皆様こんにちは。大木快です。
前回の続編として、フェーン現象を一段掘り下げて考えます。
まずは前回の問題です。
フェーン現象は、空気のかたまりが山を上昇し、雨を降らせた後、山を下ることでおこります。空気の温度は、100m上昇するごとに、雲がないところでは1℃、雲があるところでは0.5℃ずつ下がります。
A地点で32℃の空気が、上図のように標高2000mの山を越え、B地点まで移動しました。標高1000mから山頂に上るまでの間は雲があり、山頂までは強い雨が降っていました。
B地点の温度は何℃になりますか。A地点、B地点ともに標高0mとして考えなさい。(2016 早大学院)
今回は、次の問いを用意しました。
フェーン現象に関する以下の問いに対する、こたえの空欄を埋めなさい。
問1 空気のかたまりが上昇すると、温度が下がるのはなぜですか。
上昇すると、気圧が低くなると空気のかたまりが( )するから
問2 雲があるところでは上昇に伴う温度低下が緩やかになるのはなぜですか。
水蒸気が水に変わるときに、( )から
さあ、表面的な理解では太刀打ちできない問いになりました。
まず問1の空欄は、( 膨張 )するから
ここで押さえたいことは、空気を圧縮・膨張させたときの温度変化です。
圧力が下がると、空気は膨張します。山登りをするとポテトチップの袋がパンパンに膨らむ例は知識問題頻出。
膨張すると、空気の温度は下がるのです。カセットコンロのガスボンベは、ガスを使うと表面が冷たくなっていますが、これも、ガスが外に出ることで膨張していることが原因です。
逆に空気を圧縮すると、温度が上がります。自転車の空気入れが高温になる例も、知識問題として出されます。
このことを応用しているのがディーゼルエンジンです。
ガソリンエンジンは燃料を含む気体に点火プラグで火花を出して気体を爆発させているのですが、これに対して、ディーゼルエンジンでは気体を「圧縮するだけ」で爆発させています。それだけ高温になるということなんですね。
続いて問2を考えます。
問2の空欄は、( 熱を放出する )から
問2で問われているのは、水の状態変化と熱の出入りについてです。学習が進んでいれば、以下のことは押さえられていると思います。
②水が蒸発する(=水蒸気に変わる)とき、まわりの熱を奪う
このうち②は、蒸散作用、打ち水の効果などで頻出の知識ですね。気化熱という言葉も押さえられているでしょう。
さて、一歩踏み込んでこのことを逆にたどると、
水蒸気が熱を放出して、水になる
ことが理解できますね。まとめると、
②水蒸気→水 … 放熱
放熱と吸熱は表裏一体なのに、なぜか通常の学習だと「まわりの熱を奪う」方にしか目がいかない、ということになってしまうのです。
また、台風に関する知識として、
台風が上陸すると、水蒸気の供給が絶たれるので、勢力が弱まる
ということも現象としては学びますが、上のように一歩踏み込んで理解しておくと、放熱作用が弱まって勢力が衰えるんだな、と簡単に理解できるわけです。
このように本質に踏み込む勉強法のメリットは
見たことない問題に遭遇しても、原理が分かっていれば応用できます。
②複数分野に関わる原理を押さえることで、相乗的に理解が深まる
③現象の裏側にある仕組みに関心が向くようになる
なぜそうなるのか、という疑問は、理科を学ぶ原点です。興味が深まり、仕組みが分かると、当然ながら勉強が楽しくなります。
ただ、学習者の状況によっては時間がかかり、いちいち踏み込むことがデメリットになる場合もありますし、すべての項目をじっくりやるのは現実的ではありません。適切な指導の元で必要に応じて展開するのが理想といえるでしょう。
効率と深さを両立できれば、理科は得点源になりますよ。
それではまた。
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