こんにちは、受験Dr.の咲山です。
発酵食品、微生物を用いた加工食品。
中学入試では頻出とまでは言わないものの、
知っているかどうかで、ふと出題されたとき、問題の解きやすさが大きく変わるテーマでもあります。
今回はこの発酵食品を詳しく知るため
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発酵の中心―酵母のはたらき
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酵母を用いた食品―お酒、みそ、しょう油
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酵母以外を用いる発酵食品—乳酸発酵と酢酸発酵の利用
3回に分けて、発酵の仕組みとその代表例を紹介したいと思います。
さて、皆さんは今回のテーマ、「酵母(こうぼ)」という生き物を御存じでしょうか。
酵母だけでなく、イーストという呼ばれ方をすることもあります。(酵母を英語にしたものです。)
特に、日本の食文化と密接に関わってきた微生物です。
また、「酵母菌」という呼ばれ方がされることがありますが、本当は正しい呼び方ではありません。
乳酸菌、大腸菌のような、菌とつく微生物は、原核生物というグループであり、細菌と呼ばれる微生物です。
酵母はカビやキノコの仲間であり、真核生物というグループであり、菌とは呼ばれません。
ただし、一般的に同じ意味で用いられており、、
中学入試の実際の問題文の中でも酵母菌という言葉が使われていることがあります。
この細かい分類の話は中学受験ではまず出題されない内容ですので、これ以上は触れません。
では、ここからが本題です。
この「酵母」、いったいどんな微生物でしょうか。
酵母のはたらきを知るためにはまず、ヒトの「呼吸」をしっかりと理解しておく必要があります。
ここは中学受験でも頻出のポイントです。まず、一旦整理しておきましょう。
我々ヒトの呼吸には大きく分けて下の二つの仕組みから成り立っています。
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外呼吸・・・空気中の酸素を体内に取り入れ、不要となった二酸化炭素を排出する仕組み
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内呼吸・・・血液で運ばれた酸素を細胞に渡し、不要となった二酸化炭素を血液に排出する仕組み
外呼吸は普段の「息」にあたるもので、深呼吸、息を止める、といったときはこちらを指します。
吸気の酸素が21%で、呼気の酸素が16%、ここはまず抑えておくべき重要な数値ですね。
それに対して、外呼吸によって吸収した酸素を用いて、「燃料」となる糖といった養分を「燃焼」し、その結果エネルギーを作る。その際に生じた副産物の二酸化炭素を血液に戻す過程のことを、内呼吸といいます。
外界とのやり取りがある呼吸を「外呼吸」、体内で行われる呼吸を「内呼吸」、と分けているということです。
実際に燃焼が起こっているわけではありませんが、
このようにイメージすると、エネルギーが発生する現象であることが分かりやすいかと思います。
特に、体温の維持には欠かせない仕組みです。起きているときも寝ているときも呼吸を続けているのは、生きるのに必要なエネルギーを作るため、ということです。
また、この呼吸にはそもそも、好気呼吸と嫌気呼吸の二つがあります。
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好気呼吸・・・酸素を用いてエネルギーをつくる仕組み
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嫌気呼吸・・・酸素を用いずに、エネルギーをつくる仕組み
好気呼吸は、先程の説明の中でもあったヒトの呼吸と同じ、酸素を用いた呼吸のことを指しますが、
実は酸素が無くても、エネルギーを作る仕組みのことを、まとめて「呼吸」と呼んでいるのです。
そして、今回のテーマの「酵母」に戻ります。
酵母は嫌気呼吸の中でも、特筆して、アルコール発酵というものを行っています。
酸素がない環境でエネルギーを得て生きる方法として、酵母に特有の代謝方法です。
アルコール発酵は簡単に化学反応式を書くと
糖分→アルコール+二酸化炭素
と見た目は簡単な反応となっています。
アルコールと聞くと、消毒液やお酒のイメージがあるかと思います。
この反応は見かけによらず、人間の手による化学合成では簡単に真似できません。ところが、酵母を用いれば簡単に、大量に作ることが出来るため、先程例を挙げた消毒液やお酒も、酵母によってつくられたものを利用しています。
酵母が生きるのに必要なエネルギーを作る過程で出た副産物のアルコールを、我々は活用しています。
食品だけでなく、日用品にも関わるこのアルコール発酵ですが、酵母にとっての「呼吸」という観点からも、少しでも身近に感じられたでしょうか。今回はヒトの呼吸のはたらきと結びつけて紹介しましたが、生物間の共通点や違いから、酵母に限らず様々な生物のつくりやはたらきを関連付けて覚えていくことが出来ます。
次回は酵母を使った食品の代表例を紹介します。