときに溶けて出てきたものと思われます。こちらも水にはほぼ溶けないうえ、実はかなり似たつくりをしているのですが、わずかな違いでアルコールに溶けるか溶けないかが変わったようです。(ちなみに、どちらも酸性やアルカリ性にしても色は変化しないため、前回のように酸性のものやアルカリ性のものを加えても面白いことは起きません。)また、においの成分は特定の物質ということではないようですが、水にある程度溶けるものであるため、ろ過した液体のほうに入りました。
今回はろ過で完全に透明な液体を作れなかったり、赤い色素を取り出せなかったり、ちょっと消化不良な部分が残ってしまいました。改善方法は探していく予定なので、見つかったらまた報告したいと思います。
まだまだ、色のついた食品はたくさんあります。次回はあの食品?
それでは皆様、Have a good science.