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投稿日:2024年07月15日

テーマ: 理科

家庭でできる! 中学受験で出てくる簡単実験講座 その5 ~なじみやすさの違い編~

こんにちは。実験大好き講師の永田です。

まもなく夏休み。受験生にとっては講習が忙しくなる季節が始まります。
今回は息抜きにさっとできそうな、簡単な、それでいて見た目がわかりやすく、さらに実際に中学入試の問題になってもいる実験を紹介します。
実験の名前は「ペーパークロマトグラフィー」。水がしみこみやすい紙とインクが何種類かあれば試せるお手軽な実験です。

 

まずは、ある程度丈夫で水がしみこみやすい紙を用意します。今回はたまたま(?)以前買ったろ紙が手元にあったためそれを使いました。普通に買いやすいものとしては、コーヒーフィルター(無色のもの)がおすすめです。用意した紙を細長い長方形に切り、縦長になるように置いて、手前から1cmくらいの位置に鉛筆で線を引いておきます。その線の上に、調べたいもので点を描きます。今回は、油性ペンと水性ペンを用意しました。準備ができたものが右の写真になります。

実験の様子

 

次に、水を浅く入れた容器を用意して、先ほどの紙の下部を水につけます。このとき、水面が鉛筆の線より下になるように注意しましょう。そのまま置いておくと、水が紙にしみこんで(毛細管現象)、徐々にぬれている部分が上に広がっていきます。

実験の様子

 

しばらく置いて取り出した様子がこちら。左の点はほとんど様子が変わっていないのに対して、右の点は上に大きく伸びています。

実験の様子

 

突然ですがここで問題です。どちらが水性ペンで描いた点でしょうか。

答えは右側。水性ペンで描いたものは水でぬれるとにじみやすいということから考えればわかるでしょう。
ここで、この「にじむ」という現象について考えてみましょう。紙にペンで何かを描くと、紙の上にインクが乗っかっているような状態になります。
この紙の上を水が流れるとどうなるでしょうか。油性ペンのインクの成分は「油性」という名前のとおり、油の仲間です。「水と油」という言葉があるように、これらは普通混ざり合わないもの。ですので、油性ペンのインクからしてみれば、紙の上を水が流れていようが関係なし、紙の方がくっつきやすいのでまったく動かないことになります。
一方水性ペンのインクは、水になじみやすい性質を持っています。そのため紙の上を水が流れると、紙にくっついているだけでなく、水にもなじんで少しずつ流されていきます。これが、描いたものがにじんだり、実験で点が上に伸びたりする原因になります。

 

では、水よりも油となじみやすい液体を使うとどうなるでしょうか。水の代わりに消毒用アルコール(70%)を使ってみました。先ほどと同様に左に油性ペン、右に水性ペンで点を描いたのですが、今回は水性ペンのインクよりも油性ペンのインクの方が大きく上に移動しています。アルコールは水と油の中間のような性質をもつ液体なので、紙よりも油性インクになじみやすいのでしょう。油性ペンでの落書きを消したければ、ぜひアルコールをお試しあれ。

実験の様子

 

最後に、同じ水性の中で色による違いがあるのかを見てみました。左から順に緑、赤、青の3色(光の三原色ですね)で点を描いて、水につけてみました。

実験の様子

 

ちょっと斜めになってはいますが、青が少し広がりやすいかな…というように見えますね。もっとくっきりと分かれてくれればさらにやりたいことがあったのですが残念。

実験の様子

ちなみに、この方法とそっくりなものが、最先端の化学の実験室でも使われています(紙を使うことは少ないですが)。家庭で簡単に試せるものも本格的な研究で使われるものも原理は同じ。ただ使える薬品や機材の幅が広がるだけなのです。

ということで今回はペーパークロマトグラフィーの紹介でした。開成中学で2019年に、京都の洛星中学で2024年になどと、難関校をはじめ実験の出題が好きな学校で時々見かける題材なので、まだ時間のあるこの時期に実際に触れてみるのも良いかもしれません。

それでは皆様、Have a good science.

理科ドクター