理科の学習は、覚えることが多くて大変ですね。
しかし、先人たちが発見してくれたことを私たちは覚えるだけでよい、と考えると得した気分になりませんか。
今回は科学の成り立ちや背景をテーマにした問題を紹介します。
父:科学の発展に貢献した人をどのくらい知っているか。
良夫:ニュートン、アインシュタイン、ガリレオ…
父:地動説を唱えたのは?
良夫:コペルニクス。
父:地動説と天動説の違いは?
良夫:天動説は、地球の周りを全ての天体が回る、という考え方で、地動説は地球が太陽の周りを回る、という考え方かな。
父:今回はこの問題を見ていこう。
【問題】 (2025年 慶應中等部)
皆さんは物が燃えるときに( ア )という物質が必要なことは知っていますか?昔はそんなことが知られていなくて、17世紀から18世紀にかけてのヨーロッパでは、学者の間で「フロギストン説」と呼ばれる現在では否定されている考え方が提唱され、支持されてきました。「フロギストン説」の考え方を要約すると、次のようになります。
<燃える性質がある物質にはフロギストンが含まれていて、燃えるときにそれが放出される。>
良夫:フロギストンか。そんな説があったんだね。
父:では設問です。
フロギストン説に関わる次の問いに答えなさい。
問題文の( ア )当てはまる物質の名前を次の中から選び、番号で答えなさい。
1食塩
2酸素
3水素
4二酸化炭素
5水
(2)「フロギストン説」が実際の現象をうまく説明できないことの一つに、物質が燃えた時の重さの変化があります。次の中から、燃えたときに、燃える前に比べて重くなるものを一つ選び、番号で答えなさい。
1硫黄
2砂糖
3スチールウール
4発泡スチロール
5木炭
(3)「フロギストン説」では、金属がさびるという現象は金属からフロギストンがゆっくりと抜けていく現象ととらえる考え方がありました。この考え方には、現在でも正しいとされている考え方に一致する要素もあります。次1~4の中から明らかに誤りであるといえるものを1つ選び、番号で答えなさい。
1燃えやすい金属ほどさびやすい。
2金属が燃えるときとさびるときは同じ種類の物質が金属と反応している。
3さびた金属は燃えた後の金属と同様に、燃えることはない。
4金属が燃えたときもさびたときも、元よりも軽くなる。
良夫:金属が燃えたりさびたりするのは、酸素と結びつくってことだよね。(1)は2の酸素、(2)は3のスチールウール。
(3)は、金属が燃えたり錆びたりすると、重くなるんだから、4が答えだね。
父:うむ。続きを考えるぞ。
(4)金は燃えることもさびることもない金属です。このことから「フロギストン説」では金をどのような物質と考えていたでしょうか。20字以内で説明しなさい。
良夫:金って、金メダルの金だよね。美しい輝きを持ち、高価な金属…だけど、
燃えたりさびたりしないことから考えろってあるからね。
父:いいぞ。
良夫:リード文中に「燃える性質がある物質にはフロギストンが含まれていて」とあるから、
燃えることもさびることもない金は、
「フロギストンを全く含まない物質」
でどうでしょうか。
父:完璧だ。
(5)亜鉛やアルミニウムなどの金属を塩酸やうすい硫酸に入れると気体が発生しますが、この気体は( イ )性質があるため、フロギストンの正体だとする考え方がありました。に当てはまる性質を次の中から選び、番号で答えなさい。
1よく燃える
2ほかの物質が燃えるのを助ける
3非常に水に非常によく溶ける
4空気に比べてとても軽い
良夫:イは水素だね。水素だから、4かな?
父:……残念。
良夫:え。
父:問題文を読み直そうか。
良夫:イの性質があるため、フロギストンの正体と考えた、とある。
リード文にはフロギストンが燃えるときに放出される、とあるから…
そうか、1があったか!
父:4は事実としては正しいけど、答えとしてはアウトなんだ。
良夫:問題文をよく読めば答えられたね。
父:では最後の設問だ。
(6)「フロギストン説」と同様に現代では誤りとされているが、正しいと信じられていた時代があった学説を次の中から選んで、番号で答えなさい。
1宇宙起源説(生命の起源の物質は宇宙から来たと考える説)
2大陸移動説(地球の表面で大陸が移動しているという説)
3天動説(地球が静止していてほかの天体が運動していると考える説)
4突然変異説(生物の進化は生物の形質の突然変異が原動力となっていると考える説)
良夫:よくわからないものもあるけど、3の天動説であることはわかるね。
父:その通り。
プトレマイオスが唱えた天動説は1500年くらい信じられていた。地動説が出てからはまだ500年ほどしか経っていない。
フロギストン説は、あくまで仮説だが、多くの現象をうまく説明できていたことで支持されていたんだな。もしフロギストンはこれだ、という物質を発見できていたら、
良夫:間違いなくノーベル賞だね。
父:ああ。
良夫:今当たり前と思っていることも、将来書き換えられる可能性があると?
父:コペルニクス的転換、とまでいかないにしても、新しい発見や成果が出れば、それによって今ある理論は修正されていくと思うよ。
いかがでしたか。今回のポイントは
①正確な知識を持つ
②問題文に即して答える
これができていれば、答えられます。今回の(5)では、文脈に即して正解が決まるので要注意。
(6)については、ここで挙げられた説について理解することで、興味が深まれば得点力アップだけでなく、楽しく勉強できるようになるのではないでしょうか。
ぜひ参考にしてください。