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投稿日:2016年09月18日

テーマ: 理科

2017年入試に出る!地震のしくみ②

大木快です!

受験ドクターで算数・理科の授業を担当しています。

小6生の皆さんは、9月に入るといろいろなテストがあり、過去問もやり始めている時期ではないかと思います。

習った事はうまく使えていますか?

知ってるんだけど、うまく答えが出せない、とか…そうなんです。たとえば「西高東低」は出てくるんだけど、衛星写真になると選べない…こういったケース、多くあります。ここからの学習では、実戦でどのように聞かれるのか、とセットで知識を入れ直しましょう。点数が上がってきますよ!

さて今回は、地震の波の「伝わり方」を扱います。

まずは前回のおさらい。

地震波には、

・P波 縦波=進行方向の振動を伝える

・S波 横波=進行方向に垂直な振動を伝える

の2種類があり、P波のほうがS波よりも伝わる速さが大きく、ともにジェット機より速い

というところまでお話ししました。

その速さですが…

P波:5~7km/秒

S波:3~4km/秒

という、とてつもない速さで伝わります。S波の速さはジェット機の約10倍ということになります。

さて、2つの波の速さが違うということは…

到着するまでの時間が違う

ってことですね! 「時間差攻撃」といってもよいでしょう。

たとえて言うなら、

1.打ち上げられた花火が光ってから2,3秒後に「ドーン」という音が聞こえる。

2.稲光が見えてから、10秒くらいして、「ドカーン」という雷の音が聞こえる。

3.駅伝を沿道で観戦していると、先頭が通過してからしばらくして、最後尾が通過する。

といったところでしょうか。どれもよいたとえなのですが(笑)、今回は、うーん、3番が近いかな、と思いますね。1番と2番は経験上わかりやすいのですが、どうしても光は瞬時に伝わるものとして扱ってしまいますからね。

それに比べると、3番は、「足の速いP君と、それより少し遅いS君の競走」

にたとえることで「時間差」をとらえやすくなるんです。一般にスタート直後は集団で駆け抜けますが、次第に、前後の距離が長くなり、集団が分かれ、…時間差が大きくなっていきますよね。

「時間差攻撃」が教えてくれるもの

それではここから、2つの波が伝わっていく様子を、例題を用いて説明していきます。子ども向けに強引なストーリーに仕立てています。P=のび太、S=ジャイアン、と思ってお読みください。

「大変だ、S君が怒っている!」

逃げ足の速いP君は、猛ダッシュで逃げています。逃走先のすべての町でみんなに警告しています。

それを聞いた町の人々は、「あのS君が怒っている…」と恐れおののき、

ブルブルと震え始めました。怒っているSが来るだけで、大きなとばっちりを受けるからです。

するとしばらくして、Sが「おい、Pのやつ、どこに逃げたんだぁ」とものすごい剣幕でやってきました。町は激しく動揺しました

それでは問題です。

問題1  P、Sの速さをそれぞれ7km/秒、4km/秒として、2人の動く様子をグラフにしなさい。

2人の動く様子は、以下のようなグラフで表すことができます。

地震1

問題2  スタート地点から35km離れたA地点で、人々がブルブルと震えていた時間の長さを求めなさい。

グラフにA地点をかくと次のようになります。

地震2

2つの交点があらわすものは、「Pの到着」と「Sの到着」ですね。つまり

地震3

ということになります。したがって、かかった時間は

P君… 35÷7=5(秒)、S君… 35÷4=8.75(秒)となり、

時間差の3.75秒が、ブルブルと震えていた時間、ということになります。この2秒のことを

初期微動継続時間(P-S時間)

といいます。続いて

問題3  スタート地点から70km離れたB地点では、人々がブルブルと震えていた時間の長さは、A地点の何倍になるでしょうか。

70÷4-70÷7=7.5(秒)ですから、A地点の2倍となります。

グラフで確認しましょう。

地震4

距離が2倍になっているので、計算しなくても「時間差も2倍」と、見て取れますね。

初期微動継続時間は、震源からの距離に比例する

ということがわかりましたね。

ここで、地震計の波形を紹介しましょう。中学入試にはおもりにペンがついたものが良く出されますが、実際にはコイルのついたおもりが磁石の中を揺れることで発生する電流を波形にしたものが主流です。

地震5

P波は伝わる速度は速いですがエネルギーは小さいので、到着しても大きく揺れることはありません。最初の揺れが小刻みなのはこのためです。これに対して、S波は大きな揺れを伝えますから、あるところから大きな揺れが起こっているのがわかります。これが問題文中の「激しく動揺」する部分にあたるわけです。

地震6

アの揺れを初期微動、イの揺れを主要動といいます。

そしてアの時間の長さが

初期微動継続時間(P-S時間)

でした。

ここであることが分かりましたよ。

初期微動継続時間が分かれば、震源からの距離がわかる

問題4  C地点では、人々がブルブルと震えていた時間の長さは15秒だったといいます。C地点はスタート地点からどれだけはなれていたでしょうか。

問題2より、35kmで時間差=3.75秒ですから、これと比べて時間は4倍です。

よって距離も5倍。35×4=140km と求めることができました。

実際に地震を感じたとき、「あ、地震だ」と思った瞬間から「大きな揺れ」になるまでの時間がおよそ何秒くらいか、心の中でカウントして覚えておきましょう。そして、カウントした初期微動継続時間(P-S時間)から、上のような計算式で震源までの距離を予想できたら、気象庁のホームページで実際の距離を確認してみると面白いと思いますよ。

さて第2回のまとめです。

P波到着…初期微動の始まり

S波到着…主要動の始まり

初期微動継続時間(P-S時間)…震源からの距離に比例する

いかがでしたか。心の中で時間をカウントする前に、安全確保をお忘れなく!

理科ドクター