皆様こんにちは。算数・理科担当の大木快です。いよいよ2月がやってきます。
空気が乾燥する日々。
ドアノブにさわると「バチッ」と火花が飛びます。火花の正体は
静電気。
静電気と言えば、雷も同じ静電気です。
たまった静電気が放電されて、バチッ とか ドカーン とかいうわけです。
今回は静電気をため込むことができる「コンデンサー」に手回し発電機をつないで行う実験に関する問題を扱います。
平成23年度の学習指導要領で、小学6年生の教科書にコンデンサーが登場しました。
手回し発電機をコンデンサーにつないでハンドルを回すと、電流が流れ、コンデンサーに電気が蓄えられます。
この実験に関して、作問者が「これを聞かずにはいられない」というポイントがあります。
いうなれば
お約束ポイント。
それでは見てみましょう。
実験で、ハンドルを回し終わったあと、ハンドルから手をはなし、発電機とコンデンサーをつないだままにしておくと、どうなりますか。正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 発電機のハンドルが、手で回したときと同じ向きに回りはじめる。
イ 発電機のハンドルが、手で回したときと反対向きに回りはじめる。
ウ 発電機のハンドルは、回らない。
20回回したあと手を離すとハンドルは(ア 同じ向きに回る イ すぐに止まる)
実験で、ハンドルを回す速さを一定にしたあとハンドルから手をはなした。ハンドルはその後のようになりますか。
A すぐに止まる
B 回していた向きにしばらく回り続け、やがて止まる
C 回していた向きと逆の向きにしばらく回り続け、やがて止まる
どうでしょう。3題とも同じポイントをきいていますね。
正解は
例題1 ア
例題2 ア
例題3 B
でした。
ではなぜこれがお約束ポイントになるのでしょう。
キーワードは
意外性
です。
というのも、ぐるぐる回して手を離すと、逆向きに回り始めるものが、身近にありますよね。
そうです。ゼンマイです。
ゼンマイはねじを回して板状の金属を曲げることでエネルギーが蓄積されます(これは弾性エネルギーといいます)。ゴムをねじってプロペラが回る飛行機も、弾性エネルギーと言えるでしょう。ゼンマイやプロペラを手で回して蓄えたエネルギーが放出されると、
反対の向きに回転
しましたね!!
変形されたゴムや金属が元のカタチに戻ろうとするからで(これを復元力といいます)、私たちには、この反対に回るという常識が備わっているのかも知れません。ですから、手回し発電機のハンドルが反対方向に回らないことに、違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。この意外性こそが、この問題をお約束ポイントにしていると言えるでしょう。
ただ、イマドキの子供たちは、そもそもゼンマイやプロペラ飛行機とは無縁で、「余計な」常識は持っていなくて、「意外と」違和感ゼロということもあるかもしれません!
ところで、手回し発電機はなぜハンドルを回した向きと同じ向きに回るのでしょうか。
問題で問われるのは「結果」のみ。
それでは、結果を正確に暗記すること要求しているのかと言うと、それもおそらく違うでしょう。
「なんで反対に回らないんだろう…このような不思議な現象を探求したいという心をもって入ってきてください」というあたたかいメッセージのように思えます。
さて、ここからは興味がある人、スッキリしたい人向けの内容になります。直接テストで問われませんが、少し踏み込んで原理に近づいてみませんか。
ポイントは2つ
②蓄電と放電で逆向きの電流が流れる
以上の2点は、静電気やフレミングの法則を使わずに、説明でき、十分理解することができます。
まず図を見てください。手回し発電機によって電流が生じ、コンデンサーの左側の電極に+(プラス)の電気をためます。
充電をやめると、たまっていた電気が放出されます。この時、充電のときとは反対の向きに電流が流れていることがわかります。
最後に、以下の練習問題でイメージを確認してみて下さい。
直流モーターは、直流電流を流して、電機子が回転する。
手回し発電機は、その逆で、ハンドルを回すことで、電流を発生させる。
これを電磁誘導といい、流れる電流を誘導電流という。
問1 誘導電流は、手回し発電機のハンドルを回すのを(助ける・妨げる)向きに流れる。
問2 コンデンサーに蓄えられた電気が放電されると、誘導電流と(同じ向き・反対の向き)に電流が流れる。
問3 この電流によって手回し発電機のハンドルは手で回したのと(同じ向きに 反対の向きに)回転する。
解答 1妨げる 2反対の向き 3同じ向き
さて、受験生の皆さんにとっては、今が長期間蓄えてきたエネルギーを一気に放出するときです。
力を「出し切った感」をもって試験を終えられることを心から願っています。