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投稿日:2022年08月18日

テーマ: 理科

引っ掛け問題考~正解率の低い問題の特徴~

入試でも、模試でも、正解率の異様に低い問題を目にすることがあります。
必ずしも出題者が引っ掛けようとしていない問題でも、ひっかけ要素というものがあって意外なほど正解率が下がるのです。
なぜ、ヒトは引っ掛かるのでしょうか。

良夫:トマトがおいしい季節になったね。
父:プチトマトは好きか?
良夫:何それ、ミニトマトじゃない?
父:あ、ああ。そうともいうな…
…今日はミニトマトの問題をやってみよう。

問題 (洗足学園中)
ミニトマトは1つの花の中で受粉することができますが、人工的に別の品種を受粉させて雑種を作ることもできます。雑種は親の世代よりも優れた性質をもつことがあります。
①  品種Aに品種Bをかけ合わせて雑種を作るために必要な作業として適当なものを次よりすべて選び、記号で答えなさい。
ア.品種Aの花が開く前のつぼみの中からめしべとおしべをすべて取りのぞく。
イ.品種Aの花が開く前のつぼみの中からめしべを取りのぞく。
ウ.品種Aの花が開く前のつぼみの中からおしべをすべて取りのぞく。
エ.品種Aのめしべに品種Bの花粉をつける。
オ.品種Aのおしべに品種Bの花粉をつける。
カ.品種Aのめしべに品種Bのめしべをつける。

父:どうだろう。
良夫:品種Aが自家受粉しないようにすることと、品種Bの花粉を品種Aのめしべにつけることが条件だね。だから、答えはウとエだと思う。
父:見事だ。正解。
良夫:アサガオで自家受粉させないための、つぼみのうちにおしべを取り除くという操はテストの問題でよく出てくるよ。
それに、選択肢はいっぱいあるけど、ハズレの選択肢があまりにもわかりやすいから、意外と簡単だと思う。
父:それじゃあ、続きの問題をどうぞ。

② 赤色のトマトに黄色のトマトをかけ合わせるとオレンジ色のトマトを作ることができると知った園子さんは、赤色のトマトの株に咲いたすべての花に黄色のトマトをかけ合わせようと思い、①の作業をしました。その後、この株にできるトマトの色として適当なものを次より1つ選び、記号で答えなさい。
ア.すべてオレンジ色
イ.すべて赤
ウ.すべて黄色
エ.オレンジ色と赤色
オ.オレンジ色と黄色
カ.赤色と黄色
キ.オレンジ色と赤色と黄色

良夫:「赤色のトマトに黄色のトマトをかけ合わせるとオレンジ色のトマトを作ることができる」ってあるから、アの「すべてオレンジ色」しか考えられないなあ。すべての花に作業してるし。
父:ファイナルアンサー?
良夫:こんな単純な設定で、こんなに選択肢があるなんて変な感じだけど、さっきの問題もそうだったし、惑わされずにアをファイナルアンサーにするよ。
父:……
良夫:……
父:残、念。
良夫:おかしいと思って何度も問題文を読み返したけど、それ以外に手掛かりがなかったから、ぼくはお手上げです。ギブアップ!
父:「赤色のトマトに黄色のトマトをかけ合わせるとオレンジ色のトマトを作ることができる」とあったね。
良夫:うん。
父:かけ合わせるって、何するの?
良夫:「人工的に別の品種を受粉させて雑種を作ることもできます」ってあるから、そういうことなんじゃ…
父:そういうことだな。その後なんて書いてあった?
良夫:「雑種は親の世代よりも優れた性質をもつことがあります」って書いてある。
父:親の世代よりも、ってことはできた雑種って何者?
良夫:そう考えると子ということになるね。
父:じゃあオレンジになるのは赤いトマトの…
二人:赤いトマトの子!!
良夫:ガビーン! じゃあ、赤いトマトの子は、できたトマトではなくて、できたトマトの種子ってことか!!
父:それで、その種子が成長したら…
良夫:オレンジの実をつける!
父:親になっている実の色は?
良夫:赤いトマトってあるから、赤だ!
もっと前まで読んでいれば、手掛かりがあったんだね!
父:時すでに遅し。この勝負、出題者の勝ち。
良夫:これだけうまくだまされると、かえって爽快だ。これに懲りずにがんばるぞ!

この問題の出題意図は、引っ掛け問題というよりは、正しく情報をとることを求めているのだと思います。
赤いトマト=親という作問者にとっては自然な感覚は、遺伝の勉強をしていない小学生にとっては存在しない感覚です。
このことが結果的に見事な引っ掛け問題を生んでいるのですが、このほかにもいくつか理由があります。
・前の問題がやさしい
前の問題は易しいだけでなく、見慣れたパターン問題なので、選択肢が多くても、楽に切り抜けられました。これで勢いづくことで、次の問題で本当に必要なポイントに対する注意をそらされることになりました。
・核心部分が離れたところにある。
良夫は怪しいと思って問題を読み直しています。「あまりにもそのまんまなので、この問い方は不自然」と感じた良夫は素晴らしい感覚の持ち主ですが、こんな離れたところまでは見ていませんでした。
探すものが遠くにあるほど、正解率は低下します。
以上、引っ掛かりやすい問題の特徴を実感していただけたでしょうか。
続編にご期待ください。
それではまた。

理科ドクター