「宇宙エレベーター」の構想をご存じですか。宇宙空間内の宇宙ステーションにエレベーターで直接登るというアイデア。
荒唐無稽な話にも思えますが、現実的に研究が進んでいるようです。夢をかき立てられますね。
このような時代の先端を行く研究が、入試のテーマになることがあります。
今回は目新しいテーマが出てきたとき、どのように対応していくかを考えます。
実際の出題例を見ていきましょう。
問題
「宇宙までエレベーターで行く」夢の構想と思われていた宇宙エレベーター。
アメリカや日本で具体的な検討が始められ、空想から実現可能な段階に到達しつつあります。
以下は2050年の未来を想像した宇宙エレベーターに関する文章です。文章の後に続く問に答えなさい。
「これが宇宙エレベーターか!」2055年に44歳になった僕は宇宙エレベーターに乗るために海上に浮かぶ発着所に初めて立った。
宇宙エレベーターは赤道上空36000㎞を地球の自転と同じ周期でまわる宇宙ステーション(ア)に向かって、特殊なベルトを登っていく。
(中略)
宇宙ステーションでは太陽電池でエネルギーをつくる。地球が太陽の光をさえぎっている間は電気を作ることができないので、太陽の光が当たっている間に効率よく電気を作るための工夫がなされている。(イ)
宇宙エレベーターの動力も電気で、時速約200㎞でベルトを登っていき、宇宙ステーションまでは約7日で到着する。(以下略)
(1) 以下は下線部(ア)についての詳しい説明です。①~③に当てはまる最も近い数値を語群から選びなさい。
宇宙エレベーターの基地である宇宙ステーションは赤道上空約36000㎞を地球と同じ周期でまわっている。したがって、地球から見るとあたかも止まっているように見える。
宇宙ステーションが地球のまわりを1周するのにかかる時間は( ① )時間、地球の半径は約( ② )㎞であるから宇宙ステーションは半径42400㎞の円を描いて地球のまわりをまわっていることになるので、宇宙ステーションの速さはおおよそ時速( ③ )㎞とわかる。
語群 1 10 12 24 48 60 90 120 1200 1800 3600 5500 6400
11000 18000 20000 24000
(2) 下線部(イ)の工夫とはどのようなものが考えられるか、ひとつ答えなさい。
重量の関係でパネルの面積を増やすことはできません。
(3) 宇宙エレベーター内で、質量100㎏の荷物が重量計に乗せたまま運ばれています。地上からの高度が地球の半径と同じになったときに確認したところ、重量計は約25㎏を示していました。さらに進み、地球の半径の2倍の高度では、ほぼ11.1㎏を示していました。そして3倍の高度では6.25㎏でした。では、4倍の高度では約何kgになると考えられるか、表と図を参考にして答えなさい。
(2019 かえつ有明中)
解説
(1)
① 24時間
地球が1周する周期(自転周期)は、ほぼ24時間です。
② 6400㎞
地球の1周の長さは、ちょうどぴったり40000㎞です。これは偶然ではありません。なぜでしょうか。メートルを定めるときに、人間がそう決めたからです。
地球の1周=40000㎞を覚えていれば、半径、直径は忘れていても何とかなりますね!
ところで本問は、地球の上空36000㎞が、半径42400㎞の円を描くとあるので、
42400-36000=6400㎞とあっさり求めることができます。
③ 11000㎞/時
42400×2×3.14÷24=11094.…となります。直径×3.14であることに注意。
(2) 解答例 電池の面が常に太陽の方向に対して垂直に向くように動かすことができる。
キーワードは「垂直」。この言葉を用いれば、答えの形が決まるはずです。
(3) 4kg
「地球の中心からの距離」が表示されているので、ずいぶん簡単になりました。地球の中心からの距離が1/2になると、重量は1/4になっていますね。
2乗に反比例するので、( )には100㎏の1/25が入ります。
「高度」しか与えられてない場合は、一気にレベルが上がります。「地球の中心からの距離」を自分で考えるためにひと手間余計に必要となり、これができないと解けない高度な問題となります。
まとめ
初めて見る、目新しい題材が扱われる問題について
今回の宇宙エレベーターのように、受験対策として学ぶ範囲外の題材が取り上げられる理由としては、
・作問者が理科的な興味を持った
・受験生の好奇心を引く題材だと思った
などのことが考えられます。これから受けていく模試などでも、こうした問題に多く出あうこととなるでしょう。この時の考え方及び学習上の位置づけについて、以下の点に気を付けて学習を進めてください。
①知らないことでもあきらめない。
初めて見る題材の場合
・どこかに解答のヒントがある
・似たような問題を解いたことはないか
と考えて動く習慣をつけましょう。
得点力の高い受験生はこの習慣がついているので、結果として難なく得点できます。
②理科常識を広げる材料とする。
一見些末な知識でも、問われるのは目新しさの底にある理科的な考え方です。特に難関校の受験者は、受験しない学校も含めてこのようなネタに幅広く触れることで、①で示した考え方を実践する経験を積んでいけば、いざこのような題材が出題された時の対応力を高めることにつながります。この対応力はなかなか「狙って」養成するのは難しい力です。「出そうなところを効率的にやりたい」の逆を行くことになりますからね。。
今後の学習にお役立ていただければ幸いです。
それでは次回もお楽しみに。