皆さんこんにちは。
受験ドクターの理科大好き講師、澤田重治です。
今からウン十年前……私が大学に入学する頃には、
一部の理系人間しか触れることのなかった「パソコン」も、
今や広く一般に普及し、現代の生活に必要不可欠なものとなりました。
それに伴って、性能は格段に上がっているのに価格は下がるのですから
本当にありがたいことです。
そして、同じ流れの中で家庭用のインクジェットプリンタも安くなり、
「一家に一台」どころか「一人一台」になりつつあります。
そんなプリンタのインクカートリッジを見て、
「マゼンタとかシアンって何なの?」と思ったことがある方も多いことでしょう。
聞き慣れない言葉ですよね。
なぜ、「赤インク」「青インク」ではないのでしょうか?
ここに大きく関係しているのが「三原色」という考え方です。
パソコンやテレビのモニター画面は、拡大してみると
「赤」「緑」「青」の3色の光でできていることがわかります。
この3色のことを、「光の三原色」といいます。
この3色の光を混ぜ合わせ、その強さの割合を変えることによって、
様々な色を再現することができるのです。
強さの割合を考慮せず、単純に3つの光を重ね合わせると次の図のようになります。
このとき、赤と青が重なった部分にできた
赤紫色っぽい色のことを「マゼンタ」といいます。
また、緑と青の間にできた水色っぽい色のことを「シアン」といいます。
一方、プリンタに使われているカラーインクは、
先ほどの光の三原色で2つの光が重なった部分にできている
「イエロー(黄色)」「マゼンタ」「シアン」の3色が基本になっています。
(高性能なプリンタでは、さらに色の数を増やしている場合もあります。)
このインクに使われている3色のことを「色の三原色」といい、
次のような関係になっています。
このとき、2色が重なった部分にできている色が、
「光の三原色」だった「赤」「緑」「青」になっていることが分かります。
不思議な関係ですよね?
このように、「三原色」と呼ばれるものが2種類あって混乱してしまう人もいるようですが、
実は仕組みは簡単で、一度理解できると両方同時に覚えることができます。
その根本原理は、「光は重なると明るく(淡く)なり、インクは重なると暗く(濃く)なる」ということです。
つまり、光の三原色は濃い色を基にしていて、重なるほど明るくなって白に近づき、
色の三原色は淡い色を基にしていて、重なるほど黒に近づいていくということなのです。
だからプリンタインクは、「赤」や「青」ではダメだったのですね。
ちなみに、「マゼンタ」の語源はイタリアの都市の名前、
「シアン」の語源は古代ギリシャ語で「暗い青」という意味なのだそうです。
えっ? 暗い青?
シアンは、明るい色だから色の三原色になっているのに……
言葉って不思議ですね。
次回も、楽しくてためになる「身近な科学」を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!